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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2019/06/29 06:47:43

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    ビル・エバンスだった

    ビル・エバンスが存在していなかったら、
    私は、彼のピアノを聴くことはできなかった。
    ということは、あの彼の独自な音楽は、
    ここには存在していないということだ。

    あるということは、きっと誰かがあるにしてくれたもの。
    その誰かは、きっと大いなる誰かに選ばれた人。
    そして、その大いなるはたらきは、
    その選んだ人に、使命を与える。
    その使命を果たすためのタレントも与える。

    兄が弾くピアノの下で幼い頃過ごしたと言う。
    ピアノの音が日常だった。
    私もそうだが、音楽を愛する人たちにとって、
    いつも音楽と共に生活することは、ごくごく自然なことだった。

    クラッシックを学び、知的にその音に磨きをかけた。
    jazzに出会い、音を創り出すようになってからも、
    独自ではあるが、それは、セオリーであり、オーソドックスだった。
    多くの偉大なるプレーヤーの驚嘆となるその音楽は、
    彼の繊細な指先だけが奏でられる音色だった。

    きっと彼の内には、音に成りたいと切に願う音がある。
    その音をフレーズの中で探る。探す。追い求める。
    そして、閃きと共に、その音を奏でる。
    これだ。その感動を真っ先に味わっているのも、彼だった。

    生涯に生みだした名曲の数々だ。
    今、ここでも、「ワルツ・フォ・デージー」が鳴っている。
    彼は、よく愛する人に曲を捧げた。
    不思議なんだ。
    彼は、彼で、自分が感動できる音楽を求めた。
    彼は、彼であることで、その音楽と同時に生きていた。


    しかし、その彼も、その音楽をまだ聴いていない。
    彼は、そのまだ音楽にならないその美に、音に、急かされる。迫られる。
    これって何だ・・・。と、鍵盤で音を探る。探す。試行錯誤する。
    予定調和のような、これだと言わんばかりの音と出会う。
    「ああ、そうか、この音だったんだ・・・」と、
    それは、彼が生んだものではないようにして、
    彼は、その響きを味わいながらの感動だった。

    そのことは、マイルス・デービスにも言えた。
    あのパップの巨人のことが、心に遺った。
    もし、マイルスが居なかったら、jazzは今のjazzであり得たのだろうか。
    彼は、その時代の天才たちをバンドに集めた。
    そして、インスピレートするままに、音に自らを委ねた。
    その音が、その響きが、その魂が、
    その瞬間、参加しているメンバーの魂を揺さぶり、インスパイア―される。

    コルトレーンが、チェンバースが、キャノンボールが、
    その音と一体となることで、自らの音を昇華させた。
    合わさることで、どこにも存在しない一つとなった。
    そして、プレーヤーたちは、「これか」「これだったんだ」との驚きだ。
    音楽とは、まだ、誰も、演奏する本人も、
    聴いたことのない音を、この世の音として顕わにすることだ。

    それを演奏するビルが感動したように、
    それを聴く私が感動するのは、
    その音を心から求めている彼と同じ「私」が、
    きっとこの魂に生きているからだと、私は考える。

    今、私は、語りたいことを、語るために、言葉を選んでいる。
    きっと語り始めたと言うことは、
    語りたいと言う自分では気づかない衝動があったからだ。
    では、何を語りたかったのか・・・。
    それは、ここに言葉を紡ぎながら、私も考えていることだった。
    言葉が先にあるのではない。
    想いが先にある。
    または、書きたい。語りたい。が、先にあるのかも知れない。

    私は、それを言葉で探す。求める。希求する。
    考えるとは、その「そうか、それだ」を追究することだ。
    では、「それだ」と言える、「それ」とは、一体どんな「それ」なんだ。
    不思議なことだが、「それ」は、ここに「ある」「それ」だ。
    しかし、「それ」は、黙ってここに在る。
    ずっとずっとここにあるのに、今でも、微笑みながらここに居る。
    いや、きっと「それ」が、私なのではないだろうか。

    「それ」に魅せられ、「それ」の呼び声を聴き、「それ」に選ばれし人は、
    永遠に「それ」を求めざるを得ない宿命を感ずる。
    「それ」に自らが成らなくては、気が済まない。
    「それ」が露わになることをせっついている。
    いつしか、「それ」に動かされ、操られ、自らを捨て、
    ただ、「それ」だけを追い求める生き方となる。

    ビルにとって、「それ」は、ミューズからのミッションだった。
    ドラック・ドラック・ドラック・・・だった。
    最愛の女性と尊敬する兄を自殺で失った。
    彼は、それでも「それ」を希求した。追究した。
    そして、きっと「それ」に近づき、「これだ」と想う音を求め、演奏を続けた。
    「それ」が「自分」になった時、
    彼は、突然車の中で血を吐いて、天に召された。

    ビル・エバンス。その音楽は、永遠からの贈り物だ。
    そのプレゼンテーターに選ばれた彼は、
    この世での自らの役割を全うした。
    人は、きっと深く人生を考える時、
    「それ」と出会う。
    そして、「それ」と一度でも出会った人は、
    「それ」に従う。その忠実な僕としての生き方しか自分自身に許されなくなる。
    ドラック・ドラック・ドラック。

    その狭間を生かされる天才には、きっと耐えられない試練なのに違いない。
    でも、生きることは、やめられないこと。
    生きるならば、ピアノに向かわねばならない。
    それが、ビル・エバンスの宿命だった。

    是非、この映画をシネ・ウィンドで観て欲しい。

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