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親父たちよ

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  • from: クマさんさん

    2014/06/04 05:42:21

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    2時間の授業のために

    昨日、7時半過ぎにクタクタになって自転車で帰ってきた。
    角を曲がるところで、スーツ姿の自転車の若者に声をかけられた。
    気のせいだろうとそのまま走っていたら、
    「父さん」と呼ばれた。長男だった。
    親父が息子を見違えてどうするんだ。
    でも、やっぱり彼は刮目して見よとばかりに、見違えた青年になっていた。

    「どうだった」と授業のことを聞いた。
    「絶望だよ」とのこと。
    そうだろうと想った。生まれて初めての授業の指導なんだから。
    「そんなもんだよ。10点教師でいいんだよ。いい経験をしているだよ。」
    そんな慰めの言葉も彼には届かない。
    心は、授業での失敗と焦りとで、ぐっと重く辛いものになっているからだ。

    「夕食は、8時半でいいか」と聞く。
    彼は、座敷で毛布を被って眠っていた。
    相当答えたらしい。大きな岸壁だよな。
    彼は、その岸壁の頂きに向かって、やっとよじ登り始め、
    この地面を離れたばかりだった。
    ワンピッチのザイルはすでに彼の目の前に伸びている。
    後戻りは絶対にできない、長くて苦しい登攀だった。

    今日の2時間の授業のことで頭がいっぱいで、途方に暮れ、
    それでも、手がかり、足がかりを求めて岩を手探りで探していた。
    10時に遅い夕食を食べてから、親父は彼の隣に座った。
    「明日は、どこをやるの。」
    私が、英語を教える教師の卵を教えている。

    「まず、大事なことは、いかに生徒たちの興味・感心を引き出すかだよ。」
    「英文を訳すだけの授業では、生徒たちはついてこないよ。」
    「この作者の伝えたい想いを、やっぱり感じられる学びにならないと。」
    「この文を読み取った後、何か気づきや発見があるといいね。」
    「そうか。そうだよね。」
    彼はやけに素直に私の話を聞いていた。

    「やっぱり生徒を褒めることのできる授業をしたいね。」
    「教科書を教える教師でなく、教科書で教える教師だよ。」
    私は、こうして彼と話しながら、私の中に在る何かを彼に伝えたかった。
    それは、目には見えない何かであり、指導案では決して表せない何かだった。
    教師がもつ空気感とでもいうのだろうか。
    生徒たちが安心して、信頼して、そして、楽しく、
    豊かに学べる授業の空気感かもしれない。
    それは、確かに存在するが、私自身それわ身につける途上に立っている。

    語れるとは、いいことだなぁと想った。
    それも私が私の人生で学んだことを語れることは。
    「語る」とは、「吾を言う」と書く。
    その「吾」とは、私としてこの世の中で存在すべき物語としての私のことだった。
    だから、語る私も、現実に迷える私も、その吾の言葉に学ぶことができるのだ。

    そうしていたらね腕時計のアラームが鳴った。
    0時を過ぎる合図だった。
    「父さん寝るぞ」
    「ありがとう。少し分かったは。」
    そして、眠ったのは1時だった。
    4時半には目覚めてしまった。

    彼は、徹夜で憔悴している。今日、2時間の授業がある。

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