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from: エリスさん
2007年03月28日 12時42分22秒
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「恋多き女神・24」
またまた数日後……。
アプロディーテーが朝食の仕度をしている間、ヘーパイストスはこっそりと寝室に仕掛けをしておいた。
『この寝台の上に乗ると、ここがこう動いて、このテコが……』
頭の中で呟きながら、何度も仕掛けを確認する。
これでよし! と確信したところで、アプロディーテーの声がかかった。
「あァなァたァ! 朝食ができましたわよォ!」
こんな可愛い新妻っぷりなのに……と思いつつ、ヘーパイストスは心のうちを読まれないように明るく「ハーイ!」と返事をした。
今日は、決行日だった――
ヘーパイストスが仕事に出かけると、アプロディーテーはいそいそと身支度を始めた。もちろん、アレースを迎え入れるためである。いつもは簡単に済ませてしまう化粧も、彼に会う時は念入りなのだ。これも乙女心というものか?
しばらくすると、アレースがそうっと忍び込むようにやってきた。
「ヘースは出かけたよね?」
「大丈夫よ。今頃は……」
言い掛けて、やめる。ついアプロディーテーは「あの恐ろしい姿をした魔物(キュクロープス兄弟のこと)と、暑苦しい場所で汚れ仕事をしているわ」と続けようとしたのだが、先日ヘーパイストスの容姿のことを馬鹿にしたらあんなに怒られたのである。またアレースのことだから、こんなことを言ったら怒るに決まってる、と瞬時に気づいたのだった。
「今頃は……なに?」
アレースの問いかけに、アプロディーテーは言葉につまりながらも、
「今頃は、きっと、大好きな鍛冶仕事に、専念してるわよ! きっと」
「ああ、そうだね。あいつは昔から器用な奴だから。ホラ、この剣も、防具も、みんなヘースが作ったものなんだよ」
「あら、素敵ね」
と、アプロディーテーは言ったものの、本心では、
『そんなに弟が大事なら、私と浮気なんかしないでよ!』
と、思っていた。思ってはいても、アレースにそんなことは絶対に言えない。何故なら……。
『アレースはこのオリュンポスで一番の美男子なんですもの。絶対に他の女神には渡さないわ』
この時、後に「美男」で有名になるアポローンや、ヘルメースはまだ子供で、ディオニューソスに到っては生まれてもいなかった。つまり、美の女神アプロディーテーのお眼鏡にかなう男神は、今のところアレースしかいなかったのである。
「そんなことより」と、アプロディーテーはアレースの手を引いた。「早くあちらで寛ぎましょ」
アプロディーテーに誘われるまま、アレースは寝室へと連れて行かれた。
部屋の中は、アプロディーテーの体香である桃の実の薫りで満たされている。この薫りを嗅ぐと、アレースは「ほわ〜ん」とした気持ちになってしまう。
「さあ、こっちに座って」
アプロディーテーは尚も誘ってくる。
二人は一緒に、ベッドに腰掛けた。
その瞬間!
「きゃあ!!」
「うわァ!」
二人は見えない何かに包まれて、天井へ引き上げられてしまった。icon
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from: エリスさん
2007年03月26日 15時55分37秒
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「恋多き女神・23」
「ヘーパイストスは不細工なんかじゃない。ちょっとアゴは出ているけど、優しさがにじみ出たいい顔だ! それに右足のことだって、あいつは何も悪くない。父上の策略のせいで、あんな風になってしまったんだ。あいつは好きで不自由な足になったんじゃない!」
アレースが本気で怒っていることに、アプロディーテーは困惑しながらも、
「い……いやァだ〜」
と、しなをつくりながら擦り寄った。
「今のはあなたの気を引きたくて、わざと言ったのよ。あんなこと、全然、ちっとも、まァったく思ってないわ。だからァ、怒っちゃイヤン」
アレースの弱点――それは、惚れた女からのお色気攻撃だった。
「そう?……それならいいんだけどさ」
アレースの怒りがおさまって、ホッとするアプロディーテーだったが、その反面、今度は自分がムッとしていた。
『なにさ、実の兄弟で馴れ合っちゃって、気持ち悪い。恋人より弟の方が大事って、どうなのよ』
アプロディーテーには同母の兄弟姉妹がいないからか、「きょうだいの絆」が理解できないのかもしれない。icon
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from: エリスさん
2007年03月24日 19時30分17秒
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「恋多き女神・22」
「でも意外だな。君が料理とかするなんて」
と、アレースはベッドに腰掛けた。「侍女に全部まかせていそうなのに」
「私だって本当はそうしたいのよ〜。だけど、お父様が……」
「父上が?」
「ヘーパイストスには今まで辛い目に合わせてしまったから、代わりに献身的に世話してやって欲しいって、言うのよ」
アプロディーテーもゼウスの子供だった。海の泡から生まれたと一般に言われているが、その伝説はアプロディーテーの名の「アプロ」が「泡」を意味していることから、後世に創作されたものである。
