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from: kさん
2006年05月15日 11時12分24秒
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猫と向日葵
彼の部屋の窓の下で
暖かい日差しに 日向ぼっこ
青空・新緑・白い雲
ゆっくり流れる時間を感じながら
ふと、思い出した
私は段ボールの中で
目覚めるまでの記憶がない
いや
忘れようとしていた
向日葵の芽が
友人のように私に問いかけているよう
思い出してごらん
ここは、君の居場所ではないよ
いつまでも出窓の下に隠れてばかりじゃいけない
1番目の飼い主の彼は
まだ生まれたばかりの私をもてあまし
死んでしまった
2番目の飼い主の彼は
私がたくさんの話を聞かせてくれ
たくさんいろんなところに連れていってくれた
でも、
彼が海の向こうに渡るとき
思わず、怖くて搭乗口から逃げ出してしまった
そのあと、
渋谷の飲食店街の残飯をあさっていたら
金の太いネックレスに日焼けをした男が
私を抱えて連れていった
3番目の飼い主だ
汚れたドロドロの体をキレイに洗い
私の首に金の首輪をかけた
ふかふかの絨毯に座らされた
怖そうな男たちが集まるところへ連れて行き
順にみんなの膝の上に渡された
緊張ばかりで、
ある日、高熱でうなされた
とても愛してくれたのだろうが
私には少し怖い世界だった
夜中にそっと出て行こうとしたら
何か食べてから行けよと 男は言った
しばらく一人
木陰や公園・・・のんびりすごした
時々、暇つぶしに食べ物をくれる人がいたから
飢え死にしなかった
でも
急に人恋しくなった寒い夜
最後の飼い主
4番目の飼い主に逢った
家も持たない
お金もない
食べ物もくれない
川原の片隅にいた男にひろわれた
夜眠るとき
少しでも暖かさが欲しかったから
男は私の首から
金の首輪をはずし
少しのお金を作ってきた
自分の服を買い
昼間はどこかへ働きに行き始めた
私は金の首輪の代わりに
空き缶を首にぶら下げられ
公園で日夜物乞いをした
空き缶に入っただけのお金で
私の食べ物を買い与えられる
ただ、
仕事がうまくいかなかった日は
身体を痛めつけられる
血が出るほどに
お金がたくさん入ると
自分の持ち物ばかりを増やしていく・・・
8年の月日が流れ…
疲れ果てた私は
何ももできなくなった
もう子猫ではなくなった
薄汚れた猫に
誰も食べ物なんかくれやしない
ずっと続いてた
高熱と震えが止まらなくなった
身体を足で支える力もない
男が私を病院に連れて行き
何でお前にこんな金をかけなくちゃなんないんだ
と、つぶやいていたのを聞いたところで
私は眠ってしまった
そう、
その帰りに
段ボールの中に捨てられたのだ
雪の降る晩だったような気がする
記憶を取り戻した瞬間
出窓から
ペルシャが私を見ているのに気がついた
少し自分が惨めに思えたが
ここにばかりいちゃいけない
ペルシャが起きている間は
私の居場所じゃないんだ
公園へ
街へ・・・と色んなものを
見つめなおしに行くことにした
自分自身で生きていくすべを
みつけるために・・・
向日葵の芽は
確実に育っている
もう少し時間が流れれば
大輪の花を咲かせるだろう
そうだ、
時々そっと
様子を見にくればいい
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