福井ともみさん、ザ・ジャズ・ピアニストという女性

すごかったな。
自転車でがんがんこいでジャズフラッシュだった。
間に会った。
汗をふきふき一番前、鍵盤がすぐそこの一等席。
いつものスコッチの水割りを飲みつつ演奏を待った。

笑顔のとてもチャーミングな女性だった。
薄い黄色のワンピースのベルトを忘れた話から始まった。
ピアノに向かう。音を奏でる。驚いた。
「グレート」という言葉しか出てこなかった。
どんどん創られて行く音と音と音と。
そこには、音楽を心底楽しんでいる魂だけがある。

ここをこうすると言うのではない、
そのこうなっていく疾走する音を楽しみ、味わっている。
「いいね。いいね」と、笑顔で味わう。
「こうくるか。そうくるか」と、どこまでも続く、広がる。
音を楽しむから音楽だ。
こんなに楽しそうにピアノを弾く、ピアニストに会ったことがなかった。

潤さんのベースは泣ける。
どんどん福井さんからのメッセージに応え、歌を歌う。
瞬時にどうしてあんなに凄い歌を創れるのか。
まさに、想像を絶する即興だった。
ああなると、創ると鳴らすの隙間は無いな。
湧き上がって来る音に、
指が追い付かないほどの速さ、素早さ。
それでいて、音にしっかりと意味が在り、味が在る。
若いのにどうしてこんなに深く深くなのだろう。

福井さんからの刺激と挑戦を、しっかりと音で受けて立つ。
彼女が、「そうそう、そうきたね」と、弾きながら笑顔だった。
私は、どんどんそのメロディーとハーモニーとに惹きこまれて行く。
彼女の音楽は、私を至福の世界へと誘っていく。
陶酔かな。
恍惚かな。
何だろうこの幸福感は・・・・。

吉田さんのボーカルが、大人だったな。
歌は、人生そのものだ。
どんな生き方をして、どんな想いで今、ここを生きているか。
歌には、全て顕わとなる。
吉田さんの魂の歌声には、そんな生きてきた遍歴の数々が、
滲み出る。沁みている。エラさんだなぁと、ふと感じた。
「哀愁のないサンバは、美しいだけの女」という台詞。
歌には必ず哀愁が在るはず。
どんなに陽気な歌であっても、哀愁があることで、深い深い歌になる。

若林さん、「おたっしゃ」でした。
クレオパトラ、最高でした。
今でもこうしていても、ドラムの音が響いている。
変幻自在。まさに、職人の技。
吉田さんが「ドラムでも変調するんだね」と言っていた。
本当だ。
何と言うドラマ―何だろう。
楽しむ。次々と繰り出す。弾きだす。醸し出す。
あの渋い顔で、音を一つ一つ味わっている姿がいいんだな。

私は、コンサートの後で、若林さんに言った。
「山下洋輔・大西順子、あの感動と同じ感動を味わいました」と。
やっぱり奇跡を起こす人はいるんだ。
改めて、その奇跡の顕れを目の当たりにした。
事実は、想像を超える。想像を絶する。想絶だな。

若林さん、ありがとう。
おかげさまで、奇跡の一生もののコンサートだった。
本当に、「グレート」という言葉しか、言い表せない「ジャイアンツ」だ。

CDを買った。
サインをしてもらった。
握手した手が、指が、マシュマロみたいなのでびっくり仰天だった。
本当に素敵なグレート・ジャイアンツだったな。