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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2017/12/13 06:10:38

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    歩は、動く

    さてさて、死んだら人は、どうなるのか。
    カウンター越し語り合いだった。
    「私は、死後の世界を信じません」
    「でもさ、もしさ、神様がいたらどうするん。」
    「その時は、その時です。ああ、いたな。」
    「でもさ、生きている間に、そのことを信じられたらいいんじゃないの。」
    「見えないものは、見えないものです」
    「でも、空気や音も見えないものだぜ」
    「でも、あれは、ちゃんと音で感じたり、息をして感じたりできます」
    「神様も、同じじゃないかな」
    「いや、違いますね。何なら、私に見えるようにしてください。」

    なかなか深い話になった。
    見えないものを、見えるようにする。
    でも、本当は全てのものは見えないもので出来ているのだ。
    このいのちとは、これがいのちですとは差し出せないもの。
    見えないから、信ることが、
    その人の生き方を決めるのではないだろうか。

    「私はね、死んだ人は、ここに居るんだと想っているよ」
    「そんなこと、あるわけないじゃないですか。」
    「あなたのお母さんも、ここに居て、こうしてずっとあなたのことを見守っている。」
    「クマさんは、見えるんですか。」
    「いや、見えるのではなく、感じている。」
    「そんなことは、あるわけはないです。」
    「でも、きっと、私が死んだら、愛する人には会いに来るさ。」
    「じゃ、どうやってその人が来たと、分かるんですか。」

    そうだよな。
    見えるものだけしか存在していないと思い込んでいる彼に、
    もし、私が亡くなって、魂だけの存在として居たとしたら、
    どうやってそこにやって来たことを知らせたらいいのか。
    そんなことを考えていたら、あることが閃いた。

    「じゃさ、あなたに会いに来たことを知らせるために、何かを動かすよ。」
    「・・・・。」
    「二人だけがさ、知っているサインを創ろうよ。」
    「・・・・。」
    「そうだなぁ、何がいいかね。」
    「それじゃ、将棋の駒はどうですか。」
    「将棋の駒・・・・。いいね。いいよ。」
    「私がその棚の上の将棋盤を広げておきます。」
    「うん、うん。」
    「そこに駒を並べます。」
    「そして、私が来たらその駒を・・・・。」
    「そうです。動かしておいてください。」
    「例えば、歩が一つ前に進んでいたとしたら・・・・。」
    「亡くなったクマさんが、この店に来たという証拠になります。」
    「そしたらさ、信じるけ。」
    「そうですね。そうしたらね。」

    そんな二人の会話だった。
    彼は、きっと私が死んだら、あの棚の上に将棋盤を広げてくれることだろう。
    そして、きっと、彼は待っていてくれるはずだ。
    私は、きっとその約束を果たすために、やって来る。
    そして、きれいに並べられた大局前の駒を眺める。
    そして、先手の私が、歩を一つ動かす。

    翌朝、彼が椅子の上に上がり、その駒を見る。
    「あっ、歩・・・・。」
    彼は、きっと信じられない不思議な想いに襲われるはずだ。
    でも、やっぱり、後手の彼は、自分の歩を一つ進める。
    そして、へぼ将棋の二人の迷勝負が、その日から始まる。

    ああ、これってありだなぁと、ふと想った。
    「これ、いい話だな。」
    「どういたしまして、将棋盤用意しておきますんで。」

    その日、東京の百歳に近い叔母さんの訃報が届いた。
    「ああ、会えなかったな・・・・。ごめんなさい。」だった。
    東京での4年間、貧乏学生の私に、飯を食べさせ、小遣いをくれた叔母さんだった。
    阿川佐和子のエッセーに、可愛い八百屋の叔母さんで紹介された人だった。
    笑顔がきれいな、しゃきしゃきしたきっぷのいい叔母さんだった。
    病院と老人施設に寝たきりの20年間。
    叔母さんは、やっとその身体を離れて、らっくりしていると私は想う。

    その叔母さんに会いに、明日から二日間東京に行く。
    80代の叔母三人を連れての東京旅行だ。

    ふと、想ったな。
    亡くなった父や母と、将棋盤の約束しておけばよかったなと。
    駒は、きっと動いたはず。

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