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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2018/09/10 10:47:30

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    高村光太郎記念館

    花巻に行くときは、必ず私はここに寄ることにしている。
    れは、高村光太郎の山荘と記念館だった。
    私は、光太郎のことをよくは知らなかった。
    ところが26年前の新婚旅行でこの地を始めて訪れて驚いた。
    戦時中に彼は、花巻から離れた山里のここに、
    小さなおんぼろな山荘で、貧しい生活をしていたことを初めて知ったからだ。
    ここの荒れ地を自ら耕し、ここで農作物を育て、
    自給自足の暮らしをしていた。

    私の師でもある花巻のKさんは、幼少の頃、
    町で不思議な髭をはやし、ぼぼろの着物の老人を見たそうだ。
    その老人は、ヤギの乳を求めて山荘からやってきた光太郎だったと、
    Kさんは、大人になって気付いたとのことだった。
    光太郎は賢治さんの家との親交が在り、
    賢治さんの両親がこの山荘を訪れている写真が残されている。

    何よりも雪深いこの山里で、独り暮らした光太郎の孤独とは、
    いったいどんなものだったのだろうかと、
    この山荘の囲炉裏のある部屋や、光と彫られた便所の扉を見ると、
    何とも言えない厳粛な気持ちになってしまう。
    人が、深い深い想いをもって生活した場所には、
    その人の魂はきっと宿っているものだった。
    光太郎さんはあまりに崇高で、偉大な人だから、
    私にとっては遠い存在なのだと思ってはいた。

    しかし、61歳の私にとっては、
    何だかお互いに向かい合って、
    酒を飲みながら、ぼそぼそと生きる意味の話を彼からやっと聴けるような、
    そんな気がしたから、不思議だなぁ。

    記念館の彫刻の前で、私は動けなくなった。
    1人の少年の頭部の小さなブロンズ像だった。
    その眼差しに、その顔の傾きに、その表情に、
    何だか今にもこの少年が動き出し、語りだすのではないかと、
    魂そのものを感じた。
    それは、彫刻のすごさだった。
    それは、独りの少年の顔でありながら、
    その当時のままの彼の魂そのものが、ここに在るという感動だった。

    言葉を超えた質量・重み・存在感とでも言うのか。
    ただの右手の指で伝える祈りへの強烈な想いと信仰。
    慎ましく質素に誠実にそしてか弱く生きている少女の佇まい。
    彫刻って、存在し続ける魂そのものなんだと、
    その存在感に心を打たれて、そのまま動けなくなってしまった。

    そして、詩の朗読だ。
    「道程」には、長い長い全文があり、原形を初めて聴いた。
    その迷いと苦しみと、どうにもならない悲しみと罪深さと、
    それなのに、自然はそんな彼を優しく気遣い、目覚めさせた。

    「ああ 人類の道程は遠い そして其の大道はない
     自然は子供達が全身の力で拓いて行かねばならないのだ
     歩け、歩け どんなものが出てきても乗り越して歩け
     この光輝く風景の中に踏み込んでゆけ
     僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る
     ああ父よ 僕を一人立ちにさせた父よ
     僕から目を離さないで守る事をせよ
     常に父の気概を僕に充たせよ この遠い道程の為め」

    ほとほと私は、感じ入り、涙が溢れ、
    同じく一人立ちつせられている私の魂が震えた。
    その震えの証が、熱い熱い涙となって現われた。
    ああ、光太郎さんと出会ったな。
    そんな深い感慨のまま、私はこの記念館を後にした。
    雨が降っていた。

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