携帯電話のメモリーカード
最後の写真は二人の娘が笑う写真
何度も何度もこっそり見てたのよ

いつでも笑顔が見られる
魔法の道具
それが携帯電話だったのよ

あの日あの時秋葉原駅の広場で３人
別れの時間がくるまでずっと
手をつなぎ抱きしめあって語り合う

その時がやってきていることを
みんなで感じていたからなのか
他愛も無い話ばかりを続け時間が過ぎた

３日前の夜に突然壊れた
携帯電話のメモリーカード
「データがありません」とだけ私に告げる

文字の冷たさに呆然とした私
今でも変えることのできないままの
携帯電話番号

いつでも着信ランプが点滅すると
娘たちからの電話じゃないかと思い
こっそり開き見ていた私

そこに写真が出て来なくなり
募る想いは弾けて飛んだ
桜の花が舞い散る中で思い切り

とにかく抱きしめたい
とにかく声を聞きたい
とにかく笑顔を見たい

壊れたメモリーカードが叫び
桜吹雪に背中を押され
思わず行ってしまった二人のもとに・・・