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from: 一久さん
2009/09/10 19:38:52
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李斯のネズミとならぬように・・
【李斯のネズミ】
李斯とは、秦の始皇帝に仕え、その覇業を助けた名臣であり、秦の宰相である。また、元同門の韓非子が秦に仕えようとしたとき、これを謀殺した人でもある。そして、始皇帝の死後には、宦官の「趙高」によって謀殺された人でもある。
李斯は若いころ、番人をしていたが、厠のネズミと米倉のネズミの違いに着目して、悟りを開いた。いわく、厠のネズミはやせ細って人影に怯えながら暮らしている。同じネズミなのに、米倉のネズミは肥え太って、人間がやってくると逆に威嚇してみせるほどだ。ネズミに才能の差などあるわけもないのだから、この違いは、それぞれのネズミが占めた地位によって決まったものなのだ、と。
人間もこれと同じではないか。いかなる賢者も、片田舎の草庵に引っ込んでいれば、ただの世捨て人でしかない。それにはるかに及ばない凡人でも、一国の君主であれば多くの業績を残し得る。地位が高ければ少しの能力で大業をなせるが、地位が低ければどんなに学識を積んでも大したことはできない。ならば、学識あるものは地位を望むべきであり、得た地位を生かして天下万民を助けることこそ君子の道である。地位を得ることを蔑視し、市井に隠れることを好む学者など、たんなる怠惰な臆病者でしかない。
こう考えた李斯は、師の元を離れて秦に赴き、のちの始皇帝に仕えて宰相となる。そして自分よりも優れた学識を持つ韓非子を排除し、その地位を保った。宰相となった李斯は天下統一の事業に尽力し、ついに秦帝国の完成を見る。
韓非子を追い落したことは非難されねばなるまいが、しかし李斯程度の力量でも天下統一はできたのであるから、人道的にほ問題でも、政治的には問題にすべきではあるまい。
「李斯のネズミ論」が実証されたのだ、ということだ。
問題は、ここからである。その李斯もまた、より謀略に優れた宦官の趙高によって抹殺されるのであるが、趙高もまた優れた政治手腕を持っているのであれば、それでも構わなかった。しかし、そうではなかった為に秦はあっと言う間に滅び去る。
「李斯のネズミ論」は確かに真理の一端を突いている。が、人間はネズミではない。ネズミならば米倉を守っていればいいだけだが、人間は占めた地位に見合う業績を示さなければならない。その能力をも兼ね備えていなければならない。
「地位を得る為の能力」とは別に、「地位に相応しい力量」がなければならない。李斯にはその両方があったが、すべての人が両方に秀でている訳ではない。韓非子は学識において李斯を凌駕していたが、宮廷での遊泳術は子供並であった。逆に、趙高の器量は凡人以下であるが、その権謀術数の才は天下一品である。
韓非子のような人間は、本人が不幸に泣くことはあっても、天下国家に大きな損失をもたらすことはない。が、趙高のような人間が天下を動かす地位を得たら、国家は滅亡する。
さて、現代に目を移そう。
東大を卒業すること、旧大蔵省に入ること、これらは「大蔵のネズミ」になることを意味するが、その地位に相応しい能力を会得しているのかどうかは誰にも分からない。国会議員になる為の能力と、国会議員に相応しい能力とは別物である。東大入試でも、国家公務員上級試験でも、「怪文書の裏のとり方」とか「責任のとり方」などという問題は出題されることはないのだ。
どこかの進学塾の新聞広告に、「受験は頭の善し悪しで決まるのではない」とかいうのがある。だから努力と教授法で合格できるのだという訳だ。だが、それは裏を返せば、頭の悪い人間が東大を卒業し、官僚になり、政治家になっているかもしれない、ということでもある。頭は悪いが、努力と良き教授法によって合格人生を歩み続けた結果として。本人とその家族にとってはハッピーなことだが、天下万民にとってはしごく困る。「頭の悪い優等生」が高い地位を得ること。これほどの不幸は他にない。小趙高である。
とはいうものの、せっかく努力して地位を得た人々を無下に追い出すことも忍びない。ではどうすればいいかというと、地位を得た人は、自分が本当に賢いのかどうかを真摯に見つめ直してみることだ。天狗になっている人が多いので、まあ、無理だとは思うが。しかしもし、自分が大した才能もないということに気づいたら、それだけで貴方は名君足り得る。
地位に相応しい器量とは、自分の未熟を知る能力のことである。それさえあれば、他人の意見に耳を傾けることができるからだ。地位さえあれば、自分が凡人であっても、指示ひとつで組織を動かせる。天才の発想など不要であり、凡夫の常識を取り戻すだけで業績などいくらでもあげることができる。-
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