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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2007年10月24日 16時27分30秒

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    「誰が一番悪いのか?・5」
     ゼウスが現れたのはちょうどその時だった。
     「みな、静まれ……ヘーパイストスよ」
     ゼウスの優しい物言いに、ヘーパイストスは素直に返事をした。
     「今日は特別にわしの隣席に座るがよい――ヘーラーにも異存はあるまい?」
     するとヘーラーは、
     「ええ。今日のヘーパイストスにはその権利があります。アレース、ヘースをここまで連れてきてあげておくれ」
     ヘーラーは玉座から立ち上がると、その席にヘーパイストスを招き寄せた。そしてアレースはヘーパイストスを助け起こし、そこまで連れて行って、座らせた。
     「アレースもそこへ居てやると良い。ヘーパイストスの介助として」
     ゼウスの言葉に、ありがとうございます、とアレースは答えた。
     こうして裁判は行われた。
     アポローンの罪状は、神王の意志に背いてキュクロープス兄弟を殺害したことである。
     しかしアポローンにも言い分があった。
     「わたしは愛する息子を殺されたのだ! その敵討ちをしてなにが悪いのです!」
     その言葉に、ヘーパイストスは真っ向から立ち向かった。
     「どこが敵討ちだ! キュクロープスのおじさん達はおまえの息子になにもしていない! おじさんたちが父上に雷電を作っていたのは遥か昔のこと。おまえの息子が成敗されたことに、僕のおじさん達は一切関わっていないのに、神王である父上に復讐できないからと、腹いせに屁理屈を立てておじさん達を殺したんじゃないか! 八つ当たりもいいとこだ!!」
     ヘーパイストスの意見に、あたりから「そうだそうだ!」と声が上がった。
     「アポローンに厳罰を!」
     「死を持って償わすべきだ」
     「何人たりとも、神王陛下に叛く事は許されぬ!」
     だが、それらの声を制した者がいた――ヘーラーだった。
     「確かに、アポローンの罪は重い。敵を討つべき相手を間違えて、絶対に手に掛けてはならない方々を殺してしまったのだから。だが――これは、陛下、あなたにも責任があります」
     「なんだと?」
     眉を吊り上げながらそう尋ねたゼウスに、ヘーラーは言った。
     「ハーデースからの訴えがあったとき、なぜ、即座にアスクレーピオスを成敗することを決めてしまわれたのです。アスクレーピオスには先ず、神々の長として、また彼の祖父である立場からしても、自然の摂理というものを説き、〈死〉もまた必要なことなのだと納得させて、二度と死者を生き返らせぬように教え諭すべきだったのです。慈悲の心をもって! そうすれば、こんなことにはならなかったものを……」

