「現実的でしょうか?」


【Ⅰ】

「宇宙開発にかかる莫大なコストを考えれば、それを地球環境の改善に使った方がより現実的でしょう」

とのことですが、私は、逆にそのほうが非現実的であり、そのコストも宇宙開発よりもはるかに膨大なものになるのではないか、と思うのです。

安価で豊富な化石燃料がある限り、環境に配慮していくことは難しいし、途上国は豊かになる為に、いま以上の燃料消費を要求する。中国の経済力がいまだ韓国にも及ばない状態であるのに、すでに多くの環境問題が起きていることからも、この方法の実現が困難であることは明白であると思う。

宇宙に住むことは、誰であれ完結した空間での環境管理を要求されることになるので、自然にこの問題も収束するのだが。

【Ⅱ】

「 どこに行っても人間は人間です。宇宙に行ったって新たな争いの火種は必ず生まれますよ」

とのことですが、それはそのとおりでしょう。けれども、あきらかに争いの火種の多くが消滅することになる。なくなりはしないが、減るのであれば、それは大きな進歩だろう。

【Ⅲ】

「全ての人間が争いもなく平和に暮らすユートピアみたいなのは、逆にちょっと気持ち悪くて嫌ですね」

とのことですが、えっ、好戦家なのですか?

「戦争は別の手段をもってする政治の延長である」というあまりに有名な文句にあるとおり、政治ですべて解決するならば、戦争はなくなる。ビスマルクは戦争によってドイツを統一したが、ドイツ統一後のヨーロッパの平和はビスマルクの政治手腕によって保たれた。気味悪いことではなく、英知が無道に勝利しただけのこと。しかし安心して良い。かならず人知はほころびる時を持つ。そのとき争いは起こるだろうから。

【Ⅳ】

「地球上の争いが絶える事は無いでしょうが、私はそんな事で人間に絶望したりはしません」

とのことですが、絶望しないのはいいけれども、争いを減らすことのできる方法があるのに、それを実行することに消極的であるというのでは、それは争いに加担していることに等しいのではないでしょうか。