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from: とおるさん
2020年07月30日 22時07分21秒
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20年07月30日Thursday
日常というのは、いとも簡単に『吹き飛ぶ』ものである。
出勤する。始業の30分前には事務所に到着し、缶コーヒーを飲みながら朝礼までを過ごすのが日課である。今朝も、いつもと変わらない、そんな朝だった。しかし朝礼の直前に、それは起きた。
突然、今まで聞いたことのないような爆音とともに社屋にすさまじい衝撃が走る。なんだ?何が起きた?わけが割らず、全員で社屋の外に飛び出す。「なんだあれ!?」「煙!」見ると、東のほうからもうもうと立ち上っている煙が見える。振り返れば、社屋のガラスが何枚も割れている。「爆発か?」「ガソリンスタンド燃えた?」状況を確かめるべく、みんなそっちの方向へ歩き出す。近隣住民も、みんなそっちに向かう。噂は早い。「温野菜らしいぞ」「なんで?」とにかく、歩いていく先々にガラスやら何やらが散乱している。しかも、上から何か布切れみたいなものが降ってくる。「断熱材だべ」「体に悪いなぁ…」さくら通りに出て、ちょっと行って、眼を見張る。がれきが散乱し、さくら通り沿いの建物のガラスは割れ。そこにあったはずの、温野菜の建物が骨組みを残して跡形もなくなくなっている。何が起きたのか、まったくわからない。さらに「ガスまだ残ってるらしいぞ」「逃げろ逃げろ」人も車も、みんな集まってくる。いやいやいや、これはとんでもないことが起きたぞ。
それよりなにより、まずは自分たちの社屋の片付けだ。割れた窓ガラスを回収する。うちの部署のガラスも、1枚割れた。その回収をしているところに…鳴り響く緊急地震速報。「逃げろ!」廊下に出た…が、揺れはまったく来ず。空振りなのはいいのだが…タイミングが悪すぎる。みんなで協力しブルーシートで養生する、他のガラスもそんな具合だ。
それよりすごいのが、うちの隣の会社である。お隣さんの社屋が盾になってくれて、うちの会社はそうでもなかった。しかし隣は、ほぼ全面ガラスが割れている。困ったときはお互い様なので、スコップやら雪かきやらを持って、破片をかき集める。本当に、ツーツーになっちゃってる…。
戻ってくるが、平常心で業務ができるわけもない。一番は、うちのヘッドの先輩である。喫煙所でタバコを吸っていた先輩。そこの背後にある窓ガラスが、クリティカルに割れた。危うく先輩はガラス片をかぶって血まみれになるところを、網戸があったおかげで間一髪逃れた。「毎日を大事に生きないとな…」そうですね…。応接室のテレビにみんなで群がって、映像を見る。「こんなんなってんの!?」驚きしかない。さらにブルーシートが目立つらしく、テレビ局やら見物人やらやってくる。
部署に戻って仕事…しようと思ったが、ガラスがないので集中できない。何より、取材のヘリコプターの音が凄まじい。これだもの、災害のときの報道の在り方を考える。これではがれきの下の人の声なんて聞こえない。さくら通りが封鎖されたとか紀勢線張られたとかなんだとかかんだとか。結局部署からデスクにマシンを持ってきて、デスクで作業する。しかし半分上の空、マジでなんなんだ。
昼休みになり、ヘリコプターは落ち着いた。仕出し弁当がちゃんと届いている、すごい。しかし状況は刻一刻と変化する。「遺体見つかったらしい…」あちゃ~…。いつものように昼寝をしようとしたら…無理だ、寝付けない。でもなんかあれで、突っ伏してひたすら目を閉じている。
午後もデスクで作業。事務所にかかってくる電話は、注文とかより状況確認の電話が多いようだ。「女子大とかすげえらしいべ?」「大玉村でも音聞こえたとか言ってますよ」どこまで被害が及んでいるのか、恐ろしい。外階段のドアが大きくひしゃげている、修繕までに1カ月かかるらしく、出入り禁止となった。警備会社さんに来てもらって、セキュリティ関係の点検をしてもらって、なんとか大丈夫みたい。その間にも修理が着々と入り、ガラスの修理だけはなんとか終わった。「早っ」「ヒーローだな」爆発特需…。半分上の空のまま定時となり、残業しようと思ったものの…無理だ、帰ろう。上がる。一緒に出た他のメンバーと、変な疲れ方したね、って。いや~、参った。
気を紛らわせるために、書店で立ち読みして…内容入らん。ベニマルに寄って、晩飯を調達して帰る。帰宅して、ラジオを付ける。NHKのニュースでも、話は出ている。だいぶ終わりかけだったので、ちゃんと聞けなかったが。
そんでもってさっきよ、テレビなんて普段見ないのに。20時45分からのNHK福島のローカルニュースを見ちゃうわけ。ヘリコプターからのあの映像は…凄まじすぎるな。爆発の威力のすさまじさを、物語っている。周囲数百メートルでこの被害、こんなことがあるんだなぁ。マジで爆弾が落ちたと思ったし、それくらいの光景である。戦争が始まったら、毎日こんな恐怖を味わうんだろうな。話は違うけど、やだやだ。
そして今、事故発生から13時間ちょっと経ったが、まだ気分が落ち着かない。業務中もそうだったが、ちょっとした物音でも気になる。大きければなおさら。そして、妙な疲れ方をする。一発の衝撃であれだもの、災害にあわれた皆様の感情を思うと、その気持ちは計り知れない。大の大人が仕事が手に着かない。近くには女子大・女子大付属高校幼稚園、あっちには桑野小学校。子供らはさぞかし怖かっただろうに。みんな、大丈夫なのかな。
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