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親父たちよ

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  • from: クマさんさん

    2012/04/07 15:02:50

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    老いるということは

    さてさて、日々日々、父と母とには変化あり。
    母は、また発熱だった。38度の熱に苦しかったらしい。
    めっきり最近は痩せて来た。
    母の母らしい面影はどこにもなくなっている。
    K病院に妹が連れて行ってくれた。
    すぐに点滴だった。
    ベットで寝ながら点滴を受けて、母は何を思っていたことだろう。

    私が帰って来たら、炬燵に入っていた。
    「具合どうら?」が最初の言葉だ。
    「点滴したら、楽になったんさ。」と、ちょっと笑顔だった。
    ここ一週間熱を出して具合の悪い日々が続いていた。
    あのインフルエンザ以来、何か体のリズムを崩しているようだった。
    「S先生が何度も見に来てくれたて。」と、とても嬉しそうだった。
    忙しい診察の合間を見て、わざわざ母の部屋を訪ねるS先生には、頭が下がる。

    朝、母が起きて来なくなった。
    こんなことは信じられない事態だった。
    母は、いつもどんな時でも気丈に家事を自分がやっていた。
    私が朝食を食べる時は、必ずそこに居て、お茶を入れてくれた。
    そんな母だったのに、今朝はいなかった。
    起きることすら難儀になって来たようだった。

    父が、突然「床屋に行く」と言いだした。
    真っ白な髭がボウボウなのだ。
    手が上手く使えないために、ひげそりもままならないのだった。
    「行く。」と言うと、堪え症が無いために、すぐに支度をして外に出た。
    私に車で送れといいながら、独り杖をついて坂を下って行った。
    私は着替えて、慌てて父の後を追った。
    「何で、車出さねんだ。」と、父は不満そうだった。
    「歩かねと、足使えなくなってしもろ。」と、私。
    父の歩みの後に、私が続いた。

    父は、時々立ち止まり、息をついた。
    「こんげになってしもたてば。」と、自分の情けなさを嘆いていた。
    「それを受け入れねば駄目らこてる」と、私。
    床屋さんまで父を連れて行った。

    「お願いします。」と床屋さんに入ると。
    そのお店は、私が小学生の頃通っていたまんまだった。
    その革張りの角ばった椅子や、鏡、蒸しタオルを作るアルミのケース。
    その横に商売道具手あるピカピカのはさみがきれいに並べられてあった。
    床屋の叔父さんは、いつの間にかおじいさんとなり、
    競馬の話で花を咲かしていた父は、自分でジャンパーのジッパーをはめられない人となった。

    この場所だけが40年以上前の昔のままで、
    床屋の親父さんも、父も、明日をもしれない老人になってしまった。
    ふとね鏡に映った自分を見た。
    時間の流れは全ての人には平等なのだ。
    床屋嫌いの小学生の私だった。
    その私が、白髪の人で鏡に映っていた。

    帰りも父を歩かせてしまった。
    「何で、車じゃねぇんだ。」と、またまた文句を言われた。
    「歩かねと、弱ってしもすけね。」と、父の後に従ってゆっくりと歩いた。
    途中、何度も立ち止り、俯き、堪え、息をつぐ。
    家までの坂が、遠くに感じた。

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