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  • from: エリスさん

    2007年10月24日 15時50分48秒

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    「誰が一番悪いのか?・4」
     事態を重く見た紙神王ゼウスは、そっこくアポローンを捕らえ、詮議の場にオリュンポスの神々を集めた。
     当然のごとくそこにはアポローンの双子の姉・月光女神のアルテミスも呼ばれていた。アルテミスは自分の弟が犯した罪に心を痛めながらも、なんとかして弟を助け出したいと、ポセイドーンやハーデースに声を掛け、ゼウスに取り成してほしいと頼み込んだ。だがどちらの神もそれを丁重に断ってきた――ハーデースにとったら当然のことだが、ポセイドーンに至っては「下手にゼウスを怒らせたくない」という気持ちがあった。
     そして遅れてアテーナーが到着すると、アルテミスは彼女にも懇願した。
     「お姉様! きっとあなたなら、お父様の勘気を和らげることがお出来になります! どうか我が弟を助けてくださいませ!」
     だがアテーナーは険しい顔をして、アルテミスの手を離させた。
     「いつもなら、可愛い妹であるあなたの願いを聞き届けもしますが、今日ばかりはそれはないと心得なさい。なぜなら、あなたの弟が命を奪った御方は、私が敬愛するおじ様たちだからです」
     「……お姉様……」
     「むしろ私は、お父様のお許しさえあれば、即刻おじ様たちの敵討ちをするつもりで、ここへ来たのです!!」
     ヘーパイストスはその場にはいなかった。ひどく悲しみに打ちひしがれ、とても人前に出られる精神状態ではないのだ。それでも、彼は無理をしてこのオリュンポス社殿に参上し、アレースと一緒に隣室に控えていると言う。それを聞くとアテーナーはすぐにも彼を慰めに行きたいと思ったが、人の目もあり、斎王として毅然と詮議が始まるのを待った。
     しばらくして、体を鎖で縛られたアポローンが連れてこられた。
     それを待っていたかのように、ヘーパイストスもアレースと一緒に姿を現した。
     ヘーパイストスは……アポローンの顔を見るなり、駆け出した。それは相手に殴りかかろうとしての行動だったが、右足を引きずらなければ歩けない彼は、すぐに転んでしまった。
     助け起こしたい! という気持ちをアテーナーが必死に堪えていると、すぐにアレースが弟に駆け寄っていた。
     「大丈夫か、ヘース」
     「僕の痛みなんか、おじさん達が受けた苦しみに比べたら、なんてことはない!! 離して、兄上……僕以外にあいつを殺させない! おじさんの敵は僕が取るんだ!」
     「落ち着け、ヘース……」
     「離して、兄上……離してくれ!」
     もがきながら、必死にアポローンへ挑みかかろうとするヘーパイストスを、アレースもまた懸命に抱き止めた。
     「すべては裁きが終わってからだ! 父上に任せよう!」

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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 13時32分17秒

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    「誰が一番悪いのか?・3」
     コローニスの胎内から助け出された男児は、月足らずながら神の血を引いていたおかげですくすくと成長した。
     その子はアスクレーピオスと名づけられ、半人半馬のケンタウロス・ケイローンに預けられた。そこで医術を学んだ彼は、成人して医者となり、ついには死者をも生き返らせるほどの技術を手に入れていた。
     しかしそのことにより大問題がおきた。死者が誰一人として冥界へ行かないものだから、冥界で「罪滅ぼし」のために働く労働者が激減してしまったのだ。しかも、罪滅ぼしを終えた死者は生まれ変わって地上へ出て行くものだから、地上は人間の数が増えすぎて、ついには食糧難になりつつあったのである。
     この事に激怒した冥界の王ハーデースは、神王ゼウスに訴え出た。
     「あのアスクレーピオスをなんとかしなければ、冥界は出て行くばかりで労働者が居なくなり、崩壊してしまう。地上だとて人口が過密すれば、いつかは横になって寝ることもままならなくなるぐらい、地上が狭くなりますぞ」
     この訴えを聞いたゼウスは、やむなく雷電を使ってアスクレーピオスを焼き滅ぼした。
     この一瞬の出来事にアポローンはどうすることもできず、また神王に歯向かうこともできなかった。
     しかしこの嘆き悲しみをどうしていいか分からず、彼は叫んだ。
     「我が息子は雷電によって死んだ。キュクロープス兄弟が神王に雷電など手渡すからいけないのだ!」
     とんだ言いがかりによって、キュクロープス兄弟はアポローンの閃光で灰になってしまったのである。

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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 13時10分18秒

