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from: エリスさん
2007年05月21日 12時03分32秒
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恋神誕生神話異聞・1
不和女神エリスは、今でこそ子宝に恵まれているが、独りで子供を宿せるようになるまでには、百年近くの月日を要していた。実母である夜の女神ニュクスは、古くか
不和女神エリスは、今でこそ子宝に恵まれているが、独りで子供を宿せるようになるまでには、百年近くの月日を要していた。
実母である夜の女神ニュクスは、古くから知られる単身出産神であるが、やはり彼女も簡単に造れるわけではなく、水晶球に願をかけて自身の神力を増幅させてから、胎内に子供が居ると強くイメージすることによって宿していた。
同じく単身出産神であるヘーラーも強くイメージすることで子供を宿すタイプだが、彼女の場合は何かで力を増幅させる必要もなく、自身の神力だけでやってのけてしまったのだから、流石はオリュンポスの王后陛下である。
エリスはヘーラーの養女にしてもらったこともあって、受胎の術はヘーラーに教わった。先ずは神力を鍛えることから始まり、体力をつけ、女体の仕組みを学び、子供を産むこと・育てることに対する心構えを十分に教わってから、イメージトレーニングへと到った。
イメージトレーニングをするときは、なるべく楽な姿勢になるようにしなくてはならない。一番いいのは寝ながらなのだが、エリスはヘーラーの前で寝るのも申し訳なくて、椅子に座って、背もたれに十分に体重を預けながらおこなっていた。
ヘーラーもエリスの斜向かいに椅子を持ってきて座り、彼女の手を取りながら指導をした。
「では……目を閉じて、呼吸を整えなさい」
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from: エリスさん
2007年06月19日 16時08分29秒
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「恋神誕生神話異聞・12」
「やめろ!!」
と、誰かが叫んだかと思うと、紫の炎の矢がゼウスの右手に刺さり、雷電とともに消えた――途端、ゼウスはうめき声をあげた。
誰か、と問うまでもなかった――入り口のそばに、両手を差し出して技を放ったままのエリスが立っていた。ルシーターも後から駆けつけてきた。
「エリス様、いけません! まだ動かれてはッ」
ルシーターの言葉には従わず、エリスはふらつく足を気力だけで歩かせて、エイレイテュイアとゼウスの間に割って入った。
「神王陛下、これ以上の不埒はやめていただきたい」
エリスの言葉に、ゼウスは鼻で笑った。
「不埒と申したか? 馬鹿め、父親が娘を教育するは当然のことぞ。娘が産んではならぬ子を宿したのだ、親の責任として、堕胎させるのは当たり前のことではないかッ」
「そんな権利は御身にはない!! 子を産むのは当人の自由! 例えどんな子供であっても、当人が産むと決心したのなら、祝福することこそ親の勤めであり、責任ッ」
「たわけたことを申すな、罪人の分際で!」
ゼウスはエリスの胸元を掴むと、その手から雷電を発した。
エリスの体に雷電が駆け巡る――だが、彼女は一言も漏らさなかった。
「お止めください!」
ヘーラーがすぐさまゼウスの手を掴んで、引き離した。おかげでヘーラーの手から肩にかけても雷電が走ったが、そんなことは構わず、ヘーラーは言った。
「病人であるエリスに、なんてことをなされるのです!」
「そんなこと、わしの知ったことか! そこを退(ど)けッ」
「いいえ、退きません」
「退けェ!!」
すると、エリスが言った。
「母君、そこをお退きください、エイリーを連れて」
「エリス?」
「お願いです、母君」
それを聞き、ヘーベーがエイレイテュイアの方へ行った。
「お姉様、こちらへ。お腹の子に障ります」
ヘーベーがエイレイテュイアを離れた所へ連れて行ってくれたのを確認したエリスは、ヘーラーにも少し離れるようにと再び言った。
「陛下、どうしても、腹の子を殺せと命じられますか?」
エリスが言うと、ゼウスは怒りの表情で言った。
「当たり前だ!!」
「では……ディスコルディア、ここへ!」
エリスの呼び声に、彼女の右手に光が集まって、剣の形となった。エリスの愛剣・ディスコルディアである。
「御身と刺し違えても、お止めするしかありません」
「エリス、やめて!!」と、エイレイテュイアは叫んだ。
「大丈夫だ、エイリー。子を守るのは、親の勤めだからな」
するとゼウスは高笑いを始めた。
「わしと刺し違えるだと? そのふらついた足で、立っているのもやっとであろうが。それを、わしに歯向かえると思っているのか!?」
それを聞き、エリスはキッと相手を見据えた。
「できるとも。なぜなら、御身は我が妻・キオーネーの仇だからだ!!」
エリスは両手でディスコルディアを握ると、眼前に構えた。
「我が妻だけでは飽き足らず、我が子にまで害をなそうと言うなら、この身に代えても阻止してみせる!!」
「ならば、おまえごと始末してくれるわ!!」
ゼウスが両手に雷電をみなぎらせた。
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