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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2007年01月29日 16時42分50秒

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    本当に更新できなくて済みません!

    入会したばかりの人もいるのに、放っておいてる私を許してください(T_T)
    でも本当に今は、神話もので新作を執筆する余裕がありません。
    現在、平安時代を舞台に、姉妹愛を題材にした物語を書いてます。終わり次第、こちらの新作に取り掛かりますので、みなさん、見捨てないで待っててください!
    お願いします。

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  • from: エリスさん

    2007年01月24日 14時55分57秒

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    これにて!

    「追憶 すべての始まり」終了でございます。
    ご愛読ありがとうございました!

    次回作は、ものすごォく先のことになるかと思いますが、皆様、長い目で見守ってください。

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  • from: エリスさん

    2007年01月24日 14時53分39秒

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    「追憶 すべての始まり・59」
     枝実子――エリスが宇宙の大いなる意志のもとへ導かれたように、彼も、生まれ変わるたびにそこへ連れて行かれていた。
     《いずれ再会する、永遠の伴侶のために、そなたも知らなければならない。生きることの総てを。生命の尊さを。そのためには……》
     「嫌ですッ。この姿はイヤ! 私は女として生まれたい、女としてあの方と巡り合いたいのにッ」
     あんなにも嫌悪した、男の姿で転生したおぞましさ。男でありながら、彼女を愛してはならない苦しみ。
     そして、転生してしまったが為に知った、隠された神話の真実――初めての嫉妬。
     ――彼女が、自分以外の者、エイレイテュイアを愛人としていた――
     「エミリーはさ……」
     章一が口を開くと、枝実子は彼のことを見上げた。
     「早く帰りたいの? 故郷に……この頃、昔の夢を見る回数が増えてきてるみたいだけど」
     「たぶん……意識下では望んでると思うの。よく分からないわ……私、この国も好きだから。レイちゃんや、他のみんなもいるし。産みこそしなかったけど、育ててきたものは多いわ。やっぱり未練が残っちゃう」
     『それに、恐れているんだわ……私が故郷に戻るということが、どういうことか、分かっているから』
     不和の女神としての器から離れて、人間・片桐枝実子として転生しているからこそ、本来の力は眠ったままで、ある程度の平穏を保ってこれたのだ。だが、枝実子が、今も宇宙の意志のもとで守られている女神の器の中に戻ってしまったら、自我の回復より先に力の放出がなされ、全世界に不和のオーラが広がっていくだろう。
     その時、どうなるのか。
     そのことを意識下で恐れていたのだろう。ずっと以前のことになるが、自分の中に住むもう一人の自分が、その霊力の強さゆえに実体化して現われ、自分を殺しに来たことがあった。
     天寿を全うしてはならない。天寿を全うした暁には……。
     この世での修業を「自殺」という形で一時放棄し、その罰としてまたこの世に戻ってくる。それを繰り返せば、未来永劫、自分は故郷に帰ることができなくなる。
     それが、この世界のためになる。
     ……だが、自分が故郷に戻らなければ、帰りを待ちわびる、あの愛しい人たちはどうなるのだろう。母君はまた、自分のせいで、と自分を責めるのだろうか。エイリーは? ヘーラー様は?
     まさか、世界の終末を予言したあの人物が、アンゴラモア大王と表現したのが、自分のオーラだったなんて!!
     ――枝実子は、ずっと永い間、そんな自問自答を繰り返していた。
     大丈夫さ、と章一は枝実子の気持ちを察して言った。
     「その時のために、育ててきたんじゃないか、君が、彼女を」
     「……そうよ。大いなる意志が導くままに、彼女と出会い、育てたわ……何事にも屈しない、強い魂を」
     不和のオーラに打ち勝てる魂の持ち主を。
     「だから、何も迷っちゃ駄目だよ」
     「うん……」
     「俺たちは、やれることはやったんだ、悔いはない」
     「もちろんよ」
     「華々しく帰郷しような」
     「ええ、二人一緒にね」
     互いに掌を合わせるように近づけ、握り合った時、二人は同じことを思い出していた。
     オリーブの香る森林。
     丘の上に建つ美しい社殿を、引き立たせるように澄んだ青い空。
     また、その色を映して一層輝く海。
     何もかもが輝いて見えた、あの国を……。
     それを、醜く汚すのが自分たちだということを、今ひと時だけは忘れて……。
     一九九九年。
     もうすぐ、夏が盛る――