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    「誰が一番悪いのか?・2」
     テッサリアにあるラリッサの領主・プレギュアースには、一人の娘がいた。名をコローニスといい、美しくそして誰に対しても物怖じしない娘だった。
     このコローニスに太陽神アポローンが恋をして、妻の一人に加えた。だが神は人間の知らないところで大変忙しく、なかなかコローニスのところへ通えない日々が続いてしまう。それを解消するために、アポローンは純白の翼を持つカラスという鳥を文使いにすることにした。
     このカラスは神の力により人間の言葉を解し、話すこともできた。そのため、手紙だけではなく、その日コローニスがどんな様子でいたかも、逐一主人に報告していたのである。
     そしてある日、カラスは見てしまった。コローニスが若い男と親しげに話しているところを。しかもその男は別れ際に、コローニスの花のような唇にキスをしたから、さあ大変。
     カラスはその状況を事細かに主人に報告し、
     「コローニス様が浮気した! アポローン様を裏切った!」
     と騒ぎ立てた。
     アポローンは若さゆえか、事の次第を確かめもせず、叱りに任せて黄金弓を手にし、遥か向こうにあるラリッサへ向けて矢を放った。するとその矢は狙いを誤ることなく、コローニスの胸を刺し貫いた。
     コローニスは、今にも耐えそうな息の下、こう言った。
     「なぜに私があなた様を裏切れましょう。不貞を犯したわけでは決してなく、強引に唇を奪われただけの私を慰めてもくれず……それでも、あなた様が下したこの裁きを、私は甘んじて受けましょう。ただ、この身に宿ったあなた様の御子だけは、どうかお助けくださいませ」
     自分の浅はかさに嘆きつつ、アポローンはコローニスの願いを受け入れて、胎児を救い出した――男児だった。
     その後、カラスは間違った解釈によってコローニスに無実の罪を着せてしまった(浮気じゃないのに、浮気だと騒いだ)罪により、永久にコローニスの喪に服する罰を与えられた。そのため、カラスは今のように真っ黒になってしまったのである。

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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 12時44分59秒

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    誰が一番悪いのか?・1

     レームノス島にあるヘーパイストスの工房では、その日も熱い炎に耐えながら剣を打っているヘーパイストスとキュクロープス兄弟がいた。
     赤く熱せられた鉄の板は、三人の手にかかるとみるみるうちに剣の形へと変化していく――三人にとっては毎日これの繰り返しなのに、それでも楽しくて仕方ない毎日だった。
     「よォーし、それじゃ一端冷やそうかな。ステロおじさん、お願い」
     すこし赤みがとれてきた剣を、ヘーパイストスがステロペースの前にかざすと、ステロペースはニコッと笑って右手を前に出した。
     そこから発せられる冷気で、一瞬で剣が冷める――はずだった。
     だが――突然、ステロペースの頭上に閃光が落ちた。その光は目を開けていられないほど眩しく、思わずヘーパイストスも目をつぶってしまった。
     そして目がチカチカしながらも堪えて開いた時には、目の前にいたはずのステロペースが消えて、代わりに灰の山ができていた。
     「お……おじさん? ステロおじさん!」
     そう叫んだときだった。今度は背後から光を感じて、振り向くと、そこにいるはずのプロンテースまで居なくなっていた。そして代わりに灰の山……。
     「なに? どうゆうこと………プロンテースおじさん! ステロペースおじさん!」

     その悲鳴は、パルテノーンにいるアテーナーのもとまで響いてきた。
     「どうゆうこと!? キュクロープスのおじ様たちの気配が、まったく感じられない! お二方はどうしたの!」

     この日、キュクロープス兄弟はある者によって殺害されたのであった。
     そのある者とは――太陽神アポローンだった。

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  • from: エリスさん

    2007年10月10日 15時11分24秒

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    新作構想中!

     ただいま次回作を構想中のため、今回は小説アップはお休みです。m(_ _)m

     キュクロープス兄弟に降りかかった災難について書こうと思っているのですが、それには他の男神のことも調べなくてはならず、少し時間が要するので。
     その男神とは誰あろう、太陽神アポローンです。
     キュクロープス兄弟とアポローンの物語と聞いて、思い当たる読者の方もいるかな?

