ミッソー中佐は懺悔室のシスターミザリィの様子を見に行った。

ミッソー中佐【シスターミザリィ、大人しくしているか？】

シスターミザリィ【ミッソー中佐のことばかり考えていました】

ミッソー中佐【なに？破廉恥な妄想でもしていたのか？】

シスターミザリィ【とんでもない！どうやったらミッソー中佐の弱みを見つけ出せるか考えていました】

ミッソー中佐【私には弱みなどない。無駄な努力はやめておけ。それより吉報があるぞ。近々、から揚げと卵かけご飯のラインを新設することになった。シスターミザリィには予知能力があるのか？から揚げと卵かけご飯を製造したらいいと言ってたが、まさにその通りになった。シスターミザリィに試食係を頼もうと思っている。これでドーナツ地獄から解放されるぞ】

ミッソー中佐は内線電話でシスターメアリーに保安室へ来るよう言った。

シスターメアリーはシスター達のまとめ役をしていた。

ドーナツの森修道院に来て長い。

シスターメアリーがやって来ると、ミッソー中佐は言った。

ミッソー中佐【そこに座りなさい。実はシスターメアリーに頼みたいことがあるんだ】

シスターメアリー【何でしょうか？ミッソー中佐の頼みごとなら断るわけにはいきません】

ミッソー中佐【今回ドーナツラインに加えてから揚げと卵かけご飯のラインを新設することになった。そのため新鮮な鶏肉と卵を仕入れる必要がある。シスターメアリーは町に行って、大量に鶏肉と卵を購入出来る鶏肉店を探して欲しいのだ】

シスターメアリー【わかりました。１日では無理かも知れません】

ミッソー中佐【わかっている。一週間の外出許可を取ってある】

南京子【ミッソー中佐、お久しぶりです】

ミッソー中佐【そうだな。南さんは元気だったの？】

南京子【はい。おかげさまで。今日は相談があって来ました】

ミッソー中佐【相談ってどんなこと？】

南京子【私の会社でこちらで製造しているドーナツを販売していることはご存知ですよね】

ミッソー中佐【知っているとも。売れ行き好調だとか】

南京子【はい。そこで今回新商品として、から揚げと卵かけご飯を社長に提案しました。すると、難なく裁可が下りたのです。こちらに今以上にご負担をかけることになりますが、製造ラインの拡張は可能でしょうか？】

ミッソー中佐【シスター達は暇だと精神的に良くありません。ちょうど良かった。どんどん働いてもらいましょう】

シスターマーガレット【ミッソー中佐、３分なんて短すぎます。せめて５分はないと】

ミッソー中佐【３分が不満なのか。それじゃアンナ修道院長の指示通り２分にするからな】

シスターマーガレット【そんな！ミッソー中佐は鬼です！】

ミッソー中佐【鬼だと？それを言うなら鬼の総統と言ってくれ。シスターミザリィには何と言われたと思う？悪魔と言われたんだぞ。私が２分は短いから３分にしたらどうかとアンナ修道院長に進言したのも知らないで、悪魔だ鬼だと言いたい放題だな！シスターマーガレット、１秒時間オーバーしたので明日の面会は２分とする】

ミッソー中佐はシスターマーガレットを追い立てて居室へ戻らせた。

ミッソー中佐が保安室に戻って見ると、意外な訪問客が待っていた。

ドーナツを納入しているミクチ株式会社の営業担当の南京子だった。

シスターミザリィ【シスターマーガレット、あなたが密告したのね！道理でミッソー中佐の対応が早かったのね。私が居室に戻って見るとミッソー中佐は小銃を構えて待っていた。シスターマーガレット、泣かないで！私とあなたは本当の姉妹のように暮らして来た。あなたのしたことを恨んでなんかないわ。私のことを思ってしたことなんでしょう？】

シスターマーガレット【アンナ様の処置がこんなに厳しいものだとは思わなかったの。今回もすぐに出てこられると思っていたんです。シスターミザリィ、何か必要な物があれば言って下さい】

シスターミザリィ【ありがとう。でもミッソー中佐はドーナツ以外の差し入れは許さないと言ってた。三度の食事もドーナツを中心にしたものらしいの。ドーナツ鍋って一体なんなのよ！】