                                 終

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  • from: エリスさん

    2007年01月24日 14時23分42秒

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    「追憶 すべての始まり・58」
     「食事の前に顔洗ってきなよ。寝ぼけた頭じゃ、ちっとも美味しくないから」
     章一の笑顔を見ながら、夢の内容を思い出した枝実子は、彼を見つめたままポロポロと涙を零した。
     「おいおい、エミリー」
     章一が慌てて何か拭うものをと探していると、枝実子は起き上がって、自分の指で拭った。
     それを見て、章一は軽く笑ってから、言った。
     「昔の夢を見てた?」
     「……うん……ずっと昔の」
     「だったら泣くことはないだろう」
     「そうね……でも……」
     目の前であなたが死んだのを見て、悲しくならないはずがない――と、言いたかったが、言えなかった。
     枝実子は、自分たちが遠い昔、同じ時代に同じ土地で生きていたことを、朧気な記憶で知っていた。ただ、誰だったのか、どういう育ち方をしたのかは、互いに教え合おうとはしなかった。
     聞きたい、「誰」であったのか。
     自分が思っている通りの人だったのか。
     しかし、聞いてしまったその時、己の理性がどこまで持つか分からない――怖い。
     絶対に睦みあってはならないと、それがこの世での業だと、罰だと、悟っているだけに、確かめることができない。
     『でも、その苦しみも、もうすぐ終わる』
     枝実子は不意に思った。
     この頃の体の不調、つい遠のきがちになる意識がそれを教えてくれる。もうすぐ寿命が尽きるのだと。
     悟られないようにしていたが、章一にもその兆候はあった――むしろ、枝実子よりも鮮明に過去を覚えている彼の方が、数倍も辛いかもしれない。
     

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  • from: エリスさん

    2007年01月24日 14時11分31秒

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    「追憶 すべての始まり・57」


     二人が罪に問われたのは、その一ヵ月後だった。
     オリュンポスの王・ゼウスに真っ向から立ち向かい、「近親結婚が許されるこの神界に、同性結婚を認める掟を」とエリスは主張したが、どうしても勝つことはできなかった。二人はゼウスの罠に嵌められた。エリスは薬物によって暫く身体の自由を奪われ、その目の前でキオーネーを雷で殺されてしまった。
     夜な夜な見る、キオーネーが下り道を遠ざかっていく夢。
     「闇に下るのがエリス様への愛ゆえなら、私は本望にございます」
     「行くな、キオーネーッ。何故おまえだけが死ななければならないのだ。何故、私は死ねないのだ!!」
     すると、キオーネーではない誰かが囁いた――これは試練なのだと。エリスがもっと高処(たかみ)へ上り詰めるための修行なのだと。
     《御身も生まれ変わるからには、多くのことを学び、糧として、目覚めなさい。御身が本当に果たさなければならない使命とは、何なのかと》
     そしてたどり着いた、宇宙。
     宇宙の大いなる意志に抱かれて、神の器から離れた魂だけの姿となって、人間界へ降りていった。
     罪を償うのではない、何かを得る為に。

     片桐枝実子は、少しだけ体を動かした。
     「……キオーネー……」
     電子レンジを使って料理を温めていた乃木章一は、その声に気づいて歩み寄り、彼女の顔を覗き込んだ。
     「お呼びになりましたか、我が君」
     その声で、目が覚めた。
     「……あ、ショウ……」

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  • from: エリスさん

    2007年01月23日 09時16分33秒

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    3万人突破

    いつのまにか、総アクセス数が3万341人になっていました。
    読者の皆さん、ありがとうございます!!!!m(__)m

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  • from: エリスさん

    2007年01月23日 09時12分07秒

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    更新できなくて済みません!

     物語はいいところまで行っているのに、
     更新できなくて済みません!m(_ _)m
     ただいま、小説Wings(新書館)の新人賞に応募するために、新作執筆中です。締切が2/28なのですが、ギリギリ書きあがる感じです。
     しかも、「罪ゆえに〜」を出版していただいた新風舎の方からも、
    「文学賞に応募しませんか?」
    というお便りをいただいて(こちらは3/5締切)、できればそちらも応募したい! と思っています。
     そんなわけで、これからも更新が滞ると思います。
     明日、ネットカフェに行く用事があるので、その時に「追憶」は最終回まで書きます。
     ですがその後、私はしばらく更新できませんので、よろしければ、メンバーの皆さんも書き込みをしていただけないでしょうか。
     小説でも研究発表でも、普通のおしゃべりでも、なんでも構いません。
     勝手なことを言って申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

