サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。
-
from: クマさんさん
2014/02/08 16:31:42
icon
彼は心配してくれる
雪が降り続いている。
プールから帰ってきたら、家の周りに雪が積もっていた。
この冬初めての雪のけをした。
スノーダンプで雪を押して、玄関前とガレージ前の雪のけだった。
私のことをいつも心配してくれる友からメールが来た。
「これから泳ぎに行きませんか」と。
ありがたいなぁと、彼のメールにいつも感ずる。
忘れていない。思い出してくれる。それだけでいい。
以前から私に水泳の四泳法を伝授したいと言っていた彼だった。
この雪の土曜日に、わざわざ新津から車でやってきて、連れて行ってくれる。
忘れられていない嬉しさかな。
彼は、8年間スイミングに通い、マスターでは県大会で優勝するまでの男だった。
一途に一本の道を求めて歩く。座禅はすでに30年間だそうだ。
続けることの凄さをいつもいつも彼からは教えられる。
クロールと平泳ぎとは、グッドの評価をもらったが、
背泳ぎでは沈んでしまい、
バタフライでは、タイミングがつかめずにこれまた沈んでしまうばかりだった。
そんな私を、彼は見捨てることなく、根気強く教えてくれた。
教えられて分かったことがある。
できる人には何でもないことが、
できない人にはどうやってよいかわからないほど難しいということが。
できない子供の気持ちがよく分かった。
「どうしてこんな簡単なことができないの」ではなくて、
できないから、どうやったらいいのか分からないから、困っているのは本人なのだ。
だから、よき師匠が必要なこともよく分かった。
沈んで浮かんでこない私の泳ぎを見て、
彼はじっと考えながら、自分の体験を踏まえて練習方法を教えてくれた。
「背泳ぎは、苦手でね。苦労したんだ。」と言う彼だから、
私の困り感をよく分かってくれた。
「初心者だったあの時は、こんな練習を繰り返して、出来るようになったな」と、
自分の経験を通してアドバイスをしてくれる。
「これは、水泳だけでなく、生き方そのものも同じだなぁ」と私は想った。
特に水の中の感覚は、日常の陸地での感覚と違って、
なかなか彼が言ったことを体感するまでには時間がかかる。
それでも、彼は少しでも上達すると褒めてくれる。
それが嬉しくて、水を鼻から飲んでも、足の平がつりそうになっても、
やっぱり泳ぎを続ける私だった。
帰りに私の大好きな「うま煮麺」を彼とカウンターで並んで食べた。
「生きるのって難しいなぁ」とは、私。
「俺は、一日生きることだけで、へとへとに疲れてしまうよ」とも、私。
「俺も同じだよ、クマさん。俺だって一日終わると、ほっとするよ」とは、彼。
プロレスラーのような体格の、恐るべき50代である彼。
その彼も、そんなことを感じているのかと、驚いた。
そして、同時にほっとした。
身体が変わった。その変わった身体に見合った生き方を選ばねばならない。
これからどう生きたらよいのか。
ふと、生き方の師匠である蒲水先生の顔が思い出された。
「人は、優しいということが大事だと思うな。」
「人は、やっぱり優しくなるために生きているんじゃねぇかな。」
「人はさ、優しくなるための修行をしてるんだよね。」
「だから、いっぱい哀しいことや、辛いことがあるんだよね。」
「優しくない人が多すぎるよね。いつも怒ったような顔をしている人がさ。」
いつの間にか、優しさについての話になった。
ああ、人生の荒波を泳ぎきるためのコーチも欲しいものだと、その時想った。
コメント: 全0件