「おまけに王后陛下にも、くれぐれもって言われて、仕方なく“妻”をやってあげてるのよ」
アプロディーテーはベッドの近くに引き寄せたテーブルに、軽い食事を運んできた。
「神王と王后から言われてしまったら、嫌でも嫌とは言えないじゃない。だから好きでもないヘーパイストスなんかと、結婚しなくちゃならなくて」
ぶつぶつと言いながら、アプロディーテーはアレースの隣に座った。
「第一、美の女神である私が、なァんであんな不細工で片輪者の妻に……」
その言葉を聞いて、アレースはアプロディーテーを突き飛ばした。
「片輪者って言うな! それに不細工でもない!」
「え? え!?」
ヘーパイストスの悪口を言っているのに、どうしてアレースが怒るのか、アプロディーテーには分からなかった。icon
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from: エリスさん
2007年03月24日 18時54分13秒
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「恋多き女神・21」
その頃……。
ベッドから起き上がったアレースは、自分の服を着ながら、言った。
「明日もいつもの時間でいい?」
すると、まだベッドの中で横たわっているアプロディーテーは、
「いいけど……帰るの?」
「もうヘースが帰ってくるころだろ?」
「まだ大丈夫よン」
アプロディーテーは色っぽい声で言いながら、アレースに擦り寄ってきた。
「あの人、最近は帰りが遅いの。なんか難しいものを作ってるのですって。だからァン、もうちょっと一緒にいて。ね?」
「でもなァ、その難しいものが出来上がっちゃって、帰ってくる可能性もあるし……」
「エェ〜! そんなの淋しい〜……じゃあ、せめて昼食だけでも食べていって。ね?」
可愛いアプロディーテーに迫られては、もう抵抗することもできない。まあ、食事ぐらいなら、ヘーパイストスが途中で入ってきても大丈夫だろうと思い、ご相伴にあずかることにした。icon
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from: エリスさん
2007年03月23日 14時21分52秒
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春休みということもあって
新しいメンバーさんが入ってきてくださいまして、本当に感謝感激です。
近々更新しますが、今日は未定です。なぜなら、
連日のフィギュアスケート放送をDVDにダビングする作業に手間取っております。(好きな選手だけ編集してるの〓)
もし宜しかったら、
「【期間限定】フィギュアスケートを語ろう!」
も覗いてみてください。私がオーナーをしています。-
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from: 風凛さん
2007年03月21日 16時00分16秒
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from: エリスさん
2007年03月21日 15時39分24秒
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from: エリスさん
2007年03月18日 12時42分55秒
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「恋多き女神・20」
ジュースも飲み終わったところで、エリスはヘーパイストスが考えている「計画」のことを聞いた。
その計画の通りになると、アレースもアプロディーテーも、とてつもなく恥ずかしいことになるのだが……。
「まあ、それぐらいは仕方ないか……」
と、エリスも賛成した。
「うん。それぐらいすれば、兄上も僕に遠慮なんかしないで、アプロディーテーと結婚する気になると思うんだ」
「なかなか考えたな……そのためには、目に見えない網が必要になるんだな」
「だけど……」
ヘーパイストスは器用とは言っても、金属とか粘土などの加工には向いているが、網を編むといった「手芸」は専門外だった。その為、目に見えないほど薄い糸を紡ぐのが、どうしても出来なかったのである。
「私に、一人だけ心当たりがあるけど」
エリスは意味ありげに笑いながら言うと、
「え? 誰さ?」
「……いや、ここでは明かさないでおくよ」
「なんで! っていうか、手伝ってくれるの?」
「これぐらいなら手助けしてもいいだろう。最終的には親友のためにもなるしな」
エリスはそう言うと、立ち上がった。
「幸い今日は、アレースとの剣術の稽古が休みなんだ。だからこれから、その人のところを訪ねてみるよ。善は急げって言うしな」
「僕が行こうか?」
「いや、私がいいんだ。その場所は、男子が気安く入れる場所じゃないんでね」
「え!?」
その返答で、エリスが訪ねていこうとしている人物が誰だか分かってしまった。
「彼女に頼むの……?」
「彼女しかいないだろ? こんな難しいことができるのは」
確かにその通りなので、ヘーパイストスはしぶしぶながらも承知するのだった。icon
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from: エリスさん