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  • from: エリスさん

    2007年01月16日 14時53分21秒

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    「追憶 すべての始まり・56」
     食事はあまり用意されていなかった。神酒と小さな果物がいくつかだけである。
     エリスの杯に酒を注ぐキオーネーの手は、今は穏やかだった。
     「この間は……」
     と、エリスは口を開いた。「弁解のしようもないな……わかったであろう、そなたも」
     「はい」
     「そうか……このまま、会わずにいようかと思っていたのだが、それでは卑怯ではないかと考えが至ってね。……キオーネー、そなたの気持ちが聞きたい」
     重い沈黙が続く。
     キオーネーは、強く握り合わせた手をテーブルの下に隠して、絞り出すように言った。
     「もう、来ないでください」
     それを聞いて、エリスは一息ついた。
     「……わかった……」
     ゆっくりと立ち上がる。
     足音すらしないほど静かに歩いていき、エリスは戸の前で、振り向きもしないで言った。
     「今まで、ありがとう」
     戸を開くと、風がサッと入り込んでくる――髪が、小屋の中へ伸びるように煽られた。
     その髪が、波うちながら消えていく。
     キオーネーはずっと堪えてきた衝動に耐えられず、立ち上がった。
     「待って……」
     と言い掛けた時、風で戸が閉められた。まるで、行く手を阻むように。
     『なにをしようとしていたの? これでいいのに……自分が望んだ結末なのに』
     止めどなく、涙が出てくる。
     キオーネーは、拭うこともできなかった。

     これで良かったのだ……と、エリスも思っていた。
     『あの汚れなき魂を罪に落とすぐらいなら、この方が良いではないか』
     足は自然と、泉に向かっていた。馬も主人の後を付いてゆく。
     泉に月の光が映って、風で波打つごとに輝いて見える。
     これが見納めになるかもしれない。
     エリスは岸に跪くと、泉の水に手を浸した――心地よい冷たさが、寂しさを癒してくれる。
     そんな時だった。
     『……我が君……』
     エリスはすぐさま振り返った。
     キオーネーの声がしたような気がした。
     我が君……キオーネーがエリスをそんな風に呼んだことはない。それなのに、なぜ、この言葉が彼女の声で聞こえたのだろう。
     まさか、まさか、と繰り返し思いながら、エリスはキオーネーの小屋へと戻った。
     戸を開けたとき、今にもナイフを首筋に刺そうとしているキオーネーの姿が目に入った。
     「熔けろ!」
     エリスが咄嗟に叫ぶと、その言霊をぶつけられたナイフが、先からヘナッと曲がり、水みたいに熔けて消えてしまった。
     震えた手を握り締めて、涙で潤んだ瞳をキオーネーが向ける。
     「死なせて下さい、お願いです。私は……罪を犯してしまったのです」
     次第にうなだれていく彼女にエリスは歩み寄って、肩を支えてあげた。
     「女でありながら、恐れ多くも女神様を愛してしまいました。せめて、死んでお詫びを……」
     「私も同じだ、キオーネー」
     エリスはそう言って、キオーネーを抱きしめた。
     「誰よりも、敬愛する母君よりも、そなたが愛しい、失いたくない。私の総てを投げ出しても、そなたを守ってやりたい……キオーネー、死ぬ勇気があるのなら、もう、なにも怖いものはないわね」
     腕の力を緩めて、エリスはキオーネーを見つめた。
     「……エリス様……」
     「生きよう、共に」
     キオーネーは頬に流れる涙をそのままに、エリスにしがみついた。
     「我が君、我が君ッ」
     「……我妹(わぎも。「我が妻」という意味)……」
     その宵、月が隠れた。誰の意志によるものか、満月の筈の夜が闇夜となり、総てが覆い隠されたのである。
     総ては、夜空が知っていた。

