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from: クマドンさん
2017/09/08 06:08:08
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不自由は自由だ
朝、四時に目覚ましが鳴る。
ふと目を開けると、まだ暗かった。
変だなぁ。いつもならもうとっくに明るくなっているのに。
それだけ、夜が少しずつ長くなっている。
布団の中で、ぶるっと肌寒さを感ずることがある。
暑くってすぐに扇風機を回し、エアコンをつけたのは、
ついこの間のこと。
今では、朝の外気が涼しすぎるので、サッシの窓を閉ざしている。
今、大山台からポプラの葉のざわめきが聴こえている。
まるでそれは海の波の音のようだった。
風が鳴る。ポプラを鳴らす。秋が来た。
全てのものはこうして、いつの間にか変化している。
あの酷暑の中では、早く涼しくならないものかと嘆いていたが、
今では、その暑さの感覚すら忘れ去っている。
時間とは、流れ行くものであり、
いつもこうして変化するものだ。
「変わらない」ものは、何一つない。
そう考えると、かえって心が少し楽になる。
もし、酷い状況に追い込まれ、
そのことがとてもとても心の重荷で苦しんでいたとしても、
そのことが、いつかは懐かしく、ああ、そんなこともあったなぁと、
そう想える日は、時は、必ずやって来た。
その夏の暑さを嘆き、耐え忍んでいる日々は、
必ず秋に向かって移り変わって行く日々でもあった。
暑さの中に、既に涼しさは存在している。
そうでなかったら、カレンダーをピリッと切るように、
「はい、本日から、秋です。9月です」とは、いかないだろう。
このポプラの風の音は、あの真夏に既に準備され、待っていた音だと想う。
だから、今、ここ、だけを見て決めないことだ。
その、今、ここ、は、秋に繋がる今、ここの暑さであり、
四時の夜明けは、夜がそれから長くなると言う前兆に過ぎないからだ。
変わらないものは、何もここには存在していない。
私は、こんなことを考えて生きて来た。
春と夏と秋は、山に登ろう。
冬は、スキーに行こう。
トレーニングは怠らず、毎日4~5キロ走って鍛えよう。
春のロードレースと、秋の新潟シティマラソンでは10キロ走ろう。
休日には水泳教室に入って、四種目の泳法をマスターしよう。
自転車で、職場の10キロの道を走って行こう。
ところが、全部今は、していない。いや、出来ていない身体となっている。
確かに、できないことだらけだ。
あれだけこの還暦からの人生の楽しみを夢に見ながら、
何一つ、この一年間はやっていない。諦めている。どうにもならない。
腹筋がまだまだかちんこちんで、繋がっていないからだ。
右と左に分断された筋肉の組織が、一体になっていない。
もし、私が無理をして過剰な負荷をかけてしまったら、
またその部分が裂けて、ヘルニアとなる。
そしたら、また全身麻酔の開腹手術だ。
再発の確率の高さを言われ、どんだけ脅かされたことだろう。
だから、私は、本当に一年間、いっさいやりたかったことから手を引いた。
低山すら、登っていない人生なんて、
50代では考えられなかった。
本当は、今頃は、休日には山に登り、山頂で菊水一番搾りだった。
では、悔しいか。では、不満であるか。では、怒っているか。
それはないから、何だか逆に不思議だった。
そうなったら、こうなるだろうは、人生には存在していない。
そうなったら、ああ、こうなったか、何だこうだったんだと、私は実感できた。
今、ここに、庭の花たちがいるのは、この不自由な身体のおかげだ。
今、ここに、毎朝、大拙さんや、加島さんの語りを聴けるのは、
やっぱりこの不自由な身体のおかげだ。
今、ここに、我が家でのんびりと何もしないで居られる暮らしを達観できたのも、
この不自由な身体のおかげだった。
自由の中には、既に、不自由は存在していた。
そのバランスの問題、その比率・配当の問題だけだ。
そして、不自由にも不自由なりの自由が深く深く存在していることも、
この不自由な身体を通して実感したことだった。
どんなに身体が不自由であったも、今は、歩ける。好きなところに出かけられる。
それには、ちゃんと感謝している。
不自由でありながらも、精神の深さで自由であること。
真夏には、秋が在ること。
日の長さには、日の短さが隠されていること。
不自由であっても、自由があること。
「見る」では、目の前の事象だけを見て、現実だと勘違いするが、
本当は「観る」によって、
その事象の陰に在る、
そこに移ろい変化している、そのまだここに姿を現さないエトワを、
「観続ける」ことが、大事なんだと、私は不自由な身体から教わった。-
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