高度3000mに達した時、ライさんが言った。「黒住さん、頭が痛くて、息苦しいの」「わかりました。ライさん、このマスクを装着してください」僕はライさんに薄緑色の酸素マスクを渡すと、バルブを開いた。酸素の効果はてきめんである。５分もしないうちに、ライさんは元気になった。「ありがとう。だいぶん楽になったわ」「ライさん、そのまま酸素を吸っていてください。ラサは高度3600mですから、もう少し上昇しなければなりません」世界の屋根、ヒマラヤ山脈に近づくにつれ、雪をかぶった美しい山々が視界に入って来た。ヘリは円を描きながら、相変わらず上昇を続けていた。高度計は3600mを示していた。その時、モニター画面はヘリの前方にミサイルの姿を捕らえた。