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from: エリスさん
2007年05月21日 12時03分32秒
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恋神誕生神話異聞・1
不和女神エリスは、今でこそ子宝に恵まれているが、独りで子供を宿せるようになるまでには、百年近くの月日を要していた。実母である夜の女神ニュクスは、古くか
不和女神エリスは、今でこそ子宝に恵まれているが、独りで子供を宿せるようになるまでには、百年近くの月日を要していた。
実母である夜の女神ニュクスは、古くから知られる単身出産神であるが、やはり彼女も簡単に造れるわけではなく、水晶球に願をかけて自身の神力を増幅させてから、胎内に子供が居ると強くイメージすることによって宿していた。
同じく単身出産神であるヘーラーも強くイメージすることで子供を宿すタイプだが、彼女の場合は何かで力を増幅させる必要もなく、自身の神力だけでやってのけてしまったのだから、流石はオリュンポスの王后陛下である。
エリスはヘーラーの養女にしてもらったこともあって、受胎の術はヘーラーに教わった。先ずは神力を鍛えることから始まり、体力をつけ、女体の仕組みを学び、子供を産むこと・育てることに対する心構えを十分に教わってから、イメージトレーニングへと到った。
イメージトレーニングをするときは、なるべく楽な姿勢になるようにしなくてはならない。一番いいのは寝ながらなのだが、エリスはヘーラーの前で寝るのも申し訳なくて、椅子に座って、背もたれに十分に体重を預けながらおこなっていた。
ヘーラーもエリスの斜向かいに椅子を持ってきて座り、彼女の手を取りながら指導をした。
「では……目を閉じて、呼吸を整えなさい」
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from: エリスさん
2007年06月20日 15時43分19秒
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「恋神誕生神話異聞・14」
「いい加減になさるのは、お父様の方です」
「へ、へ、ヘーベー? お、お、おまえ、ま、まで、な、何を?」
あまりにも意外な行動に、ゼウスは言葉にならなかった。
「よろしいですか、お父様。エイレイテュイアお姉様は産褥分娩の女神なのですよ。そんな御方が、子を堕胎したなどということが知れては、それこそ世の人々になんと中傷されるか、わかったものではありません」
「し、しかしな、ヘーベー」
「けれど、お姉様がお一人で子を造った、となれば、これはまったく不思議なことではありませんでしょう?」
「エイレイテュイアが単身で宿した子、ということにしろと言うのか?」
「それが最良の策なのです」と、ヘーベーは言った。「お父様がどうしても御自分の名誉を守りたいと仰るのでしたら――そういうことでございましょう? エイレイテュイアお姉様をさも心配しているような事を言っても、結局はそういうことではございませんの。でしたら、真実を公表しなければ良いこと。お腹の子は、エリスお姉様の子ではなく、エイレイテュイアお姉様が単身で宿した子供。そういうことにして、生まれてくる子供にも真実は告げずにおくのです――そもそも私たちはそのつもりでしたわ。それを、お父様が一人で騒ぎ出したまでのことです」
「ヘーベー、おまえまで、エリスの味方をするとはな……」
ゼウスが言うと、ヘーベーはニコッと笑って、言った。
「私はいつでも、正しい方の味方ですわ。ですからどうか、お父様、この事はお母様と私たち姉妹にお任せになってくださいませ」
「……いいだろう」と、ゼウスは言った。「だがしかし、万が一、事が露見したときには、その時こそエリスを断罪に処すぞ。ヘーラー、そなたの庇護も無力となろうぞ。そのこと、良く覚えておけよ、エリス」
そう言い残して、ゼウスは帰って行った。
ゼウスの姿が完全に見えなくなると、それまで堪えていたエリスは、腹部の痛みと熱で、立っていられなくなった。既にヘーラーが支えていたから倒れはしないまでも、床に膝を突いてうずくまってしまう。
エイレイテュイアとヘーベーもエリスの方へ駆け寄り、彼女を助け起こそうとした……だが、ルシーターは何も言わずにその場からいなくなってしまった。
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