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from: エリスさん
2007年04月30日 13時17分33秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・10」
「いつか居なくなる馬より、自分の背に翼があれば、自分さえ生きていればいつだって空が飛べるのよ。だから私も欲しい!」
「簡単に言うなよ、アーテー。翼があればあったで、苦労も多いんだよ。仰向けで寝られないし、普通の服は着られないし、椅子に座るのだって結構面倒くさいし」
「椅子?」
「背もたれが邪魔か、翼が邪魔か、って話でさ。しょうがないから、僕の家では僕専用の、背もたれのない椅子があるんだ」
「へぇ〜面白ォい」
「あのね……」
まあ、こんな奴だよ、アーテーは。
でもアーテーとの会話のおかげで、最果てまでの道のりは退屈もせず、また疲れも感じずに飛んでいけた。
ガイア様とレイアー様の住んでいる社殿は、山の上に建っている。二階に広いテラスがあって、空を飛んでくるときはその場所に着地する場合が多いんだけど、今日は馬車が三台もあったから、社殿の前の広場に降り立った。icon
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from: エリスさん
2007年04月30日 13時05分00秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・9」
僕たちが中庭に降り立つと、先ず歩み寄ってきたのはエイレイテュイアお母様だった。
「ご機嫌よう、エロース、プシューケー。待っていたわよ」
「ご機嫌よう、お母様」
元日である昨日も会っているから、もう「明けましておめでとう」ではなかった。
「それじゃ行きましょうか。プシューケーは私と一緒の馬車に乗る? それとも、さっきみたいにエロースに抱えてもらう?」
お母様がそう言っていると、向こうからアーテーが割り込んだ。
「プシューケーはこっちの馬車においでよ! まだ乗れるよ!」
アーテーのこうゆう性格が嫌いじゃないプシューケーは、にっこりと微笑むと、言った。
「折角ですので、姉妹の仲間入りをさせていただきますわ、お母様」
「そうね、そうなさい。エロースは自分で飛んでくるのでしょ?」
聞くまでもない、という感じでお母様が聞いてくる。――そりゃまあ、最果てまで飛んでいけないことはないけど、できれば疲れるから乗せてもらいたいんだけどなァ……。
そんなわけで、ヘーラーおばあ様とお母様を乗せた馬車と、レーテー(忘却の女神。エリスの長女)とマケー(戦争の女神。エリスの三女)とヒュスミーネー(戦闘の女神。エリスの四女)とアンドロクタシアー(殺人の女神。エリスの五女)を乗せた馬車、アルゴス(苦痛の女神。エリスの次女)とホルコス(誓言の女神。エリスの六女)とアーテー(破壊の女神。エリスの七女)とプシューケーを乗せた馬車――計三台の馬車が連なって、最果てのガイア様の社殿を目指した。(エリスの男児たちはすでに独立しているので、今回は同行していない)
僕はプシューケーの乗っている三台目の馬車の横に並んで飛んでいった。
するとアーテーが、僕のことを羨ましそうに眺めて、こう言った。
「いいなァ……私も翼が欲しいなァ」
この子はたまにこんなことを言うんだ。だから僕は言った。
「君には空を飛ぶ馬がいるだろ?」
「いるけど、一生いるわけじゃないもの。お母様の馬みたいに、急に姿を消してしまうことだってあるわ」
確かに。エリス叔母様の愛馬・カリステーは、叔母様が精進潔斎に入ったその日に行方不明になり、そのまま帰ってこなかった。きっと、主人以外の者を背に乗せるのを拒んで、自ら失踪したのだろう。もしかしたら、神馬としては奇跡的な長寿を誇っていたから、誰にも知られずに死を迎えることを望んだのかもしれない。icon
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from: エリスさん
2007年04月26日 18時38分20秒
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仕事のシフトが完璧に決まりました
木曜日から日曜日までの週4日です。
なので必然的に、ここのサークルを更新するのは、月曜日から水曜日の三日間になります。
なるべく更新するのは、こっちを優先するつもりです。
もう一個の「恋愛小説発表会」は、2週間に一回の割合かな(^o^;
皆さんが休日の日に更新できなくて、ごめんなさいm(_ _)m-
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from: エリスさん
2007年04月25日 13時57分29秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・8」
「それじゃ行ってくるよ」
プシューケーをお姫様抱っこした僕は、ベランダから飛び立って、一路アルゴス社殿へと向かった。
「行ってらっしゃァーい!」
娘のヴォループタースが、両手を振って見送ってくれている。
「あんなに夢中で手を振って。ベランダから落ちなければ良いけど」
と、プシューケーがちょっと心配そうな顔をする。
「アハハ、ホントにね。僕の娘でも空は飛べないからな」
「私が人間ですからね」
本当はプシューケーも神の血を引いているんだけど、本人は知らない。彼女の祖母・シニアポネーは、表向きはヘーラー王后に仕える精霊なんだけど、本当はアルテミス女神とアポローン男神の間に生まれた女神だった。けれど、アポローンとの関係を知られたくなかったアルテミスが、エイレイテュイアお母様に頼んで、胎内に宿った子供を別の女性の胎内に移してもらったんだ。
つまりシニアポネーは、僕と同じ方法で生まれてきたんだ。
そして、シニアポネーに好きな人ができたとき、その仲を取り持ったのが僕だったりする。
シニアポネーはその恋が成就して結婚し、たくさんの子供に恵まれた。プシューケーの母親はその中の三番目の子供になる。
