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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2007年05月30日 11時51分10秒

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    「恋神誕生神話異聞・5」
     「何がありましたの? お姉様」
     すると、弱々しい声で、エリスが言った。
     「いなくなってしまった……」
     「え?」
     「子供が……さっきまで、ここにいたのに」
     と、エリスは自身の腹を摩った。「奪われてしまった……私の……ウッ……」
     エリスの表情が、苦痛で歪む。そのまま、エリスは腹を押さえてうずくまった。
     「お姉様、お苦しいのですか!?」
     この異変はただごとではないと察したヘーベーは、大声で侍女達を呼び寄せた。
     駆けつけてきた侍女達に、水桶とタオルを持ってこさせてから、ヘーベーは、
     「お母様は? 今日はこちらではないの?」
     と、聞いた。
     「ヘーラー様は、今宵は本邸のオリュンポス社殿にいらっしゃいます」
     「では誰か、すぐにお母様を呼びに行って。急いで!!」
     普段、声を荒げないヘーベーなだけに、侍女達にも緊張が走っていた。


     エイレイテュイアは、社殿の裏にある森の中の、泉の前まで走ってきた。
     走り疲れて地面に膝をつき、座り込む。それでも、月明かりで水面に写った彼女の顔は、喜びに満ちていた。
     『やっと手に入れた。子供を……エリスの子を!』
     自分の体の中に、愛する人の子供がいる――女として生まれて、これ以上の喜びは味わったことがない。
     しかし胎内では、胎児が小刻みに震えていた。今まで居た環境とまったく違う所へ入れられて、恐怖に脅えているのだろう。
     「怖がらないで、大丈夫よ」と、エイレイテュイアは自身の腹を摩りながら、胎児に話しかけた。
     「今日からは、私が母親。あなたは、私の子として育つのよ。だから震えないで。怖くないのよ……」
     しばらく胎児が落ち着くのを待ちながら、エイレイテュイアはその子にいろいろと話しかけた……どんなにこの日を待ち望んだか。夢に見るまで欲していた、エリスの子――あなたを、どんなに愛しているか。
     そして、エリスへの狂おしい想いも、エイレイテュイアは切々と語った。
     そうしているうちに、胎児も落ち着いてきて、震えるのを止め、まどろみ始めた。
     そろそろ戻ろう、と立ち上がった時だった。――背後に誰かが近づいてくるのを察した。匂いで誰だか分かり、恐る恐る振り向くと、思ったとおりヘーラーが怒りに表情を険しくしたまま、こちらへ歩いてきていた。

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  • from: エリスさん

    2007年05月30日 11時18分43秒

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    「恋神誕生神話異聞・4」
     何事か、と起き出したヘーベーは、部屋を出たところで同じように目を覚ましてしまった侍女達と出くわした。
     「ヘーベー様、あの悲鳴はエリス様ではございませんか?」
     侍女の一人が言うと、
     「そのようね。私は様子を見に行ってくるから、あなた達はここで待っていて」
     とヘーベーは言って、二階へと上がって行った。
     階段を上りきった時だった。廊下の向こうの方へ駆けていく人影が見えて、思わずハッとする。今ヘーベーが居る階段とは反対側にある階段を下っていったあれは、背格好から言っても……。
     『エイレイテュイアお姉様?』
     侍女を連れてこなくて良かった、やはりお二人の痴話喧嘩なのだわ、と思ったヘーベーだったが、それでも何故か気になって、エリスの部屋へと向かった。
     エリスは、寝台に腰掛けていた、俯いて。
     重苦しい空気が漂っているのを、ヘーベーは跳ね除けるように明るく言った。
     「夜分遅くに失礼致しますわ、エリスお姉様。お姉様の声が聞こえたものですから、様子を見に来ましたのよ」
     そして、エリスの方へ歩み寄り、傍らに腰掛けようと身を屈めたときに、気付いた。
     荒い呼吸……なによりも、身体中に汗を吹き出させている。――ただの痴話喧嘩であるはずがない。

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  • from: エリスさん

    2007年05月23日 18時35分07秒

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    来週の予定

    月曜から水曜がお休み、というのはほぼ決まっていること。
    なんですけど、人手が少ないと、代わりに呼ばれることがよくあります。
    来週は、実は水曜日に足の手術のために入院することが決まっているメンバーがいます。その関係で、シフトが少しズレそうです。
    5/30は「マリア様がみてる」のDVD発売日なので、秋葉原に買い物に行きながら、なじみのメイドカフェ(女性専用)で和んでこようかと思ったんだけど、どうなることやら。
    なので皆様、来週は更新していなくても怒らないでね。m(__)m