シスターマーガレットの背後にいつの間にかミッソー中佐が立っていた。

ミッソー中佐【シスターマーガレット！】

シスターマーガレットは驚いて振り向いた。

ミッソー中佐【３分以上話すことは出来ない。３分１秒になった。居室へ戻るんだ】

シスターミザリィ【それにしてもあのミッソー中佐とアンナ様はどこで知り合ったのかしら？アンナ様はミッソー中佐を信頼してるし、ミッソー中佐はアンナ様に服従している。ミッソー中佐が残忍な男であることを知っていて、修道院の保安室長を任せているのかしら？ミッソー中佐にも何か弱点があるはずよ。その弱点を必ず探りだして突きつけてやらなくちゃ】

シスターミザリィの心の中にミッソー中佐に対する対抗心がめらめらと燃え上がった。

その時、ドアをコツコツと叩く音がした。

食事を差し入れる小窓を開けて見ると、シスターマーガレットが立っていた。

シスターミザリィ【シスターマーガレットどうしたの？私が心配で見に来たの？】

シスターマーガレット【シスターミザリィ、ごめんなさい！】

シスターマーガレットはいきなり泣き出した。　

シスターマーガレット【ドーナツをシスターミザリィが盗もうとしていると密告したのは私なの】

シスターミザリィ【顔も知らない私の父親を殺すと言うの！】

ミッソー中佐【そうだ！トーマスに会わせた上で、シスターミザリィの目の前で惨殺してやるのさ】

シスターミザリィ【ひどい！ミッソー中佐は悪魔だわ！】

ミッソー中佐【悪魔？それを言うなら悪魔の総統と言ってもらいたいね。シスターミザリィごたくを並べないで、さっさと懺悔室へ行くんだ】

シスターミザリィは懺悔室に入り、ミッソー中佐は外から施錠した。

シスターミザリィはアンナからトーマスとケイトの間に生まれた子供だと成人してから知らされた。

そのため最近まで両親は馬屋番夫婦だと思っていた。

両親は実の娘のように大切に育ててくれた。

感謝してもしきれない。

ミッソー中佐【シスターミザリィに対する態度を深く反省したからです。これからは誠心誠意勤めさせていただきます】

シスターミザリィ【反省と言う言葉はミッソー中佐に一番似合わない言葉だわ。本当の理由があるんでしょ。早く教えて】

ミッソー中佐【シスターミザリィの生い立ちをアンナ修道院長から聞いたからだよ！】

ミッソー中佐の態度が急変した。

シスターミザリィ【私がトーマスと言う教祖とアンナ様の妹のケイトの間に出来た子供だと言うこと？】

ミッソー中佐【そうだ！アンナ修道院長にトーマスに復讐して差し上げると言ったんだ。お前の父親を私が抹殺してやろう】

ミッソー中佐【ご安心下さい。シスターミザリィのためにアンナ修道院長は最大限の配慮をしました。懺悔室にはスポットクーラーを設置しましたし、ベッドはフランスベッドだし、差し入れも許可されたのです。ただし差し入れはドーナツのみとなっています】

シスターミザリィ【そんな！私にドーナツだけしか与えてくれないの？】

ミッソー中佐【もちろん三度の食事は用意します。朝はドーナツ粥、昼はドーナツの天ぷら、夜はドーナツ鍋となっています】

シスターミザリィ【ミッソー中佐、私を馬鹿にしてるの？誰がこんなメニューを考えたの？】

ミッソー中佐【もちろん、私が考えました】

シスターミザリィ【ところでミッソー中佐の言葉使いが丁寧になったのは何故？前はすべて命令口調だったでしょ】

ミッソー中佐は懺悔室の準備が終わると､シスターミザリィの居室へ行った。

ミッソー中佐【シスターミザリィ、いますか？懺悔室へ案内します】

ドアを開けて出て来たのはシスターマーガレットだった。

二人は同室だった。

ミッソー中佐【シスターマーガレット、シスターミザリィを呼んで来て下さい。アンナ修道院長がシスターミザリィを懺悔室に入れるよう命令したのです】

シスターマーガレット【すぐに呼んでまいります】

シスターミザリィはご機嫌ななめってる顔をしていた。

シスターミザリィ【アンナ様が私に懺悔室へ行くよう命じたの？】

ミッソー中佐【そうです。今回は反省してもらうために、長期間懺悔室に泊まっていただきます】

シスターミザリィ【そんな！懺悔室にはエアコンがないのよ。熱中症になったらどうしてくれるのよ！】