新規登録がまだの方

下の[新規登録]ボタンを押してコミュニティに登録してください。

登録がお済みの方はこちら

コミュ二ティポイントのご案内

詳しく見る

親父たちよ

親父たちよ>掲示板

公開 メンバー数:62人

チャットに入る

サークル内の発言を検索する

サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。

閉じる

  • from: クマドンさん

    2018/09/10 09:39:00

    icon

    羅須地人協会での賢治さん

    宮沢賢治さんの旅は、レンタカーで回る旅になった。
    盛岡から高速を飛ばし、花巻農業高校に向かった。
    その校舎の前の広い広い敷地に、
    賢治さんが高校教師を辞めてから暮らした、
    羅須地人協会の木造の瀟洒な建物が移築されている。
    「下ノ畑ニオリマス」の文字が迎えてくれた。

    彼は、ここで農民たちと集い、音楽や劇や文学の話をした。
    黒板の前に賢治さんが立ち、
    小さな火鉢の周りの丸椅子に農民たちが座り、
    どんな話をしていたのだろうか。
    農業と芸術とは一体である。
    この農の働きから、本物の芸術は生まれる。
    それは、作り物の芸術ではなく、
    土着の逞しく豊かな芸術になる。

    賢治さんは、そうやってたくさんの戯曲を書いて、
    学生たちや農民たちで演じて楽しんだ。
    日頃の生活で感じていることや考えていることを、
    そのまま台詞にする。それを役者が演ずる。観客は喜び、感動する。
    その一体感に本物は脈々と生き続ける。

    ここで、それが、行われた。
    何だか農民たちに語りかける賢治さんの声が聴こえるようだった。
    私も、賢治さんになって、
    椅子に座って賢治さんを見上げている農民たちに語りかけた。
    賢治さんは、当時干ばつや凶作で苦しく貧しい生活をしているこの人たちを、
    心の底から愛し、救いたいと願っていた。
    そして、こ人たちと共に本物の芸術を創造したいとも願っていた。

    作り物は駄目だ。本物でなければ。
    「形を作るな。心を作れ」は、ねぶた名人の言葉。
    私は、あのたくさんの賢治さんの童話や物語の原点には、
    きっとこの貧しく辛い生活をして耐えているこの人たちのことを想い、
    この人たちの魂が、きっと書かせたんだと、
    この教室に立って、そう確信した。

    農民たちと、そして、花巻の山と森と川と風と光とが、
    賢治さんにやむにやまれず書かせたものが、
    きっとあの私の大好きな物語なんだな。
    賢治さんの原稿を見ると、
    それはモーッアルトの楽譜のようだった。
    まさに、つぎつぎと、どんどんと湧いてくる言葉に、物語に、
    手がいっこうに追いついていないのだった。

    セロ弾きのゴーシュのように、
    湧き上がって来るものに全てを任せて書き続けている。
    それは、たくさんたくさん推敲の跡はあるが、
    その推敲すら、初めから約束された予定調和の言葉なんだ。

    賢治さんは、そこに居た。
    今でも、ここで農民たちと笑顔で語り合っている。
    ただ、声をなくしてしまったから、鉛筆をもてなくなったから、
    その物語はこの世には顕れていないが、
    きっとその物語を、誰かに託しいている信じている。
    誰かが、その物語を語り継がねばならないんだな。

    前庭では、大勢の学生が先生の指導の下、
    草刈りに汗していた。
    賢治さんの前で作業出来ることの幸せだな。
    岩手山と同じように、
    花巻の人たちの傍には、必ず賢治さんが笑顔で立っている。
    だから、私も、花巻の旅では、賢治さんに語りかけての旅だった。

    • サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0
    • サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0

    icon拍手者リスト

コメント: 全0件