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from: クマドンさん
2017/10/24 06:27:53
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「残像」は語る
「残像」アンジェ・ワイダ監督 ポーランド映画
生きる道の選択を迫られる場面に立たされる。
さて、どちらの道を選ぶか。
全体主義という「われわれ」の時代。
そこに反する、道も、考え方も、表現も許されない。
「われわれ」は、こう考える。
だから、「われわれ」のようにしろ。
しかし、その「われわれ」に反抗し、従わず、
魂の奥深くに確かに輝き、語りかけている「われわれ」であったら、
きっとその「われわれ」を貫くことには、勇気が必要だ。
時代は、「われわれ」を揺動し、洗脳し、イデオロギーだと言い、
その一つの道しか、国民に許さなくなってしまう。
そんなことが歴史では当たり前のようにして繰り返されて来た。
国のために個人があるのではなく、
個人の自由と幸福とのために国が在る。
そんなことすら忘れ去られ、
「われわれ」の不真実を捻じ曲げ、覆い隠し、押し通すために、
国は、自由な個人を暴力に寄り抹殺を図る。
「われわれ」が全体に鳴った時、
この老教授は居てはいけない存在となってしまった。
それでも、彼は、「云う」。
それは、彼の信念であり、彼の信ずる道であり、彼の生き方そのものだ。
すると、国は、困った存在として、彼の自由と幸福と生活とを奪うようになる。
公職追放。彼は、信念を貫くことによって、生きる糧を失う。
芸術協会の会員証のはく奪。これによって彼の芸術家としての活動はできなくなった。
権利をまずはく奪して追い込んでいく。
生活の糧を失わせ、貧困と飢えの中に落とし込んでいく。
彼は、まったくの孤立だ。
弱ったところに、甘い手を差し伸べる。
「われわれ」の言うように、「われわれ」の想うように、表現できますか。
そうすれば、あなたが失った職も、芸術家としての表現する権利も、
再びあなたの手に戻ります。
親友の詩人は、その「われわれ」に加担し、自分を捨てた。
彼は、その詩集を発刊することすらできなくなってしまった。
それでも、彼には、大使としての職業が在り、
国から手厚く保護を受けて、言いなりになって書きたくもない詩を書いている。
その親友の誘いすら、彼は拒んだ。
孤立無援。
彼がやっと手に入れたポスター描きの職人の仕事も、
密告によって、彼が芸術家としての権利を持たぬ人だとの理由で、
解雇つれた。
「働かざる者、食うべからず」
食料の配給切符をもらえなくなってしまった彼は、
肉屋に行っても、ソーセージの一本すら売ってもらえない人となった。
彼は、彼に呼びかける魂の「われわれ」に素直に、信念をもって従った。
しかし、その国では、魂の「われわれ」を捨て、
自分の国を占領し、支配する、立った独りの「われわれ」の考えに、
ただ聴き、従い、そして、違った者たちを探し出してでも排除した。
歴史は、いつもこんな非情な選択を迫るものだ。
魂の「われわれ」に生きるか、国としての「われわれ」に生きるか。
この国も近い将来、そんな非情なる選択を迫られる国になるだろう。
さて、人は、その時だ。「どう生きるか」だ。
スターリンの垂れ幕で真っ赤に染まったぼろアパートの一室。
文化大臣に、毅然と芸術とは何かを問い、語る彼。
病で亡くなった母の棺桶に、赤いコートでたった独りでついて行く娘。
妻の墓参のために、真っ白な花を妻の好きなブルーに染める彼。
金がなく、食べるものも変えず、スープの皿を嘗める彼。
「われわれ」のど真ん中に立たせられ、
選択を迫られても、やはり自分自身を裏切ることなく、
そのあるがままの自分を貫く生き方。
勇気とは、スチゥミンスキ教授のために在る言葉だ。
彼は、死んだ。
しかし、彼の魂の「われわれ」は、ここにこうして生きている。
その「われわれ」は、監督ワイダの魂の声でもある。
ワイダは、この作品を「遺作」として、この世に残した。
老教授の描いた絵画は、やはり私たちの世にしっかりと受け継がれた。
それでは、国として「われわれ」の正義や思想や権力は、どこにあるか。
そんなものは、歴史の中で真っ向から否定され、
どこにも存在してはいないんだ。
時には、こうして嵐のような時代がやって来る。
それが、人が創る歴史の真実だ。
だが、その時は、海の上には出てはいけない。
じっとじっと静かに、深く、その海底で、忍んで、絶えることだ。
けっして、世の中に迎合したり、阿ったり、忖度してはいけない。
魂としての「われわれ」で、生き抜く「勇気」こそ、大事大事だ。
これが、老教授とワイダ監督からの「われわれ」に対する遺言だった。-
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