「試験は不公正なもの、という認識が必要」

【 不公正で何が悪い 】

入試というものによって、才能のなる学生を得ようという
のであるならば、その試験は不公正なものとならざるをえな
い。このことを、日本人は決して認めようとしない。ゆえに
日本における受験問題は決してなくなることはない。

そもそも、才能などというものを、客観的な指標によって
判定することは不可能である。才能を知るという行為は、結
局は、判定者の独断と偏見に頼る行為である。

天才的な教授が、平凡な点数しか取れなかったが天才的
な閃きを持った(教授がそう"感じた")受験生を合格にし、
入試で満点に近い点数を取った受験生を不合格にする。
才能ある者を選ぶということは、そういう不公正な行為
なのである。

しかし、これではあまりにもムチャクチャであろう、と
いうことで、欧米では大学受験資格試験というものが生ま
れた。

教授が才能を判断して入学者を決める、いわば不公正な
方法を容認する条件として、選ばれる学生達は全員、一定
のレヴェルの知識を身につけているという客観的な保証を
義務づけたのである。こうしておけば、どんなに教授が
変な判定方法を採ったとしても、あまりにも無知な学生
が入学してくることはなくなる。

ひとことでいえば、受験資格を取得した学生ならば、誰を
どのような方法で選んでも構わない、ジャンケンで決めて
もいいし、教授の好みの美形を選んでも構わない、という
ことである。

だが、日本ではこのような選抜方式は決して容認される
ことはないだろう。日本人にとって、試験はどれも皆、公
正かつ客観的なものでなければならないことになっている
からである。

しかし、考えてみたまえ。

試験、試験というが、所詮は人間が人間を判定するのだ。
その真正の確からしさは、疑うべきものではないのか。

すなわち、東大を出た官僚は、八百屋の兄ちゃんよりも
本当に優れた人間であるのだろうか。