８月６日に近づくと原爆の悲惨さがテレビで放送されている。
　今年はアメリカ大使が広島慰霊祭に出席したので、より多くの番組が放送された。
　多くの一般市民が犠牲になった広島・長崎の悲惨さは目を覆うばかりだが、アメリカ人の多くは今なお、第２次世界大戦を早期に終了させた有効な手段だったと思っていることが放送された。
　原爆投下を決断したトルーマン大統領はドイツ・ポツダムでの会議場近くの湖水の島にあるアメリカ宿舎で、野蛮人の戦争を終わらせるため、という理由で決断したとも言われている。

　一方、多数の犠牲者を出した日本はその悲惨な光景を記録に残し、２度と繰り返してはならないと、原爆廃止を訴えており、中にはアメリカに謝罪を求めている。

　それぞれの立場から見るともっともであるが、最も悪いのは、戦争推進者・指揮者であろう。この野蛮人たちがいなければアジアの人々に犠牲を強いることもなかっただろうし、日本全国に空襲をもたらすことも、原爆も無かっただろう。

　１９８８年に短身赴任で広島に行った。
最初に行ったのは何と言っても原爆資料館だった。
それまで、合唱団でレクィエムをいくつか歌っていたので、お葬式や法事ではいつも心の中でレクィエムを歌っていた。
そして、原爆資料館だった。
そこでは全くそのメロディーも歌詞も思い浮かばず、ただ無言でハンカチを握りしめていた。

　ハン・ギブン国連総長は長崎と広島を訪れ、式典に参加し、原爆資料館を見てこられた。
　ルースアメリカ大使は式典に出席されたが、無言のままだった。
原爆資料館を見学されたとは報道されなかった。
　それでも良い。あの苦しみに満ちた沈黙は多くのことを感じていると思うから。
そして、夏が終わり静になったとき、人知れず原爆資料館を訪れてくれたらいい。
　Ａ級戦犯は野蛮人だったと思うけれど、庶民はその犠牲者であり、その犠牲者の上に原爆を落としたのだということを知って貰えたらいい。