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  • from: エリスさん

    2007年01月16日 14時20分24秒

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    「追憶 すべての始まり・55」
     「なにもそんな悲観することはないんだ。俺を見ろよ、あんな目にあわされても、ちゃんとアプロ(アプロディーテー)を手に入れたぜ」
     アレースはそう言うと、エリスの手を引いて立ち上がらせた。
     「遠乗りに行こうぜ」
     寝てばっかりじゃ解決しない、と言いたげに、アレースが微笑む。
     「行こう」
     エリスも笑顔で答えた。
     『そうだな、このままじゃいけない……』
     いけないことなのはわかっているけど、もしも……、そうだったら……、と思いながら、エリスは久しぶりに輝く日差しを浴びた。
     エリスが屋敷から出てきたのを気配で知ったのか、一人で馬屋に戻っていたカリステーは、駆け足で出てきた。
     「カリステー……心配をかけたな」
     エリスは彼女の鼻先を撫でながら、頬を近づけた。
     『このあと、遣いに行っておくれ』
     その夕方、エリスの愛馬が主人を乗せずにアルゴスに向かったのを、森の動物たちが見ていた。馬は「今宵参る」と書かれた手紙をくわえていた。


     こんなにも鼓動が高鳴ったことはない。
     キオーネーは泉で行水をしながら、その熱さで動けなくなっていた。
     怖い――自分が。
     『どうしよう、もう会ってはいけない人なのに、こんなにも会いたいなんて』
     馬の遣いで届いた手紙を読んだとき、すぐに思ったことが「身支度をしなければ」ということだった。醜い感情ごと、総ての汚れを洗い落としてからお会いしなければ、失礼にあたる、と考えて。
     綺麗だと思われたい――こんな感情を、女性に対して持とうとは。
     『決心しなくちゃ……怖がっちゃダメ』
     意を決して、キオーネーは泉の中で立ち上がると、岸へ上がった。
     そして、母の木を見つめた。
     「母さん、親不孝を許してくれる? 許してくれるよね。父さんと、どんなに危険な恋になろうとも、貫いたあなただもの」
     ――思うままに生きなさい――と、答えが返ってきたような気がする。
     キオーネーは自分の小屋へ戻って行った。すると、戸の前でエリスが立って待っていた。
     しばらく言葉がない。――ひたすら、見つめる。
     「……ご機嫌よう、キオーネー」
     「いらっしゃいませ……エリス様」

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  • from: エリスさん

    2007年01月16日 14時01分51秒

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    「追憶 すべての始まり・54」
     エリスも思い出してクスクス笑った。
     ある日、ヘーパイストスがどうも、どうも妻が浮気しているようなので、寝室に罠(目に見えない網)を張って出掛けた。その間にアレースがやって来て、二人で仲良く寝室のベッドに乗った途端、網が上へ引き上げられ、二人とも天井にぶら下げられてしまったのである。お昼ごろ、ヘーパイストスが「まさかなァ」と思いつつ帰ってくると、妻と実の兄が情けない姿になっていたので、ため息をついてから、伝令神にオリュンポス中の神々を呼び寄せてもらった。そして二人を笑い者にしたのであった。
     しかし、ヘーパイストスの性格のおかげで、アプロディーテーはめでたく(?)離縁してもらえて、アレースと再婚できたのである。
     「あいつがあんなにさばさばした奴だったとはね、あの時、初めて気づいたよ」
     「あの時は本当に、親友やめようかって思うぐらい、おまえが情けなくて、泣きたくなったよ」
     「そりゃないだろう!」
     しばらく、気持ちのいい笑いが続く。
     「そうか、好きになった奴がいるのか」
     アレースが言うと、エリスは途端に表情を曇らせた。
     「大体の予想はつく。おまえの好みから想像して……華奢で小柄で、可愛い奴なんだろうな、その少年は」
     まさか相手が女とは思えないらしく彼が言うと、エリスはちょっと安心して、頷いた。
     「子供過ぎて、なにもできなくて、苦しんでいた……そんなとこか?」
     「うん……そんなとこ」
     「馬鹿だな、つくづく。相手の気持ちも確かめないうちから、うじうじして、諦めようとしてたんだろう。いくら相手が子供だからってな、自我すらないわけじゃないだろう? 気持ち打ち明けて、確かめてみろよ。第一、おまえはもう年取らないんだから、人間みたいにババアになるわけじゃなし、相手が成長するまで待てるだろう」
     「うん……でも、相手は……不老じゃないんだ。人間の少年で、いつかは年老いて私を置いていってしまう」
     エリスはなんとか話を作って言うと、馬鹿だなァ、とアレースは更に言った。
     「相手の意志にもよるだろうけど、ことによっちゃあ、父上に頼んで子供の姿のままで不死の力を与えることだって出来るじゃないか。オリュンポスに仕える、あの永遠に老いることのない美少年・ガニュメーデースは、父上が鷲に姿を変えてさらってきた、人間界のトロイア王家の子だったことは有名な話だろう?」
     「ああ、そうだったな」

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