新規登録がまだの方

下の[新規登録]ボタンを押してコミュニティに登録してください。

登録がお済みの方はこちら

コミュ二ティポイントのご案内

詳しく見る

親父たちよ

親父たちよ>掲示板

公開 メンバー数:62人

チャットに入る

サークル内の発言を検索する

サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。

閉じる

  • from: クマさんさん

    2007/11/13 05:50:44

    icon

    象か象の背中か

    雨のおかげで休養がとれる。
    晴れていたら、またマグロのように泳ぎまわらねばならない。
    走るということは、依存症を引き起こすらしい。
    心と体が、走ることを求めてくるのだ。
    脳の中で何か快感になる物質が出ていると聴いたことがある。
    あのスピードに乗ったときの走りは、確かに快感そのものなのだ。

    さて、「象の背中」である。
    今は小説の方を読んでいる。
    映画とは違うシチュエーションがあり、比較しながら読むと興味深かった。
    映画は映画の空気の中に存在する物語なのだ。
    小説は読み手の想像力の中に存在する物語でもある。
    そんな違いが面白く、毎晩布団の中で読んでいる。

    ホスピスに入ってからの彼は、帰るべき所に帰った彼だった。
    海辺のテラスでぼんやりしていると、
    一人の30代の男と出会う。
    「話をしていいですか?」
    「ここに来る人たちは、話したがらないのですよね」と遠慮がちだった。
    藤山がタバコを吸おうとすると、ライターがなかった。
    彼がジッポで火をつけてくれた。

    彼は、象だった。
    家族はいなかった。
    田舎に両親が生きている。
    しかし、自分が癌で余命が短いことを知らせてはいなかった。
    彼は、一人逝くつもりだった。
    象は、そうやって死期が迫ると、自ら群れを離れて死の谷に向かう。
    一人で、死ぬ。
    しばらくすると、そのジッポが入った封筒が藤山に届いた。

    藤山には、家族がいる。
    見舞いに来た兄とスイカを食べるシーンがある。
    「お前の遺言を俺が聞いている。反対だろう・・・。」
    と言って、スイカを食べながら兄が悔し涙を流す。
    「俺の骨を分けてやって欲しい人がいるんだ」
    と弟は兄だけには秘密を明かす。
    「兄ちゃん、本当は俺、とっても死ぬことが怖いんだ」
    とやっと弱音を吐き、泣き崩れる。
    辛さと切なさとを分け合えるのは肉親なのだろう。

    砂浜でのピクニックのシーンは美しかった。
    車椅子に座り、酸素の管が鼻から入っている。
    本当に衰弱し、やせ細った藤山が、
    波に戯れる二人の子供を遠くで見つめている。
    妻は夫に、夫は妻に手紙を書いていた。
    子供たちの前でその手紙を妻に読んでもらう。
    夢のような安らぎである。
    妻にそっとキスをする。
    死はすぐ目の前に来ている。
    なのにこの幸福感はいったい何だろうと彼は感じた。
    意識が遠のく中、彼の脳裏をよぎった言葉は「ありがとう」だったに違いない。

    彼は、家族に見守られて逝く。
    彼は、象ではなかった。
    では、何故「象の背中」なのか、この題名の意味が未だに分からない。

    私はまた、下手なピアノの練習を最近始めた。
    「エデンの東」を弾いている。

    • サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0
    • サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0

    icon拍手者リスト

コメント: 全0件