目が覚めたら、７時半だった。
寝坊した。
いつもは４時前に目が覚める。
何だか、ちょっと失った３時間が惜しい気がした。

二日酔いだった。
実は、記憶が無い。
どうやって家にたどり着いたのか、覚えていない。
今も何だかもやもやとしている。
頭がぼーっとしている程度から考えると、相当の酒量だろう。
いつものように財布は空っぽ。
タクシーにどこから乗ったのかさえ、覚えていない。

あれっと、左足の膝を見ると、二つの大きな擦り傷だった。
かさぶたと血の塊が痛々しかった。
どこで？
覚えていない。
スラックスも擦り切れ、血がうっすらと滲んでいた。
たった３本のうちの貴重な１本がお陀仏だ。

妻の実家の母から、ビールが届いていた。
昨夜、前橋汀子さんのコンサートのチケットを私が贈ったお礼だった。
私は、ぼーっとする時は、ぼーっとすることに決めている。
１０時過ぎに風呂に入った。
緩い風呂が気持ちいい。
窓の外の樹木の葉を見るともなしに見ていると、
心が穏やかになって来ることを感じた。

何だか、やっとここにたどり着いた気がした。
今までのあのどうにもならない疾風怒濤は、
この朝風呂のためにあったのかもと、不思議にどうも幸せだった。

「１人1宇宙」とは、「唯識」の考え方だ。
そんなことを数年前に聴いても、
きっと「はぁ、そうですか」だったと想う。
しかし、今は、「そうだよねぇ」と素直に想える。

どこにも行かなくてもいいじゃないか。
別に、映画を観なくてもいいじゃないか。
ここで、ただここで、のほほんと生きる。
生かされている。

二日酔いの身体のだるさも、「お休みなさい」の身体の声として聴いている。

昨日の朝も、妻とのバトルだった。
どうして、そんなに妻も私もむきになるのか。
何だかねぇ。
妻とのことだけは、まだまだ穏やかな気持ちになれない私。
駄目だなぁと、いつも想う。
出勤の車の中で、「ああ・・・」と反省。

それでも、今朝は、こうして朝ごはんを食べさせてもらった。
ああ、さっき私の部屋に来た。
すわっ、また何か言いに来たな‼と身構えていたら、
「洗濯機、回したん？」と訊いた。
「ああ、洗濯機の中がいっぱいらったけな」と言うと、
「へぇー、洗剤も入れたん？」と訊くから、
「そりゃ、入れたこて」と、どや顔で言うと、
「あれ、一昨日、あんたが洗った洗濯ものだよ」と、言われた。
絶句。しばし、言葉を失い、狼狽えた。
「いいこて、2度洗えばもっときれいになるねっか」

どうしてもこんなになってしまう、私だった。

今朝、髪の毛の生え際が、どっと黒くなっていることに気付いた。
「おいおい、見てくれや。髪が黒くなったれ。」
そうやって頭を差し出しても、新聞を読みながら、私のことを見もせずに、
「そうだね」だった。