サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。
-
from: シェリーさん
2006/12/28 00:12:27
icon
夏の終わり
思い出が思い出たる所以、それは時の流れである。ある一つの物事、ある一つの区切りが思い出へと変化する瞬間ほど悲しく美しいものはない。
―――思い出。
私も、また夏の終りがやってくれば、九月のはじめ、激しい俄か雨が通り過ぎたあとの、風のやわらかい、あれはまだ夏の空だった。そんな午後がやってくれば
稲も色づき、秋祭りが近づいた秋の始まり、でも夏の終りという方が似つかわしい。
そんな日がまたやってくれば、本当に思い出すだけで幸せな気分になれるのだろうか。
「星が美しいのは、そこに目に見えない一輪の花が咲いているからだ。
砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ。」
ある旅人が言った。
「夏の終りの俄か雨が美しいのは、どこかに虹を隠しているからだ。
俄か雨の通り過ぎたあとの日曜日の午後が一段と美しいのは、どこかに心を隠しているからだよ。」
私なら、こう言うだろう。そう思いたいのだ。
私のことは、忘れないで欲しい。九月の始めの日曜日、俄か雨の降った午後には、私を思い出してくれ。
少なくとも私は、その日だけは確実に、君の女であったのだから。
その時は私も、きっと空を見ながら同じことを思っているのだろう。
涙に虹を作りながら。
コメント: 全0件