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from: エリスさん
2007年02月26日 13時18分17秒
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恋多き女神・1
ヘーパイストスとアプロディーテーが結婚して、一年が過ぎた。決してラブラブではなかったけれど、食事の準備やお掃除や、妻としての役割はちゃんと果たしてくれ
ヘーパイストスとアプロディーテーが結婚して、一年が過ぎた。
決してラブラブではなかったけれど、食事の準備やお掃除や、妻としての役割はちゃんと果たしてくれるアプロディーテーに、不満などはない。
ないのだけれど……。
仕事から帰ってきて、疲れたから少しベッドに横になろうかなァと思っていたその時、彼――ヘーパイストスは見つけてしまった。
枕の上の、金色の髪を。
アプロディーテーの髪か? いや、それにしては短い。それに少し太めだ。
自分の髪は少し茶色みがかっているし、これは明らかに、この家の者以外の髪だ。
『いったい誰の……』
恐る恐るそれを手に取ると、微かに残るオーラを感じて、確信してしまった。
『あ、兄上!?』
間違うはずがない。それは、同じ母から生まれた兄・アレースの髪だったのだ。
『なんで!? なんで兄上の髪の毛が、こんなところに!?』
訳がわからないでいるヘーパイストスに向かって、キッチンからアプロディーテーが声をかけてきた。
「あなたァ〜ン、お夕飯ができましたわよォ〜」
「あッ、ああ……ハーイ…………」
ベッドに髪の毛、ベッドに髪の毛、ベッドに髪の毛!!
それが意味するものは、やっぱり一つしかないのか!?
『うそだろ!? 兄上ェ〜〜〜〜〜〜!』
ヘーパイストスはその髪の毛を、千切れるかと思うほど強く握り締めた。
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from: エリスさん
2007年03月28日 12時42分22秒
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「恋多き女神・24」
またまた数日後……。
アプロディーテーが朝食の仕度をしている間、ヘーパイストスはこっそりと寝室に仕掛けをしておいた。
『この寝台の上に乗ると、ここがこう動いて、このテコが……』
頭の中で呟きながら、何度も仕掛けを確認する。
これでよし! と確信したところで、アプロディーテーの声がかかった。
「あァなァたァ! 朝食ができましたわよォ!」
こんな可愛い新妻っぷりなのに……と思いつつ、ヘーパイストスは心のうちを読まれないように明るく「ハーイ!」と返事をした。
今日は、決行日だった――
ヘーパイストスが仕事に出かけると、アプロディーテーはいそいそと身支度を始めた。もちろん、アレースを迎え入れるためである。いつもは簡単に済ませてしまう化粧も、彼に会う時は念入りなのだ。これも乙女心というものか?
しばらくすると、アレースがそうっと忍び込むようにやってきた。
「ヘースは出かけたよね?」
「大丈夫よ。今頃は……」
言い掛けて、やめる。ついアプロディーテーは「あの恐ろしい姿をした魔物(キュクロープス兄弟のこと)と、暑苦しい場所で汚れ仕事をしているわ」と続けようとしたのだが、先日ヘーパイストスの容姿のことを馬鹿にしたらあんなに怒られたのである。またアレースのことだから、こんなことを言ったら怒るに決まってる、と瞬時に気づいたのだった。
「今頃は……なに?」
アレースの問いかけに、アプロディーテーは言葉につまりながらも、
「今頃は、きっと、大好きな鍛冶仕事に、専念してるわよ! きっと」
「ああ、そうだね。あいつは昔から器用な奴だから。ホラ、この剣も、防具も、みんなヘースが作ったものなんだよ」
「あら、素敵ね」
と、アプロディーテーは言ったものの、本心では、
『そんなに弟が大事なら、私と浮気なんかしないでよ!』
と、思っていた。思ってはいても、アレースにそんなことは絶対に言えない。何故なら……。
『アレースはこのオリュンポスで一番の美男子なんですもの。絶対に他の女神には渡さないわ』
この時、後に「美男」で有名になるアポローンや、ヘルメースはまだ子供で、ディオニューソスに到っては生まれてもいなかった。つまり、美の女神アプロディーテーのお眼鏡にかなう男神は、今のところアレースしかいなかったのである。
「そんなことより」と、アプロディーテーはアレースの手を引いた。「早くあちらで寛ぎましょ」
アプロディーテーに誘われるまま、アレースは寝室へと連れて行かれた。
部屋の中は、アプロディーテーの体香である桃の実の薫りで満たされている。この薫りを嗅ぐと、アレースは「ほわ〜ん」とした気持ちになってしまう。
「さあ、こっちに座って」
アプロディーテーは尚も誘ってくる。
二人は一緒に、ベッドに腰掛けた。
その瞬間!
「きゃあ!!」
「うわァ!」
二人は見えない何かに包まれて、天井へ引き上げられてしまった。
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