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from: クマドンさん
2016/08/17 11:20:10
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穴と向き合う生活
大学病院の外来に行って来た。
受付で呼び出されたのには驚いた。
検査のある患者さんより私の番が先になったせいだった。
お腹の穴は、やはり感染によるものだった。
死んだ肉芽というものをせっせせっせと先生がピンセットでとってくれた。
つまり、ここをばい菌で感染し、皮膚と腹膜との間の細胞が死滅したということだ。
お腹に穴が開き、そこから異臭を放っている。
そんな自分の身体が信じられなかった。
先生は、時間がたてば奥の肉が盛り上がって、この穴を塞ぐと言う。
ただし、感染が進み、腹膜も犯す可能性も考えられるとのこと。
つまり、またまた私は手術によって、身体の不具合を起こしてしまったのだ。
いたしかたない。
身体のことは、身体に聴きなさい。
感染を起こそうとして起きたのではないし、
身体は回復しようと再生のための努力は続けている。
私の身体でありながら、だんだん私とは別物の客観的な存在として、
何だか私は自分の身体が見えるようになった。
ああ、穴の周りの肉が膨らんできたなぁと、
そこに軟膏を綿棒で塗りながら、しみじみと見つめたりしている自分がいる。
抗生物質をもらった。
これを毎朝一錠ずつ飲む。
これは、細菌と戦う私の細胞への応援団である。
闘うのは、生き延びようとする細胞たちだ。
その憎き敵たちは、この細胞を壊死させている細菌たちだ。
そんな闘いが、私の腹の穴で行われている。
私は、その闘いをこれから長い長い時間をかけて見守っていかねばならない。
私は、手術をしたことを少し後悔しつつも、
この私の身体の闘いを、しばし人ごとのようにして応援しようと思っている。
ここは、私にとってのリオデジャネーロ・オリンピックの舞台である。
まず、現状をあるがままに受け入れ、動揺しないことだった。
どうにもならないことに対して、
どうにもならないのだから、そのままで生き延びようよと、
私は、私に言える私に少しなった。
帰りに8階のおの大部屋に顔を出した。
Hさんだけが独り、文庫本を読んでベッドに座っていた。
Kさんは、リハビリだった。
二人の手術は、肝臓の数値が上がらないのでまたまた延期になったそうだった。
私には、「お大事に」としか言いようがなかった。
もう一人のIさんは、手術の翌日に歩かせられたそうだった。
大した体力だと、Hさんも驚いていた。
この腹の穴も、この大先輩たちの前に出ると、ほんの擦り傷程度のものだった。
特に二人は、生きる死ぬの大手術だった。
手術する人にしか分からない気持ちがあった。
私は、その気持ちを学び、分かるために、あの三回の手術があったと思っている。
そして、いつも術後には、後遺症で悩まさることも、自業自得と考えている。
身体は、自然。
何事も想ったようにはいかないものだ。
上手くいかないを受け入れる。
諦めることは、平安な日々の心得だ。
いつかはきっと治るだろうと、期待することが大事、大事。
さて、この言葉を分かってくれる人は、きっと大病をした人か、手術をした人だ。
言葉は、経験から生まれるものだ。
さてさて、私はこれから何カ月もこの穴と向かい合って生きて行く。
そして、その穴が教えてくれる経験を、ここに言葉に記そうと思っている。
きっとその言葉は、普遍であり、誰かと共有・共感する言葉となるはずだから-
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