     最近の私はヘーパイストスにまつわる話ばかり書いていますが、やっぱりそれって気持ちが満たされていない証拠なんだろうか……。
     私としては、いつまでも純粋に、そして強くアテーナーを愛しているヘーパイストスという男性は理想のタイプなんだと思います。なんといっても優しいし、美男子じゃないという欠点も補えるだけの人物だし。

     私がお慕いしている男性も美男子ではないけれど、出会ったころは本当に優しくて、頼りがいのある男性だったんですよ。なのに、告白した途端に、ちょっとしたトラブルが私たちの間でおきてしまって、今はだいぶ冷たいです――まあ、そこらへんの事情は「恋愛小説発表会・改訂版」をご参照ください。

     だからと言って、そうしょっちゅうヘーパイストスの話ばかり書いていられないので、次回作で一応ヘーパイストスの話は止めて起きます。また時期が空いたら書くかもしれませんが(^_^)

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  • from: エリスさん

    2007年10月05日 15時00分38秒

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    「愛すべき「おじさん」たち・10」
     庭へ降りてきたゼウスは、楽しそうに次の作業にかかっている彼らに、おそるおそる声をかけた。
     「あのォ……そのォ……なんですな……」
     そんなゼウスの態度を不審に思ったヘーパイストスは、
     「どうかなさったのですか? 陛下」
     「いやァ、その、なんだ……ヘーパイストス殿に頼みがあるのだが……キュクロープスの叔父上たちを、御身のもとで働かせてやってはくれまいか。そのォ……できればそうしてほしいのだが……」
     すると、ヘーパイストスは母神・ヘーラーの方を見て、どうしよう、という気持ちを表情で見せた。
     なのでヘーラーは、微笑んで見せた――大丈夫よ、思ったことをお言いなさい、という気持ちをこめて。
     その気持ちを読み取ったヘーパイストスは、ニコッと笑ってこう言った。
     「お父様! それはお言葉が違います」
     ヘーパイストスの言葉に、ゼウスはちょっとびっくりした。
     「〈ヘースや、おまえにキュクロープス叔父上をお目付け役としてつけてやるから、ちゃんと言うことを聞いて、面倒を見てもらえ!〉……と、そういえば宜しいのです。そうでしょ? だって僕たち親子なんですから!」
     その言葉にゼウスは安堵して、笑顔がこぼれた。
     「そうだな。わたし達は親子になったのだから、それで良かったのだな」
     そしてゼウスはキュクロープス兄弟の方を向いて、言った。
     「叔父上方、お聞きのとおりです。どうぞわたしの息子の面倒をみてやってください。ご覧のようにやんちゃな奴で、危ないことも平気でやりますので。お二方がいれば安心です」
     キュクロープスはもちろん、笑顔で承諾した。
     そして、ヘーパイストスに話しかけた。その内容は……。
     「〈おじさん〉? おじさんって呼んでほしいの? いいんですか!」
     ヘーパイストスの返答にキュクロープス兄弟が大層喜んでいるのを見て、ゼウスはハッとさせられた――自分は神王の威厳や世間体を考えて、叔父たちの望みを叶えてあげられなかったものを、ヘーパイストスは簡単に叶えてあげていたのだ。
     「もちろん喜んで! 僕、大叔父様って言いづらいなァって思っていたんです」
     こうしてキュクロープス兄弟はヘーパイストスのもとで働くことになった。それは主従関係とは異なって、どちらかといえば、ヘーパイストスがキュクロープス兄弟の「息子」になったような感覚だった。実際、ゼウスよりもヘーパイストスはキュクロープスに懐いたのである。だからといってゼウスが不満に思うこともなかったが。
     後日、レイアーが彼らの仕事場を訪ねていった時、彼らは姉にこう言ったそうである。
     「ゼウスは顔はクロノス兄上に似ていたけど、兄上の優しさは、ヘーパイストスの方が受け継いでいます」
     「それを感じたからこそ、わたし達はヘーパイストスと居ることを選んだのです」
     と――。


