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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2018/04/27 08:44:39

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    映画「パリ・オペラ座」は凄い映画だ

    映画「パリ、オペラ座」
    平日の午後2時に映画を鑑賞できることの幸い。

    万代のバスセンターでカレーを食べていたら、
    隣の紳士に若い男性が声をかけていた。
    「読売テレビです、秘密の県民ショーの取材です。
     撮らせてもらってもいいですか」だった。
    「へぇ、ここにも来るのか」の驚きだった。
    ネクタイをしたビジネスマンに声をかけていたらしく、
    彼に断られたスタッフは、次のターゲットを探していたっけ。

    さてさて、映画の話だ。
    舞台は、舞台裏が面白い。
    舞台の袖や、スタッフの動きがスリリングだ。
    カメラは、舞台を正面からは撮らない。
    袖から、舞台で演ずる人たちの横顔や、後ろ姿をとらえる。
    そこには、表現する人たちの素の姿が顕れる。

    舞台で笑顔で踊ったバレリーナが、
    舞台の袖に入ると倒れ込み、肩で大きく息をする。
    憧れのバリトン歌手の歌う姿を、
    舞台の袖からじっと見つめるロシアの田舎から来た新人歌手。
    デーバは歌った後、万雷の拍手の中で袖に入り、
    汗をふき、支度を整え、カーテンコールの中に進み出る。
    コーラスの男性たちが衣装を着て、本番直前まで振付を合わせている。
    舞台上のミキサー室で、合唱に合わせて歌っている女性スタッフ。

    舞台は、華やかな晴れの場所。
    しかし、その舞台が完成するまでは、
    どれほどの長い長い道程を経て来ることか。
    連日の稽古の繰り返しであり、ダメ出しの繰り返しでもある。
    指揮者は小さなテンポの違いにナーバスになり、
    それができるまでタクトを振るう。

    オペラ座の振付師が、年度途中での降板を希望する。
    150名ものダンサーたちをこれからどうするのか。
    それでも彼は、この職を辞して、自分の決めた道を進むことにする。
    主役級のテノール歌手が、体調不良を理由に出演できないと知らされた。
    本番三日前の出来事だった。
    オペラの幕を開けるためには、代わりの歌手を探さねばならない。
    それも、一流であり、ジークフリートを歌える人であり、
    そして、有名な人である。
    プロフェショナルのすごいところは、その歌手を世界中から探して出し、
    その歌手は、前日にオペラ座に入り、当日本番で、その歌を歌う。

    あの華やかなオペラは、創り手全ての人の苦悩の結晶であることだ。
    舞台を創ることの苦しみと切なさと忍耐とは、
    私も劇団をやっていた時に感じたものだ。
    私は、主役が降板することが決まり、
    急遽その代役に2回立ったことがある。
    脚本家の私が、その役を引き受けねばならなくなった。
    演出家の先生に、その役をやってもらうわけには行かなかったからだ。

    団員が多ければ多いほど、
    その個々の考え方や、劇団に対する想いの違いをよく感じた。
    時には、私に対する激しい批判も生まれ、
    酒席で私は、役者さんたちに土下座して謝ったこともあった。
    集団での創作には、意見の対立や、個と個とのぶつかり合いは当たり前だ。

    また、与えられた役を演じきることとは、
    とてつもなく果てしない努力と忍耐が求められる。
    必ずダメ出しが出され、時には、こてんぱんにやっつけられる。
    「そんなのでは、どうにもならない。帰れ」と言われても、
    さて、どうやったらいいのかは、役者である私が工夫して、顕すことだ。
    本当に本当に、一つの役を演じきることは、苦悩なんだよな。
    「これで、いい」は、どこにもないからだ。

    カーテンコールで涙を流すのは、
    それまでの苦悩と努力と忍耐と、
    つぶされてもつぶされても立ち上がってここに到ったその喜びがあるからだ。
    その瞬間の歓喜こそ、舞台の持つ魔力であり、魅力だった。
    出番を待つ、あの袖での緊張感。
    舞台監督とスタッフとのピリピリとした空気感。
    演ずる人たちの心が一つになり、
    ラストに近づくと、この時間を終わらせることを惜しんでいる自分たちを感ずる。

    舞台とは、不思議な世界なんだ。

    その感覚が、また蘇る映画であった。

    あの新人歌手は、2年間、パリで留学する機会を与えられた。
    フランス語を習い、歌、歌、歌の生活を続けている。
    コンテストに出て歌った。
    まるでできなかった自分自身に絶望して、頭を抱えて悔やんだ、悔やんだ。
    そして、彼は、ドン・キホーテを歌った。
    その哀切のある歌心に私は、熱い涙が溢れた。
    彼は、このオペラ座を舞台にして、歌手としてデビューした。

    創り手であり、演じ手であり、プロデューサーであり、大道具・小道具である。
    数多の人たちの汗と努力と忍耐と、そして夢の結晶であるのが、
    あの舞台なんだ。

    秘密の県民ショーのスタッフは、たった数秒のための映像を求めて、
    この新潟の万代までやって来た。
    報われるのは一瞬のこと。
    でも、その瞬間に全てを賭けることこそ、
    きっと何かを顕わにしようとする使命を与えられた人たちの、
    この世での役割ではないだろうか。

    裏方・創り手が面白い。
    そんな感覚を思い出させてくれるいい映画だったな。

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