太宰後期の16作品を集めた短編集。
田島は女性関係を清算しようと、たくさんの恋人と上手に別れる方法を考える。そしてキヌ子というすごい美人を疎開先の妻として恋人に会わせ、諦めさせるという手を思いつく。〜「グッド・バイ」
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ご存知、自殺した太宰の絶筆であり未完の小説です。

伊坂幸太郎の「バイバイ、ブラックバード」が太宰のこれをモチーフに書かれたものだと聞いて、図書館の順番まで時間がかかりそうなので先に本家を読んでみました。
この作品に限ってみれば、ユーモアに溢れ洒落て粋な話です。

美容師の恋人の店にキヌ子を妻として連れて行き、最後に札束を美容師のポケットにしのばせて「グッド、バイ」…。
人が振り向くくらい美人のキヌ子ですが、声が「鴉声」で仕事は「かつぎ屋」で部屋は汚く、奢るというと異常なくらいよく食べる。田島の足元を見てあれやこれや要求する強欲な女です。
そんなキヌ子を使って、あちこちにいる女と別れようとするんですが…。残念ながら、田島のその後は太宰のみぞ知る、です。

他の短編も切なさ、哀しさ、時に狂気も混じって心に沁みる話でしたね。この年齢で読む太宰は、若い頃と全然違う印象で私の前に現われました。彼にはさぞ生きにくい時代だったろうと同情します。