父が炬燵で丸くなっている。
一日まったく動かない。
トイレに立つぐらいだと、母は嘆く。
ただテレビを観るとはなく観ている。
これといった趣味もないため、やることもないのだった。

私がそばに居ると、いろいろと言ってくる。
何よりも私の体のことを心配していた。
「酒、飲みすぎんなや」
「体、気をつけれ」
「俺みてになってしまうろ」
そして、父は語ってくれた。
「この病気になると、何をする意欲もなくなってしもろ」
「こんなになってしまうとは、俺も思っていなかった」と。

軽い脳梗塞から5〜6回の入院経験をもっている。
その度に確かに生還はしてきた。
しかし、年もあるが、
この病気によって、意欲が失われていたのである。
ある意味「鬱」になっているのかもしれない。
しかし、病院へ行こうなどと父は考えはしないだろう。
生きることそのものが、おっくうになっているようなのだ。

もし、私が脳梗塞で倒れてしまったとしたら、
これからの我が家はどうなってしまうのであろうか。
高三と中二の二人の息子。
父と母の二人の年寄り。
さてさて、やっぱりどうしても生き抜くことが必要なのだ。
父は、そのことを心配していた。

健康第一。
この年になるとその意味がよく分かってくる。
首から肩へ筋肉痛で弱っていた。
左足のアキレス腱は痛んだままである。
朝起きても疲れが抜けていない。
壊れ物の自分の体を労われるのは自分自身だけである。

親父たちよ。生き抜くことが家族のためになっているのだ。
だから、どう生き抜くか。
その答えを自分に問いつつ、今日も生き抜こうではないか。