僕がプシューケーに恋をしたのは、僕の初恋の人になるシニアポネーと似ていたから……ということもあるけど。今はシニアポネーとは比べ物にならないぐらいプシューケーのことが大好きだ。――そのことはプシューケーも承知の上だよ。内緒にしておくのも嫌だったから、ちゃんと話したんだ。
――しばらくして、アルゴス社殿が見えてきた。
中庭に三台の馬車が止まっている。その内の一つにエリス叔母様の娘たちが勢ぞろいで乗っていて、その中の一人が僕たちに気づいて、元気よく手を振ってきた。
「ワーイ! エロースだ! エロースゥ!」
叔母様の末娘・アーテーだった。破壊の女神らしく、よく不注意で物を壊してしまうある意味「特技」を持った子だ。
このアーテーと、その一つ上のホルコス(誓言の女神)は、十二歳ぐらいで成長が止まっていた。その他の兄弟たちも「二十歳と呼ぶには若すぎる」ぐらいの見た目で、ちゃんと二十歳過ぎぐらいに見られるのは第四子(僕を入れると第五子)のアルゴスまでだった。この結果、僕の成長が十五歳で止まったのは、二人の母の忌まわしい関係による呪いではなく、単なる血筋であることが発覚した。あの頃はみんな子供だったから、まさかこうゆう結果になるなんて思わなくて、エリス叔母様はすごく気にしていたはずなんだ。ちゃんと真実を教えてあげたいけど……会えないものなァ、今は。icon
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from: エリスさん
2007年04月25日 13時21分47秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・7」
そしてあの日……僕がお母様を問い詰めて、本当のことを聞きだそうとした時、エリス叔母様が話しに割って入ってきて、お母様を弁護した。――僕はエイレイテュイアの正当な息子であって、断じて不和の女神である自分の子供ではないと。
だから僕は叫んでしまった。
「僕がお母様の血だけを継いでいれば、異形の神になるはずがないんだ!」
そのときの叔母様の表情は、今でも忘れられない。悲しいのに、必死に平静を保とうとしている、そんな表情――あの時、気づいたんだ。僕がこんな体で生まれてきたことを、一番気にしていたのは叔母様――実の母君だったんだって。僕は言ってはならないことを口走ってしまったんだ。
居た堪れなくなって、部屋から――社殿から飛び出した僕を、探しに来てたくれたのは、もう一人の叔母・ヘーベーだった。
ヘーベー叔母様は、僕が生まれた経緯を詳しく教えてくれた。
エイレイテュイアお母様がエリス叔母様を愛しすぎたあまり、懐妊中の叔母様の寝室に忍び込んで、僕を奪い取ったこと。そうまでして愛する人の子供を産みたがっていたこと。胎内から僕を奪い取られて、どんなにエリス叔母様が悲しみ、苦しんだかということ。そして、僕が生まれたとき、僕の背に「夜の女神の血筋の証」があることを知って、エリス叔母様が嘆き悲しんだことを。それでも、僕が生まれてエイレイテュイアお母様は本当に喜んでいたと、ヘーベー叔母様は切々と教えてくれた。
「だからね、エロース。二人のお母様を恨まないであげて。二人とも、あなたを心から愛しているのよ」
ヘーベー叔母様の話を聞いて、僕は少し吹っ切れた――教えてもらえて良かった。知らないままだったら、僕は今でも二人を嫌いになろうと――嫌いになれるわけがないのに、それでも無理やり嫌いになろうと苦しんでいたはずだから。
――それからしばらくして、エリス叔母様――母君は、刑に服するために冥界の奥にあるという精進潔斎の場へと入って行かれ、僕たちとは会えなくなった。最終的には人間界に降りて、人間として罪を償うのだと聞いている。icon
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from: エリスさん
2007年04月25日 12時55分29秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・6」
本当に小さなころは、翼がある自分を嫌いじゃなかった。
同じ社殿で暮らす従兄弟たちは誰も翼を持っていなかったし、いくら神様でも子供のころは空を飛ぶのが不得意だったりしたから、物心付いたころから自由に空を飛べた僕は、むしろ自分だけが特別な存在のように思えて、自慢でもあった。
でもある日、義憤の女神ネメシスに会って、彼女の背に翼があるのを見たとき、別に自分だけが特別ではないのだと気が付いた。
その後、夜の女神ニュクスの子供たちは母親ゆずりの翼を持って生まれることが多い、ということを知り、また、エリス叔母様が本当はヘーラーお祖母様の実子ではなく、ニュクス女神の娘であることも知って、僕は考えた――僕の本当の母親はエリス叔母様なんじゃないかって。僕はエイレイテュイアお母様にはあまり似ていないし、エリス叔母様の子供たち――リーモスやポノスと僕は良く似ているし。だから、子供のいっぱいいる叔母様が、子供のいないお母様に、僕を養子としてあげたのかもしれない……そう思ったのが、十歳ぐらいの時。
でも、現実はもっと複雑だった。
十七歳になったある日、ゼウスお祖父様がとてもイライラしていらしたことがあって……なにか嫌なことでもあったのかな。従者や侍女たちに当り散らしていたから、僕が諌めてしまったんだ。そうしたら、怒りの矛先が僕に向けられてしまい、おじい様は僕の出生の秘密をぶちまけてしまった。
エイレイテュイアお母様とエリス叔母様は同性愛の関係で、あろうことかお母様は、おば様の胎内に宿っていた僕を自分の胎内に移して、出産した。だから僕は、十五歳で成長が止まるという忌まわしい体になってしまったのだと……。
それを聞いた僕は……ショックで、泣き出してしまった。
おじい様はその時になって自分のしたことを後悔し、僕に平謝りに謝って、今言ったことは忘れてくれるように、と懇願してきた。
忘れたかったけど、僕の中で芽生えてしまった疑念は、もう拭うことはできなくなっていた。
――僕は罪の子――異形の神として生まれてしまった原因は、すべてエリス叔母様のせいだ!