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  • from: エリスさん

    2007年05月21日 13時02分12秒

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    「恋神誕生神話異聞・3」
     ――懐妊中は、彼女はいつも一人で眠っている。だから、足音を忍ばせて近寄れば、きっと気付かない……。エイレイテュイアは夜更けにそうって部屋を抜け出して、二階にある彼女の部屋へと行った。途中、侍女たちの部屋の前を通ったが、誰も気付いた様子はない。
     胸が高鳴る――それは、期待からなのだろうか? それとも罪悪感?
     『どっちでもいいわ。もう、決めたのだから』
     そうして、彼女の部屋の前に辿り着いた。
     外から様子を伺うと、ぐっすりと眠っていて、静かな寝息をたてているのがわかる。
     扉には、鍵もかけていない……彼女はいつもそうなのだ。
     ゆっくりと扉を開けると、月明かりが差し込んだ部屋の、寝台の上で、エリスが眠っていた。
     熟睡していて、起きる気配などない。
     エイレイテュイアはそうっと彼女に近づくと、左手をエリスの腹の上に翳し、右手で自身の腹を押さえた。
     囁くように、呪文を唱え始める。すると、左手から発せられた光が、エリスの腹の中へと入っていった。
     光が、胎児を探している――エイレイテュイアの目に、その情景がまざまざと伝わってくる。そして……。
     『見つけた!』
     まだ本当に小さな胎児が、そこにいた。
     その子を包むように、光が渦を巻き始める。
     あとは、そこから引き離せばいい。なるべく、エリスが痛みを感じないように……。
     だが、
     「ん……うん……」
     胎内の異変に気付いたエリスが、目を覚ました。途端、彼女は目の前で起こっていることを瞬時で察してしまった。
     「何をしているッ、エイリー!」
     エリスは上体を起こすと、我が身に触れているエイレイテュイアの左手を掴んだ。
     「離して! 術の途中よ!」
     「だから止めてくれ! 私の子に何をするつもりだ!!」
     「私の胎内に移すのよ。あなたの子を、私が産むために!」
     「馬鹿なことはよせ! 血のつながらぬ子を胎内に宿すなど、どんなことが起こるか分からないぞ!」
     「それでもいい!! いいのよ!」
     「エイリー! よせェ!!」
     エリスの悲鳴は、真下の部屋に居るヘーベーのもとにまで響いてきた。

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  • from: エリスさん

    2007年05月21日 12時45分20秒

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    「恋神誕生神話異聞・2」
     ヘーラーに言われるままに、目を閉じ、深呼吸をする。
     「先ずは、自分の体の中をイメージするのだ。いろいろな臓器が詰まっているな。それを上の方からゆっくりと見ていこう……何が見える?」
     「先ず、肺……心臓……胃……」
     エリスは自分の体の中の仕組みを一つ一つ確かめながら答え、最後に「子宮」と答えた。
     「その子宮の中に、小さな子供がいることをイメージしてみよう。まだ親指ぐらいの、小さな子供だ」
     「はい……見えてきました」
     「では、その子供の鼓動を聞いてみよう。心臓を動かし、血液を巡らせているさまをイメージするのだ」
     「はい、母君」
     ヘーラーの指導も回数を重ね、今ではエリスも容易くイメージできるようになってきていた。――しかし、イメージができるからといって、出産は楽ではない。
     第一子である長女のレーテーは、お腹の中で大きくなり過ぎた上に逆子で、相当時間のかかった難産だった。
     第二子である長男のリーモスの時はそれほどではなかったにしろ、普通の人なら難産と言わざるを得ない状態で、よく無事に出産できたものだと、周りをヒヤヒヤさせたのである。
     しかし、今度の第三子は、イメージの方もしっかり出来ているし、なにより順調に育ってきている。
     「この子の出産が無事に済めば、もう私の手助けなどいらなくなるであろうな」
     と、ヘーラーも太鼓判を押したほどだった。
     さて、アルゴス社殿には当然、この女神も住んでいる。ヘーラーの長女にして産褥分娩の女神であるエイレイテュイア――エリスの愛人でもあった。
     エイレイテュイアは二人の授業を陰から見守りながら、自分もある術のイメージトレーニングをしていた。単身出産ほどは難しくないものの、失敗すればその術をかけられた者は二度と懐妊できなくなるかもしれない、危険な術。
     『それでも、やりたい。この術を使えば、私でも……。例えそれで、あの人に一生嫌われようとも』
     エイレイテュイアは、吉日を選んで、夜を待った。

