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from: クマさんさん
2009/04/24 06:18:28
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絵葉書通信
私の書の師匠、K先生は今、白根の病院で入院している。
3年前に脳梗塞で倒れた。
書の先生が、腕が動かせなくなってしまった。
おしゃべりが大好きなユーモアたっぷりの先生が、
言葉を話せなくなってしまった。
意識はあり、相手の言葉は理解できる。
病気は、先生から大切な腕と言葉を奪ってしまった。
それは、先生の生業の種であった。
会いに行くと、先生は大泣きされる。
そして、私も涙が止まらない。
先生は五十音の書かれたボードを指差し、
話してくれる。
私は、それを予想しながら読んだ。
それから、私は見舞いに行っていない。
悪い、悪い弟子である。
先日、先生から書会のはがきが届いた。
たどたどしい墨字で、
12日に水原で会があるので来ませんかというはがきである。
震えた文字に、先生の今が感じられた。
白根の病院が住所だった。
転院したと聞いていたが、まだ退院できないでいた。
私にとって、そのはがきが宝物になった。
そこで、私は、絵葉書を出すことにした。
森田さんにはかなわないが、
水彩鉛筆で絵を描いて、文章を筆で添える。
先回は「良寛さん」を描き、
「山小屋は 良寛さんの 花盛り」と川柳を添えた。
昨日、先生から返事のはがきが届いていた。
裏面にびっしりと先生のたどたどしく、震える文字がいっぱいの、
そして、それだけでは足りず、
表の下にも書いてくれた。
それは、私のことを心配してくれ、
励ましてくれる言葉だった。
私は、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
こうしていても涙が流れる。
動かない手で筆をもち、
どんなに時間をかけて、このはがきを書いたことだろう。
うまく書けない自分に苛立ち、腹を立て、それでも筆で文字を書く。
そこにこそ、先生の私に伝えたい想いがある。
そんな気がした。
私はさっそく、森田さんの似顔絵を描き、
筆で文章を添えてはがきを書いた。
その時、思ったのだ。
メールばかりのこのご時世に、
文字と絵とを描いて送ることの、本当の意味を。
先生は、そのことも私に教えてくれた。
毎週一枚、先生に下手な絵と書を贈ることにした。
それは、先生が私に下さった修行の機会なのだと思って。-
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