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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2018/09/28 05:34:40

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    津軽の魂の顕れは奇跡だ

    青森に泊まった時のことだった。
    本当はこの青森は、通過点だった。
    三内丸山遺跡だけは予定に入れていたが、
    宿泊したら翌日は鶴岡への異動と考えていた。
    しかし、北海道の大地震だ。
    新幹線が止まり、停電により、道内は全てのJRが止まってしまった。
    私は、急遽、青森駅前のホテルをとった。

    そして、青森を訪ねた。
    青森歴史博物館。
    棟方志功記念館だった。
    こんな時は、観光用の循環バスがありがたい。

    棟方さんの大作を目の当たりにした。
    動けなくなった。
    本気の魂。命懸けの仕事かな。
    それは、この世からのものではなく、
    向こうからの魂のメッセージだった。
    板で語る。
    その板を刻むことで、板に命を吹き込んでいる。
    それは、縄文人の土器や土偶造りと繋がっている。

    「わてば、青森のゴッホになる」との一念だった。
    そのすさまじい生き方そのものがあの板画になっていた。
    「版画」とは言わない。「板画」と書いて「はんが」と読む。
    魂の遺作。
    それは、高村光太郎記念館であのブロンズ像と出会った時も感じた。
    深いものは、魂から生まれたものだけに宿る力だ。

    その魂の力を、魂の在り方を、ここに表現したのが志功さんだ。

    その夜、民謡居酒屋「うさぎ茶屋」へ歩いて出かけた。
    本当は違う店に行ったのだが、満員で入れなかった。
    そこで、この店に行くことにした。正解だった。
    こうやって私は、必然的に本物に導かれて行く。
    その不思議さを、いつもいつも感謝している。

    カウンターには3組の中年のカップルだった。
    みんなここの津軽民謡を楽しみにしている常連のお客さんだ。
    70歳前後だろうか、矍鑠とした女将さんが、
    私の前に座って、話をしてくれた。
    さてさて、一体誰が津軽三味線を弾くのかと待っていたら、
    カウンターの中の着物の女性と若い男性がカウンターを出て支度を始めた。
    彼女は30代前半かな。笑顔の美しい女性だった。
    彼女が太棹を手に、音を整え始めたとたん、
    何か、私の魂がどきんと震えた。

    曲が始まった途端に、涙が、涙が溢れて止まらなくなった。
    こんなにも涙って出るものなのか。
    津軽には津軽の魂がある。
    その魂を継承し、その魂に華を咲かせ、歌わせられる人が居る。
    それは、やっぱり本場の津軽の人なんだ。
    真似事はできる。
    それなりに上手には弾ける。
    だも、私がこれまで聴いていた津軽三味線って何だったのか。

    高校生の頃、県民会館で、高橋竹山を聴いた。
    撃たれた。
    それは、魂叫び。魂の悲哀。魂の鮮烈だった。
    音と人と魂とが一体となり、響き、轟く。
    その感動と同じような、いや、
    私がもっともっと歳をとって来たので、もっと深く、深く、
    私は、ずっとずっとカウンターで酒を飲み、涙を溢れさせ続けた。
    私の魂が、この音に歓び、目覚めていた。

    女将は、こんな客をとてもとても愛してくれた。
    「おめさんのようなお客さんも居るよ」と、酌をしてくれた。
    この女将は、この津軽民謡の世界では、
    偉大なるマイスターであったことを、後で知った。
    私は、その演奏が終わることが、とてもとても名残惜しかった。
    女将の太鼓と、掠れた伸びのある歌声はいぶし銀の冬の日本海の風だった。

    音が消えた。
    お客たちは、「いかったよ」と、帰って行った。
    私は、動けなかった。
    女性は、女将さんの娘だった。
    そして、魂を継承する一番弟子だった。
    若者は、世界大会での優勝経験者でもあった。
    本物の人は、当たり前の人の中に居た。

    私は、彼女に声をかけた。
    「おめさん、青森のベートーベンになれ」と。
    彼女は何のことやらと、きょとんとした顔で笑顔だった。
    ここに津軽三味線の棟方志功が居た。
    私は、必然のこの出会いを心から天に感謝した。

    民謡居酒屋「うさぎ茶屋」だ。
    魂の顕れの奇跡と出会いたくなったら、
    またきっといつか、青森に行き、棟方さんと彼女の津軽三味線に会いに行く。

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