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  • from: どら(^о^)さん

    2007年07月23日 17時41分43秒

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    【フィットネスクラブで芽生える恋?】

    もう10年以上も前に通っていた、都内某所のフィットネスクラブでのお話です。
    当時書いていたものを、グッテグッテのおかげで思い出し、奥から引っぱりだしてきました。


    【フィットネスクラブで芽生える恋?】

    「どうです、お茶でも御一緒に」

    私は自分の耳を疑った。お茶に誘われたのだ。
    中高年の多いこのフィットネスクラブに色恋沙汰は無縁とこれまで思ってきた。

    私は毎週土曜日の午前中ここに通う。
    彼の顔は何度も見かけたが、挨拶を交わしたことさえこれまでなかった。
    ただ、明るい感じの人だなあという印象はあった。
    きっかけはなんてことはない。
    床の上でちょっと疲れた身体をストレッチしていたら、彼がそばに来て話し始めた。

    「だいぶ涼しくなってきましたねえ」

    それから話は次々に進んだ。

    シドニーオリンピックについて熱く語る彼。

    スポーツに適したTシャツについて熱く語る彼。

    自分は汗かきだと熱く語る彼。そういえばいつも汗ばんでいるなあ、と気づく。

    熱心に話す彼に次第に心を開きだし、ふたりの雰囲気が和やかな感じになったとき、
    ついに彼は誘いのことばをかけた。

    「どうです、お茶でも御一緒に」


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


    60過ぎの男女のこの会話をそばで聞いていた私は驚いた。
    もうおわかりだろうが、お茶に誘われたのは60過ぎの女性で、私ではない。
    頭のてっぺんまで汗ばんでいる彼は、思い切って誘いのことばをかけた。
    しかし、彼女の反応ははっきりしなかった。
    要するに体よく断ったのだ。

    近くのマシーンでトレーニングしていた私は心の中で彼を応援した。
    「そこで引き下がってはならぬ」「もう少し彼女の気を引くのだ」

    彼はねばり強いのか、しつこい性格なのか、
    彼女をよほど気に入ったらしく、ふたたび熱く語り出した。
    いい加減、私も同じマシーンをいつまでも占有していられないので、
    ふたりの会話が聞こえる別の場所へと移る。

    ふたりの正面にどかっと座り、何食わぬ顔でストレッチを始めた。
    そんな不粋なことして、と思われる人もいるだろうが、
    ふたりにとって私はまったく目に入っていなかった。
    女性の方も誘いを断ったわりに、彼のそばを離れがたく、
    いつまでも彼の話に耳をかたむけ、相づちをうっていた。

    こうなると私は自分がばかばかしくなってきた。
    よっこらしょと起き上がり、マッサージマシーンの方へと向かった。
    約15分のマッサージの後ふたりの方を見ると、相変わらずふたりの世界がそこにはあった。
    いつ終わるのかわからないふたりの世界につきあいきれず、私はその場を立ち去った。

    思いがけず、60過ぎの男女の恋の予感を感じたのだが、
    残念なことに私がこのフィットネスクラブに通うのはその日が最後なのだった。
    よってその後、ふたりがどうなったのか知る由もない。

    おわり

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