                                  終

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  • from: エリスさん

    2007年10月05日 14時28分20秒

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    「愛すべき「おじさん」たち・9」
     キュクロープス兄弟のことは、子供たちも面識はあった。ただあまり話をしたことがなかったのは、キュクロープス兄弟の特殊能力ゆえに、怪我をさせてはいけないという、大人たちの配慮からだった。
     しかし、これから子供たちがやろうとしていたことが、あまりにもキュクロープス兄弟の気を引いてしまって、彼らは思い切って声をかけてきたのである。
     「わほわほ!」
     「え? 一緒にやりたいの?」
     「うほうほ」
     「溶鉱炉の代わりができるって? 大叔父様に?」
     ヘーパイストスの問いかけに答えるため、プロンテースはお鍋の半分を手に取った。
     そして、それに向かって口から火を噴いたのだった。
     お鍋は一瞬にして、熔けかかった鉄の塊となった。
     プロンテースはそれを握ったまま、金床(かなとこ。鉄を叩いて鍛えるための台)に置いた。
     「わほ!」
     「ハイ、大叔父様! よォーし、いくぞォ!」
     ヘーパイストスはそれをハンマーで叩いて、平たく伸ばしていった。何度も叩いて、ときにステロペースが冷水を出して冷やして、またプロンテースが火を浴びせて、叩いて伸ばして……三人のコンビネーションで、短剣は見事に出来上がった。
     「はい、兄上。出来立てのほやほや!」
     ヘーパイストスが誇らしげに笑っているのを、キュクロープス兄弟も満足そうに見つめている。
     するとアレースは、目の前で繰り広げられた名人芸に感動して、こう言った。
     「すごいや! ヘースも凄いけど、俺、大叔父様たちにこんな特技があったなんて知りませんでした! かっこいいです!」
     それを窓から覗いていたガイアたちも、感心した。
     「これは、キュクロープスは自分たちで再就職先を見つけたようだね」
     ガイアが言うと、ちょっと困ったような顔をしてゼウスが頷いた。
     するとレイアーが「なにをぐずぐずしているの」と、ゼウスの背中を押した。
     「早く行ってらっしゃい。そしてヘーパイストスに頼むのです」
     「……わかりました」
     ゼウスがあまり気乗りしない理由は、ヘーパイストスが自分の子ではなかったため、継子いじめをしてしまった過去があったからだ。そんな自分がヘーパイストスにお願い事をしようなどとは……相手はどんな顔をするだろう?

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  • from: エリスさん

    2007年10月05日 14時09分07秒

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    「愛すべき「おじさん」たち・8」
     ヘーパイストスはその場で術を使って、金はさみやハンマーなどを出し、ついには、
     「出でよ、溶鉱炉!」
     と叫んだので、「馬鹿者!」とヘーラーに頭を小突かれた。
     「こんな部屋の中で溶鉱炉など出すのではありません! 火事になったらどうするのです! お庭でやりなさい!」
     「ハ〜イ……」
     子供たちは手分けして、今出した道具を庭に運び出した。
     その様子を、キュクロープス兄弟は興味深そうに見ていた。
     庭に出たヘーパイストスは、まずアレースに、彼の剣術の腕を見込んでお鍋を真っ二つにしてくれるように頼んだ。
     「まかせろ! ていやァー!」
     アレースは剣を両手で握って、お鍋を真っ二つに切り裂いた。その見事な剣さばきに、ヘーパイストスとアテーナーは拍手を送った。
     「それじゃ先ず兄上の短剣から作るね。このうちの一つをこれから熱で溶かします。さあ行くよォ〜」
     ヘーパイストスは両手を広げて、術を使うために力を籠めた。
     「出でよ、ようこう……」
     その時だった。
     「わほ!」
     背後から声をかけられて、ヘーパイストスはびっくりして力を分散させてしまった。振り返るとキュクロープス兄弟が立っていた。
     「あっ、大叔父様たち!」
     その声を聞いて、部屋の中に居たガイアたちが驚いた。そして部屋の中を見回して、さっきまで居たはずのキュクロープス兄弟を探す……。
     いつの間にか、キュクロープス兄弟は庭の子供たちのところへ行ってしまっていたのだった。

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