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  • from: エリスさん

    2007年05月21日 12時03分32秒

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    恋神誕生神話異聞・1

     不和女神エリスは、今でこそ子宝に恵まれているが、独りで子供を宿せるようになるまでには、百年近くの月日を要していた。
     実母である夜の女神ニュクスは、古くから知られる単身出産神であるが、やはり彼女も簡単に造れるわけではなく、水晶球に願をかけて自身の神力を増幅させてから、胎内に子供が居ると強くイメージすることによって宿していた。
     同じく単身出産神であるヘーラーも強くイメージすることで子供を宿すタイプだが、彼女の場合は何かで力を増幅させる必要もなく、自身の神力だけでやってのけてしまったのだから、流石はオリュンポスの王后陛下である。
     エリスはヘーラーの養女にしてもらったこともあって、受胎の術はヘーラーに教わった。先ずは神力を鍛えることから始まり、体力をつけ、女体の仕組みを学び、子供を産むこと・育てることに対する心構えを十分に教わってから、イメージトレーニングへと到った。
     イメージトレーニングをするときは、なるべく楽な姿勢になるようにしなくてはならない。一番いいのは寝ながらなのだが、エリスはヘーラーの前で寝るのも申し訳なくて、椅子に座って、背もたれに十分に体重を預けながらおこなっていた。
     ヘーラーもエリスの斜向かいに椅子を持ってきて座り、彼女の手を取りながら指導をした。
     「では……目を閉じて、呼吸を整えなさい」

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  • from: エリスさん

    2007年05月21日 11時39分13秒

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    土曜日は更新できないけど

     本当にありがたいことですが、先日の土曜日のアクセス数を確認しましたら、470人の方がアクセスしてくださっていました。
     もったいないことでございます。
     私にとっては土曜日は仕事が忙しく、次の日もハードな仕事が待っているということもあって、更新はおろか、他のサークルを覗く余裕もなく就寝してしまいます。
     それでもなんとか、今日のように平日の休みを使って更新しているわけですが……皆さんはそれを、土曜日になってから読んでいらっしゃるんですね。
     本当に本当に、重ね重ねありがとうございます。
     それでは、今日から新連載を始めたいと思います。

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  • from: エリスさん

    2007年05月16日 12時59分14秒

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    異形の証 解説

    エロースの娘の名前
     エロースとプシューケーの恋物語で、一番最後に出てくるのがこの娘なんですが、どの文献を見ても「喜び」と、日本語に訳された名前しか載ってなく、
     「じゃあ、ギリシア語でなんて読むの!?」
     という疑問がずっと拭えませんでした。なんですが最近ようやく、
     「Voluptas」(喜び)
     という記述を見つけて、それを今までの経験で自分なりに読んでみましたら「ヴォループタース」となりました。
     せめてギリシア語表記だったら、ギリシア語辞典を持ってるから調べられたんですけど……。
     間違えていたらゴメンね、〈喜び〉さん。


    エリスの子供たち
     これも同様に、日本語訳された名前しか載っていない場合が多かったです。それでも詳しく載っている本に、ちゃんと読み仮名が振ってあったので、エリスの子供たちに関しては名前を間違える心配はなかったのですが……問題は「性別」でした。
     どの子が男で、どの子が女なのか、ほとんどわからない!
     確実に女児だと分かっているのは、レーテーとアーテーぐらいです。なので、あとは私が名前から判断して決めました。
     いっそのこと、全員女児にしておけば良かったかな?(もう遅いけど)。
     こちらも、性別間違えていたらゴメンナサイ、です。

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  • from: エリスさん

    2007年05月16日 12時08分20秒

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    「異形の証(いぎょう の あかし)・16」
     ささやかな宴が再開されて、ニュクス様もレイアー様の隣に着いて参加されることになった。
     僕はまだ翼を髪に変えたまま、初めて背もたれのついた椅子で食事をした。すると僕の横に座っていたアーテーが、
     「あとで私にも教えて! 私も翼が欲しいの。ね? ね?」
     と、せがんでくるので、
     「それには髪を伸ばさないとダメなんだよ。アーテーはショートカットだから無理だね」
     「伸ばすもの! 絶対伸ばすから、レーテー姉君くらい長くなったら、私にも教えて! ね? エロースゥ〜」
     「分かった分かった! 分かったから、腕を引っ張るなよォ」
     僕は浮かれてもいたけれど、ニュクス様の言葉で身を引き締めた思いもあったんだ……。


