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from: クマドンさん
2016/11/28 06:23:00
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今、ここに
山の仲間の集まりだった。
はんばぎぬぎ?と言う。
今年一年の山行の無事と、来年への期待とを込めての飲み会だ。
嬉しいなぁと、いつも想う。
関川の雲母温泉までの道は、ずっと今度の課題曲を歌いっぱなしだった。
懐かしい人たち。
その人たちが居てくれる。
それで、何だか生きていてよかったなぁと感じられる。
先輩方は、既に60代から70代だった。
27年前になるか、みんなが山を始めたのは。
この会で毎年毎年山行を計画して登って来た。
もうすぐ200山になるそうだ。
大した道のりだと、その記録を見て改めて感じた。
亡くなった先輩が、3名だった。
人は、いつか必ずこの死を迎える。
でも、その人たちの人生に登山との出会いがあったことは、
仲間の一人として、とてもありがたく感じている。
山がなかったら、決して出会うことのなかった人たちだったからだ。
その時の、「今、ここ」で、心を一つに山に登った仲間たちだった。
親との死別をした人も多い。
私は、両親を亡くした。
Oさんは大事な大事なお母さんを亡くされた。
別れも必定。
いつか必ず別れは、私たちには訪れる。
そのことを想いつつ、「今、ここ」を生きる。
Oさんはそうして心を尽くし、お母さんに孝行した人だった。
認知になった母親を、夫婦で介護している仲間もいる。
一週間に三日はディサービスに行き、
普段の生活は、自宅で共にしている。
認知がまた軽度だからこうした生活ができるのだろうが、
これからの二人の負担は、並々ならぬものがある。
私の父がそうだったが、彼は、施設で死ぬことを自分で決め、
絶対に我が家には帰ろうとはしなかった。
願わくば、私も父のようにして、家族の世話にならず、潔く逝きたいものだ。
子どもの将来についての不安もあった。
嫁姑もあることだろう。
まだまだ自立できずに、どうしたもんじゃろうと困っている親もいる。
海外で結婚して、そこで孫が産まれたとの話も聞いた。
人それぞれの家庭であるが、やっぱり何も無い家庭は存在しないんだ。
みんな親として、それぞれに悩みを抱えている。
それが親としての「今、ここ」なのだろう。
Kさんは、難病と言う病にかかり、参加できなかった。
毎年、この会に参加することを楽しみにしていた彼は、
今は、杖が無くては歩けなくなり、食べることも自力では難しくなったそうだ。
温泉に一緒に入り、Kさんの元気な声を聴けないことがとてもとても寂しかった。
先輩たちと私との年の差は、出会った時から変わらない。
その当たり前の現実が、何とも寂しく感じられた。
関川からの帰りに、海老ケ瀬のKさん宅に寄った。
独り彼が玄関に立って迎えてくれた。
何も言えない。何と言ってあげてもそれだけだ。
私も長い長い入院生活を経験した。
彼の痛みと苦悩とは、私にはきっと感ずることもできないことだろう。
でも、一緒にたくさんの山に登れてよかったなぁと、
73歳になったKさんの顔を見ながらそう感じた。
さてさて、自然から学び、山から学んだ。
その学んだこととは、生きるということだった。
私たちはそれぞれが置かれた場所で、人生と言う時間が平等に流れて行った。
確かにみんな年をとった。
体力も衰え、気力もそれなりに萎えてきているかもしれない。
家族が亡くなり、自分自身の死すら考える年代となった。
介護の問題。家族の問題。経済的な問題。
考えたらなかなかどうして、生きて行くことの難しさを感じてしまう。
それでもどっこう生きている。
そのそれぞれの「今、ここ」をどうにかこうにかやり切って生きる知恵が、
何だか我が先輩たちには感じられる。
ここにあるものをどう受け入れて生きるか。
それは、私だけの問題ではないのだ。
みんな私もそうであったようにして、悩んでいるし、途方に暮れていたりする。
しかし、考えてもどうにもならないものは、
そのまま、「まぁ、いいか」と、受け入れて、悩まないことにする。
何だか、そうやってほっておくことも、
自分や家族に対する愛情ではないかと、ふと感じた。
老いのために参加できなかった仲間もいる。
やっと山の事故の怪我から回復した仲間もいる。
それぞれがそれぞれの道程をてくてくと歩き、時には休み、時には振り返り、
それでもそんな与えられた人生を、やっぱり今日も生きている。
山の仲間のはんばぎぬぎは、山行の無事と来年度の期待をもって行うものだ。
私たちのはんばぎぬぎは、よく今年も生きて来れたね。
来年もきっといろいろとあるけど、
がんばろよ、また会おうよ、のはんばぎぬぎだった。
人生を長いサイクルで考えることもあるだろう。
しかし、年を取って見ると、来年は言えないことがよく分かる。
だから、まず、「今、ここ」でどう生きたら幸せを感じられるか、
そんなささやかだが、確かなる生きる知恵を、
先輩たちは実に付け、日々の生活で実践していた。
今日一日だけ生きる。
今、ここで、生きる。
それが老いに向かう人たちが見つけた生きる知恵なのだと改めて感じた。-
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