そう思って、僕はエリス叔母様を嫌いになろうと努めていた。icon
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from: エリスさん
2007年04月24日 14時54分06秒
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明日こそ!
本当は昨日、ネットカフェに行って作品を更新しようと思っていたのですが、
食材の買い込みや、税金の支払いや、猫のご飯の買い出し、などに追われて止むなく断念しました。
今日もお休みなんですが、仕事がある日はまともな夕飯を作る時間が取れないと分かったので、今のうちにお惣菜を大量に作って、冷凍保存するために、朝から忙しくしています。あと三品作る予定です。
明日こそはネットカフェに行けるようにしたいので、今日のうちに作れる料理を目一杯つくらなきゃ!
木曜日からまた激務なのに、いつ休んだらいいんだろ、私(;^_^A-
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from: エリスさん
2007年04月17日 17時53分21秒
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新しいメンバーさん!
今月になって新しいメンバーさんが二人も入りました!
辞めてしまった人もいますが(T_T)
今日で総アクセス数が4万7千人を越えたことでもありますし、
気分を新たに精進していこうと思います!-
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from: エリスさん
2007年04月17日 14時41分32秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・5」
「忌々しい体だな……」
自分の服を眺めながら、ついそんなことを口走ってしまったら、プシューケーが悲しそうな顔をして、言った。
「ご自分の翼がお嫌いですの?」
そう聞かれると返答に困る。以前は嫌いなだけな存在だったけど、今はちょっとだけ……。
僕が黙っていると、プシューケーが抱き締めてくれた。そのフワッとした感覚が気持ちいい。母と背格好が似ているから、僕の顔が埋まる場所も、母と同様に肩の辺りで、それがまた懐かしくて落ち着くんだ。
「私はあなたの翼が好きですわ」とプシューケーは言った。「翼だけではなく、なにもかも、あなたのすべてが大好きです。だから、あなたもご自分を嫌いにならないで」
そして僕を離すと、彼女は改めて僕の翼を眺めた。
「純白の立派な翼ですわ。なにを卑下する必要があります。むしろ自慢に思うべきです」
「……ありがとう、プシューケー」
――プシューケーだって知らないわけじゃない。この翼を持って生まれてきたことの意味を。
それでも彼女は僕を元気づけるために、そう言ってくれるし、きっと本心でもあるんだろうな。
――この翼こそが、僕が闇の神の血を引く証(あかし)――icon
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from: エリスさん
2007年04月17日 06時54分08秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・4」
お正月の「年始回り」は、恒例行事ではあるけど、僕としてはお正月ぐらい家族でゆっくり過ごしたい、というのが本音だ。
とは言え、高祖母(ひいひいおばあさん)にあたるガイア様と、曾祖母(ひいおばあさん)にあたるレイアー様には、こんな時でないと会う機会がない。
僕たちは朝食を終えると、久しぶりに会うお二方の為に、どんなおめかしをしようかと相談した。
「エロース様はやはり白がお似合いになりますわ。この白い服になさいませ」
「じゃあプシューケーは空色のこれ! 髪飾りには……」
「この水色の薔薇の飾りなどは?」
「いや、思い切って赤いのを」
夫婦だけでファッションショーをしているようで、こんなひとときも楽しい。
でも……。
僕は自分の服を見るたびに、思い知らされる。他の人とは明らかに形の違う服。おそらく、裁断や縫合にも手間を取らせているはずだ。
翼の邪魔にならないように、背中が開いている服。それでもちゃんと胸やお腹は隠れるようになっている。――この面倒臭い服を侍女たちにつくらせるのも、また僕自身も着るのが嫌になって、子供の頃は上半身裸で過ごしていたこともあった。
全てはこの翼のせい……。icon
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