     ベッドの上で仰向けで寝られる快感を味わって、僕は思い切り体を伸ばした。
     「う〜ん! 楽でいいなァ!」
     それを横で見ていたプシューケーは、ちょっと残念そうな表情をしながら、こう言った。
     「エロース様の翼、私は本当に好きでしたのに」
     なので僕は彼女のことを見上げながら、言った。
     「別に、これからずうっと翼なしで生活するわけではないよ?」
     「あら、そうなんですの?」
     ガイア様の社殿から帰るときも、翼を元に戻さずに、馬車に乗って帰ってきたものだから、プシューケーは「もう二度と翼を使わないつもりなんだ」と思ったらしい。
     「また明日の朝になったら、いつもの姿に戻るさ。今日はね、この姿になれたのが嬉しくて、なかなか戻りたくない気分だったからそうしていたけど。だって考えてごらんよ。僕から翼を取ったら、恋の神としての仕事に差し支えるだろ?」
     「そうですわね。空を飛んで、誰にも気づかれないように恋の矢を射ってこそ、恋の神様ですものね」
     「それにさ……」
     僕は起き上がると、ベッドから降りて、言った。
     「今では忘れ去られてしまった事実――僕が、女神エリスの息子なんだっていう、あの翼はその唯一の〈証拠〉なんだからさ。絶対に失うわけにはいかないよ」
     「おっしゃるとおりですわ、あなた」
     そう。この異形の証は、僕にとって、あの誇り高い女神の血筋である証でもあったんだ。
     それを、誇りに生きていこう――これからも、ずうっと。




     後日談。
     アーテーは本当に髪を伸ばして、翼に変化する術を覚えた。
     覚えたのはいいんだけど……元来が破壊の女神だから、下手な飛び方でいろんな所にぶつかって、大事な建物を壊したりしている。
     なので僕は、エイレイテュイアお母様に頼まれて、アーテーの飛行訓練の先生をする羽目になった。
     早く覚えてもらわないと。僕だって自分の仕事が忙しいんだからさ。

                                 終

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  • from: エリスさん

    2007年05月16日 11時39分47秒

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    「異形の証(いぎょう の あかし)・15」
     ニュクス様はそっと、僕に耳打ちで呪文を教えてくれた。翼を髪にする呪文と、髪を翼にする呪文を。そして、そうなった時の自分の姿を強くイメージするようにと教えてくれ、僕から手を離した。
     「さあ、やって御覧なさい」
     「はい、お祖母様」
     僕は、ニュクス様がやったように肩に手を回して、呪文を呟いた。
     すると――急に、背中が軽くなって、足に何かが触れた。
     翼が髪にと変化し、足にあたったのだ。僕はその髪を手にとって見た……翼と同じ色の、白い髪だった。
     するとアーテーがケラケラと笑った。
     「おもしろい! 上だけ若くて、下はおじいちゃんだわ!」
     ニュクス様も複雑そうな表情で、言った。
     「髪と翼の色が違う子供は、今まで生まれたことがなかったから……」
     そうか。僕は髪の色は金色なのに、翼は純白だから。変化した翼は髪につながっても色が変わることがなく、よって「頭部は金髪、首のあたりから下は白髪」になってしまったのか。
     まあいいや! 大した問題じゃないから。
     これで寒くても普通の服が着れるし、寝るときは仰向けで寝られるんだから!
     「ありがとうございます、お祖母様! おかげで、今までできなかったことが全てできるようになります!」
     すると……ニュクス様は僕の手を取ると、跪き(ひざまずき)、真剣な表情で言った。
     「エロース。あなたもまた、異形の神として生まれたことを嘆いておられるのですね」
     ハッとした――そうだ、翼がなくなったことを喜んでいるってことは、その思いを口にしたも同じなんだ。それはニュクス様を悲しませることになるのに、僕はそんなことも気づかないで……。
     「エリスもそうでした……我が血の宿業を負わせてしまい、あなた方に対して、私はなんの償いもできません。けれど、決して御身をお厭いなさいませんよう。エイレイテュイア様の御子であるあなたが、その背に翼を負って生まれてきたことには、きっと何か意味があるのです。私たち神族でも考えが及ばない、大きな意味が……」
     「……すみませんでした、お祖母様」僕はそう言ってから、笑顔を見せた。「僕は決して、自分の翼が嫌いなわけではないんです。だから、そんなにご自分を責めないでください。僕は大丈夫です!」
     「……そうね。あなたは強い子ね。あのエリスの血を引いているのですから」

     

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