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from: 独楽屋千兵衛(せんべい)さん
2006/09/20 19:12:09
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ベイブレードとベーゴマ
ちょっと前、まだベイブレードが売っていた時の実話です。
また、相変わらず長文になってしまいました。
※これでも多少ハショっています。
とあるスーパーの玩具売り場で知らない老人が一人ベイブレードを選んでいました。
ところがどれを買って良いのか見当がつかないようである。
かけつけた店員さんの説明も、ベイブレードの箱を読みながらのたどたどしいやりとりでした。
そばで聞いていた私は、いてもたってもいられなくなり、ついつい口をはさんで、説明をしてしまったわけである。
ちょっと、余計なおせっかいだったかな?そう思う私に、
「孫もきっと喜ぶでしょう。本当にありがとうございます」
その老人は笑顔で、見ず知らずの私に深々と頭を下げた。その礼儀正さに、そんな私の思いもどこへやら、何かとても嬉しい気持ちになったわけである。
人の縁とは不思議なものですね。
全く面識のない私の仕事の関係の人の肉親が亡くなり、その葬儀に参列することがあった。
葬儀の片隅に立っていた私のそばで、幼い男の子が一人ベイブレードを回して遊んでいた。
「ボク、上手だね」
そう声をかけた私に、
「お父さんが教えてくれたんだよ」
無邪気に、そして得意げに、その男の子は返事をした。
そして、おもむろにポケットから今度は別のコマとヒモを取り出した。
古いちょっと大きめのベーゴマである。ところがこれがなかなか回らない。
「おじいちゃんからもらったんだ。」
「お父さんは下手なんだけどおじいちゃんは上手にまわすんだよ。ベーゴマの天才なんだから。」
しばらく一生懸命に、何回も、何回も、ベイゴマを回そうと繰り返していた。
そして、なんと、ついにベーゴマは勢いよく回りだしたのである。
「やった!」
「おじいちゃん、おじいちゃん、ベーゴマまわせるようになったよ!」
そう叫んで男の子は、祭壇に向かって駆けていった。
しっかりとコマを握り締めて、最高の笑顔を浮かべながら。
祭壇の写真は、その子のおじいちゃんだった。
そして、写真のおじいちゃんも、本当に嬉しそうな笑顔をその子に返しているようだった。
その時、私はハッとした。そう、もしやあの時お店で出会った老人だったんじゃないかと。
私は深く頭を下げた。
涙が自然にこぼれてきた。そして手を合わせた。
追記
初めてベーゴマを回すのはなかなか難しい。ベイブレードは、そんなベーゴマを元に、幼い子供でも回しやすいようにつくられています。
けれど、ベーゴマはベイブレードより劣るわけではないと思います。
子供にとって最初は難しくても、一生懸命何度もベーゴマに挑戦して、ようやく回せるようになった時の感動ほど素晴らしいものはないと思います。
もしかしたらベーゴマだけじゃなく、それは色んな事に通じる何かを、おじいちゃんは伝えてくれたのかもしれません。
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