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from: クマドンさん
2018/02/05 06:16:24
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異界の人でいる
賢治の会だった。
1月は私の用のために欠席だった。
毎月1回のこの会。
参加する度に、賢治さんの想いが何だか分かって来るような気がする。
「紫紺織」
何だか初めは、退屈な話だった。
どうしてこの岩手県にこの織物が復活したのかという、
そんな話をわざわざもったいぶって書かねばならぬのか。
しかし、読み進むに従って、
私たちは、いつの間にか、賢治の異界に生きるものとなっている。
いつの間にやら、ここに居る。
そんな不思議さが賢治さんの物語には存在している。
この世と異界とは、地続きなんだな。
山男が招待状を見て、森から人力車でやって来る。
「来るはずのないと」と想っていた学者や、学校の先生は、驚いた。
そこから、もう既に物語は異界だった。
いや、異界とは、その学者たちが住むこの人間界のことかもしれない。
賢治さんは、その二つの世界を対立的には描かない。
まぁ、初めに読むときは、
どうしても人間界の経験知から、
教訓的・道徳的に読むことが多いようだ。
この賢治の会でも同様で、「そうだよね」のところで終わりそうだ。
しかし、しかし、なんだな。
この物語は、賢治独特のユーモアとペーソスに溢れていた。
そのことを感ずるためには、
私たちも賢治と同じ異界の人になることだ。
その視点。その気付き。それが大事。
いつも人は、常識の中からものをごとを覗く癖がある。
「ああ、あれは、そういうものただ」だ。
そこからは、異界のものはきっと、
どじで、まぬけてで、愚かで、おかしな存在と想われる。
そんなドキサの中で生きている朴念仁は、
きっとそうした異界の人たちを、異界の生き物たちを馬鹿にする。
しかし、しかし、なんだな。
異界の方から、この人間たちの世の中を見直すと、
こんなに生きづらく、せちがらく、不平等で、威張りんぼうで、石頭で、
どうにもならない欲張りで、嘘つきで、自分だけよければそれでよくて、
そんなものが、この世の中の人間として写っている。
異界のものたちを馬鹿にしているその人こそ、
実は、真理であり、真実であり、自然そのものである、
その異界のものたちからは、何とも哀れで、こっけいな生き物に見えることだろう。
世の中は、日露戦争の後、中国大陸への覇権を目指し、
戦争への機運だ高まっているご時世だった。
誰がこの戦争を鼓舞するか。
誰がこの戦争で儲けるか。
誰がこの戦争で偉くなるか。
しかし、山男には、そんな世の中とは全く無縁だった。
この人たちは、戦争によって、自分が家族が徴兵される。
そして、鉄砲の玉や、砲弾の爆発で、その地で死に果てる。
戦争でいのちを失うことこそ、無駄死にではないだろうか。
でも、世の中の人たちは、戦争すべしと、血気盛んだ。
その盛んなる機運に対して、民衆は、ノーとは想わず、ノーとも言わない。
しかし、山男には、そんなことはどこふく風だ。
異界に生きることとは、あるがままに自由に生きられるということだ。
この世の中の欲望には巻き込まれず、
のほほんと、気楽に、自然そのものを友として、
その山の恵みをいただきながら、ただ生きて死ぬことだ。
そこに、本来の「生きる」の喜びがあるのではないか。
私も、だんだん世の中から離れた場で、暮らすようになってきている。
「あいつは駄目だ」「あいつは馬鹿だ」「あいつなんて大嫌いだ」
と、言われながらも、
私は、そう言っている人のようにならなくて、幸いだと想っている。
この人は、いったい何を言っているんだ。
この人は、相手がどんな気持ちでそれを聴いているか分かっているのか。
と、情けなくも驚きの人は、この世の中の人の中には、
残念ながらいるものだ。
賢治さんも、相当そういう人たちには、やっつけられたみたいだ。
でも、賢治さんは、この異界に留まる。
その声を聴き、その言葉を感じ、その想いのままに生きようとする。
この世と異界とは、賢治さんにとっては、一続きなんだな。
ふと、ここで、異界を想うと、
その瞬間、そこは、異界となる。
異界は、向こうにあるのではなく、ここにある。
その見えないだけの異界を感ずる。
そこからの呼び声に耳を澄ます。
世の中を観ると寂しくも、腹立たしくもなるが、
異界は、平和で、暖かく、優しく、労りに充ちている。
そこで、ただのほのほと生きらるとこそが、
生きるということの幸せなんだな。
異界の人ととなる。
異界からこの世の中の人を想う。
実は、滑稽で、不思議なのは、この世の中なのではないだろうか。
そうあるべきことが為されずに、
そうあるべきでないことが、為されていることの多いこの世の中だ。
その風当たりをもろに受けたしまった私。
それは、賢治さんが感じていた風当たりなのではないかな。
異界の人である。
異界からこの世の中を見つめる。
そこで、不思議だと感じたことを、物語にする。
それは、「一郎さん」と山猫が出した葉書のようなもの。
賢治さんの物語は、異界からのお手紙なんだな。-
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