山の頂上から見ると、敵はざん壕を掘っているらしく、どこにいるのかわからなかったが、一人の男が穴から出て来た。僕は64式小銃を肩から下ろすと、銃の脚を立て、照準を定めて待機した。64式小銃の射程は300mである。敵との距離はおよそ200mなので、十分射程距離内であった。照星を起こし、銃の台座を右肩につけ、左手で銃を支え、安全装置を外し、右手の人指し指を引き金に軽く当てた。ざん壕の中から敵が出て来た。総員10名だった。彼等は巧みに掩ぺいされたテントへ入って行った。僕は態勢を低くして走った。最後はほふく前進をしながら、テントに近づいて行った。それから手りゅう弾のピンを引き抜くと、テント目掛けて投げつけた。