長者様が大変だ。
驚きの情報が土曜日に入った。
行かねばならない。
自粛していた私だったが、Ｙｕｃｃａのためならなんのその。
病み上がりの体に鞭を打ち、花束王子に電話した。
「行くすけ、頼むてば。」

私が来れないことを知っていた王子は驚き、
「どうしたんですか」と問うていた。
止むにやまれぬ事情が出来た。
私が長者様の分までＹｕｃｃａを応援せねばならない。
母と叔母とは、１１時半のコンサートに駆けつけた。
私は２時のコンサートから参戦する。
よしなに頼むと、王子には電話した。
「行かねばならない。」
それは、ある意味赤穂浪士の使命感だ。

バスで古町に駆けつけ、コンビニでしこた缶ビールとハイボールと紙コップを買った。
極めつけは菊水一番搾りである。
準備万端。
とにかく王子の元に駆けつけるのみである。
新生ヴラボーガールたちと示し合わせて会場に到着したら、
既に席は全て埋まっていた。
路上に広告を敷いて待っていたら、
吾らがファンクラブの人たちが、席を譲ってくださった。
ここで王子との合流だった。

さっそく紙コップを両隣りのファンに渡して、ハイボールを注いだ。
「行きますよ。」
これが私たちからのＹｕｃｃａさんへの愛なのだから。
ボルテージは、Ｙｕｃｃａさんの登場で最高潮に高まった。
酔っ払いは、ただの酔っ払いではなく、
あるミッションで命を燃やす酔っ払いに、変身なのだった。
本日は、やけに王子が大ブレークだった。
少々飲ませ過ぎてしまったか。

「Ｙｕｃｃａ、待ってました」「ヴラボー」「Ｙｕｃｃａ最高」
そんな叫びを怒涛のように繰り返しながら、
コンサートはいつの間にか最高潮に達し、
私と王子は涙で、涙で、涙で、Ｙｕｃｃａが美しすぎてかすんでしまった。
何と言う奇跡の、何と言う至福の時なのだろうか。
本当は、私は本日お休みの時だった。
それなのに、長者様のアクシデントのおかげで、
使命感を感じて、このコンサートに参戦したのだ。

王子の花束の制作者、さくらこまちの美女にも会えた。
王子と一緒に花束を取りに行き、彼女とも話すことができた。
淡い水彩のような美しい花束に、名前をつけるとしたらと質問すると、
「フランスの田舎の村のような花束です」と彼女が言った。
まさにその言葉にふさわしい可憐な花束を王子は抱えて、
次のステージに向かったのだ。

「王子よ。俺たちは、ファントムなんだてば。」と、私が語る。
「Ｙｕｃｃａは、永遠に俺たちのクリスティーヌなんだてば。」
王子はその花束を胸にして、古町の人混みの中をステージ目指して歩いていた。
「オペラ座の怪人らんて」と酔っ払いの私。
王子はまっすぐにＹｕｃｃａを憧れの炎で瞳を輝かせ見つめていた。

「ヴラボー」のスタンディングオペーションは、王子と私。
「Ｙｕｃｃａ、歌ってくれ。」
「Ｙｕｃｃａ、ありがとう」
「Ｙｕｃｃａ、これが俺たちの精いっぱいの愛だぜよ。」
あのお婆ちゃんのリクエストに応えた「アメージンググース」は、
Ｙｕｃｃａの優しさそのものだった。
俺、ただただ泣けた。

Ｙｕｃｃａさん、あなたは奇跡の人だ。
その歌心と歌力に、心から敬意を表する。
俺も、長者も、王子も、ファントムだからね。

最後はやはり路上反省会だった。
菊水一番搾りを王子と二人で飲みながら、
長者様が不在であることの寂しさに涙した。
頼むぜ長者様。
ヴラボーブラザーズは、Ｙｕｃｃａのために永遠に不滅なんだぜ。

ああーーっ、Ｙｕｃｃａ。
永遠のクリスチィーヌ。