2007年03月18日 12時09分12秒
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「恋多き女神・19」
数日後。
エリスは差し入れを持ってヘーパイストスの仕事場を訪ねてきた。
「どう? その後なにか手は打った?」
「う〜ん……それなんだけど」
ヘーパイストスは何かを手に持ったまま、エリスの方を振り返った。
「これ、なんに見える?」
「なにって、網だろ?」
すると、ヘーパイストスは深いため息をついた。
「分かっちゃダメなんだ……っていうか、見えちゃダメなんだよ」
「はァ?」
ヘーパイストスが持っていたものは、薄い糸で編み上げた網だったのである。だが彼は、本当は「目に見えない網」を作りたかったのだ。
「だけど僕には、目に見えない糸が作り出せないんだよ……」
「糸かァ……ヘースには専門外なんだな」
「うん……」
そこへ、キュクロープス兄弟が顔を出した。エリスが持ってきた葡萄(ぶどう)のジュースをコップに入れて持ってきたのだ。もちろん、ステロペース特製の氷入り。
「うほほ(どうぞ)」
「ありがとうございます。おじ様たちも飲んでください。おいしいですよ」
「わほわほ(ありがとう、いただくよ)」
「うほうほ、わほ(おまえも休息しなさい、ヘース)」
「ハーイ……」
仕事場で食事をするのもなんなので、四人は隣室にある休憩室に移動した。
そこでヘーパイストスと向かい合ってジュースを飲んでいたエリスは、見慣れないものを見て驚いた。
キュクロープス兄弟が、コップに長い棒をさして、その棒を口にくわえていたのだ。
「ヘース、おじ様たちはなにをしているの?(エリスは気を抜くと女言葉になってしまう)」
「ああ、ストローでジュースを飲んでいるんだよ」
「ストロー?」
「あの口にくわえているやつさ。あの棒は管になっていて、吸い込むと飲み物が口の中に入ってくるんだ」
「ヘエ……ヘースが作ったの?」
「そう。ホラ、そうしないとさ、プロンテースおじさんは手にしたものを熱湯に変えてしまうし、ステロペースおじさんは凍らしてしまうだろ?」
「なるほど……だからいつも、おじ様たちが使うものには長ァい柄が付いているんだものな。そうなると、食事はどうしているの? 長いスプーンを使うにしても、口に運ぶのは……」
二人の会話を途中から聞いていたキュクロープス兄弟は、「わほ!」と二人に声をかけてきた――見ていてごらん、ということだ。
テーブルの上には、ポップコーンが置かれていた。それを先ず、プロンテースが長ァい柄のスプーンで掬い取り、向かい側に座っているステロペースの方へ向けた。ステロペースはそのスプーンに口を近づけて、パクッと食べる。
今度はステロペースが長ァい柄のスプーンでポップコーンを掬い、プロンテースの口元へ運ぶ。それをプロンテースがパクッと食べる。――二人はいつもこうやって、お互いに協力しながら食事をしているのだった。
それを見て、エリスは言った。
「どっかの国のお伽噺にあったよね、《天国のスプーンと地獄のスプーン》。あれみたい!」
「そう、その話の《天国》バージョンさ」
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from: エリスさん
2007年03月18日 11時27分05秒
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「恋多き女神・18」
ヘーラーはヘーベーに髪を洗ってもらいながらも、視線は息子のアレースの方へ向けた。
「そなたももう16歳。好きな女性の一人もいないのですか?」
「……ええ、まあ……」と、アレースは言葉を濁した。
「いっそのことどうです? エリスと結婚する、というのは」
「ご冗談でしょう」と、アレースは笑った。「エリスは親友です。掛け替えのない竹馬の友。女として見たことなど一度もありませんよ」
「その考え方も、ちょっとどうかと思うが……それだけエリスのことが大事だと言うのは、分かりました。では、どうだろう。ヘーベー、そなたがアレースの妻になってやったら」
すると、ヘーベーがおかしそうに笑い出した。
「いやだわ、お母様ったら。ご自分が実弟(ゼウス)と結婚したからって、その考え方は短絡的過ぎましてよ」
「そうかい? 悪い縁談ではないと思うが」
「確かに、兄妹で結婚するのは神族の特権。でも、私はお兄様を《兄》としてしか見られませんもの。恋のときめきも感じられない相手に嫁ぐなんて、絶対に嫌ですわ」
「その意見は、僕も賛成です」と、アレースも言ったので、ヘーラーはため息をついた。
「すでにヘーパイストスは結婚しているというのに、兄や姉であるそなた達がいまだ未婚というのもねェ。仕方ないことではあるが。……ヘーベー、そなたも好きな男性はいないのですか?」
「いませんわ。でも焦ってはいませんのよ」
この後、ヘーベーは百年以上も未婚を通した。その間、兄弟姉妹たちの美容師になったり、宴の席で舞姫になったりと、「青春の女神」としての役割を謳歌している。
そして、人間界において英雄ヘーラクレースが誕生したとき、初めて恋をするのである。ヘーラクレースがヘーラーの与えた試練に耐え、神としてオリュンポスに迎え入れられたとき、彼女はようやくヘーラクレースを自身の夫としたのである。icon
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