彼女は真っ直ぐに僕を見た。その表情には動かしがたい決意がありありと見られた。｢わかりました。それではまず台北市浄水場へ行き、炭そ菌がどうやって混入されたか調べてください｣｢いいわ。浄水場は国立台湾大学のすぐ近くにあります｣｢僕はこれから台湾総統府へ行って、辻少佐と一緒に医師と看護士の配属を決めなければなりません。夜はこのホテルにいますから、何かわかったら連絡してください｣僕とライさんはジープに乗ると、赤いレンガ造りに白く縁取りされた台湾総統府へ向かった。台湾総統府はその昔、日本軍が総督府として使用していた建物である。辻少佐が待っていた。｢辻少佐、こちらは任さんの妹のライさんです｣｢ライです｣｢ライさんよろしく｣｢辻少佐、どのくらい集まりましたか？｣｢医師が100人、看護士は300人です｣｢それだけでは足りませんね｣｢はい。日本からも防毒マスクや医薬品と共に、看護士が到着する予定です｣｢辻少佐、台北の看護学校の生徒も動員してください｣｢了解しました｣僕はジープに乗るライさんを見送った。彼女はにこやかに手を振った。