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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2007年12月28日 15時08分23秒

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    アドーニスの伝説 これにて終了

     「アドーニスはアプロディーテーの神力によって、アネモネの花に変化しました」



     という、ありきたりな終わりは避けました。
     なぜなら、アドーニスを真実愛したのはペルセポネーとハーデースだと思ったからです。
     実際、アドーニスを預けっぱなしで十年以上も放っておいた(伝説上は何年放っていたのか、よく分かりません)アプロディーテーに真実の愛があったのか、微妙だなァと思うんですよ。
     それにねェ、ちゃんとアレースという旦那がいるのに浮気ばっかりしているアプロディーテーって、神様に対して失礼ですけど、あまり尊敬したくない。

     って、私も不敬罪で「恋の呪い」に襲われちゃうかも(^O^;


     さて、次回作なんですが。
     大分前に予告しましたように、「ディオニューソス生誕異聞」をベースにした「秘めし想いを……」を連載します。
     しかしここに、ちっちゃな問題が。
     前にも書きましたが、この作品は途中で執筆を中断したもので、序章しかできていません。それをあえて発表しようというのだから、私も大分無謀ですが。
     しかしその中断してから数年の間に、このタイトルをこのまま使わずにいるのは勿体無いからと、まったく別の作品に使い回ししました。
     それが、平安時代を舞台にした「秘めし想いを……」という作品。こちらは完成品です。

     で、この平安時代の「秘めし想いを……」は、今「恋愛小説発表会・改訂版」サークルで発表している「露ひかる紫陽花の想い出」の関連作品なので、この「露ひかる〜」の連載が終わったら、次回作として発表する予定になっています。

     そうなると、同時期に「秘めし想いを……」というタイトルの作品が二つ、同時進行することになります。
     これってやっぱり、読者さまが混乱なさいますよね???
     
     なので、こっちの「〈ギリシア神話版〉秘めし想いを……」はあえてタイトルを変更しようと思います。
     なんてタイトルにしようかなァ……………………………。次のアップまでには考えますね。


     では皆様、良いお年を。

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  • from: エリスさん

    2007年12月28日 14時50分40秒

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    「アドーニスの伝説・18」
     ハーデースの言葉通り、アドーニスの魂はケルベロスのところで引き止められていた。――でもあの時のような、嬉しそうな顔をケルベロスはしていなかった。悲しそうな顔で鼻を鳴らし、アドーニスに擦り寄っている。
     「ごめんよ、ケルベロス。おまえを悲しませるとは思わなかったよ」
     アドーニスはそう言って、ケルベロスの真ん中の頭をなでてあげていた。
     そんな息子に、ペルセポネーは優しく声をかけた。
     「お帰り、アドーニス」
     「お母様!」
     アドーニスはすぐさま駆け寄ってきた。そして、また悲しそうな顔をした。
     「ごめんなさい、お母様。こんなことになってしまって」
     「謝る必要はありません。あなたは人間――必ず死が訪れるものだったのです。でもその死とは、終わりではなく、次の世へ旅立つための入り口でもあるのですから。でも……あなたが望むなら、このまま元の姿で生き返ることも可能ですよ。お父様のお力で」
     「……いいえ、お母様。僕はこのまま、冥界へ進みます」
     「アプロディーテーのことは、もういいの?」
     「はい……なんだか、死んだ途端、僕の周りを取り巻いていたものが急に晴れたような、そんな気分なんです。アプロディーテー様のことは、もうどうでも良くなってしまって。変ですね。あんなに好きだったのに」
     「まあ……」
     「それに……アレース様のアプロディーテー様への想いを垣間見る機会があったのですが、とても敵わないと思いました。だからもう、いいんです」
     「分かったわ」
     ペルセポネーはアドーニスをやさしく抱きしめた。
     「では冥界へ行きましょう。あなたは罪を犯していないから、すぐにも次の転生が決まるわ。何度も生まれ変わり、それぞれの人生を歩みながら成長して、いつか人間以上の存在に――神に近づくことができるでしょう。そのときには、私のお腹の中から生まれ変わっていらっしゃい」
     「はい……いつか、必ず」

     アドーニスが再び人間として転生したのは、それから三日後のことだった。
     様々な人生を生き、死ぬたびに養父母と再会し、また生まれ変わる。
     それを何百回と繰り返したアドーニスは、人間が言うところの西暦が二〇〇〇年を過ぎたころ、ハーデースとペルセポネーの実子として生まれ、永遠の命を手に入れたのだった。


                                                             終

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  • from: エリスさん

    2007年12月28日 14時29分22秒

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    「アドーニスの伝説・17」
     しばらくぶりに帰ってきたペルセポネーは、すっかり憔悴しきっていた。
     それを見てハーデースは、
     「まだ母君のところに居たほうが良かったのではないかね?」
     するとペルセポネーは首を左右に振って、こう言った。
     「いいの。あなたのお顔が見たくなったの……」
     「……なにか食べるかい? ろくに食事もしていないのだろう」
     「うん……果物、ある?」
     「もちろん」
     と、ハーデースはテーブルの上にあった果物籠からイチジクを取って、皮をむき、一切れペルセポネーの口の中に入れてあげた。
     それを口にすると、ペルセポネーは笑顔になった。
     「おいしい。やっぱりお食事は、あなたの御手からいただくのが一番おいしいわ」
     「そうかい? だったらもっとお食べ。さあ、テーブルについて」
     「ええ、あなた」
     ハーデースが差し出した右手にペルセポネーが自身の左手を乗せて、二人はテーブルに向かって歩き出した。
     その時だった。
     二人は同時に同じ叫び声を聞いた――周りの者たちには聞こえなかった、その声を。
     「……アドーニス?」
     ペルセポネーの問いに、ハーデースが答えた。
     「そうだ、今の悲鳴は、アドーニスの声だ」
     「なぜ!? どうゆうこと!?」
     黒いこうもりに変化していたペイオウスが飛んできたのは、そのときだった。
     「申し上げます!」と、ペイオウスは元の姿に戻った。「アドーニス様が、たった今!」
     狩りの途中、大きな猪に遭遇したアドーニスは、勇猛果敢にもそれを捕らえようと矢を番(つが)えたのだが、仕留められず、その猪の角に腹を刺されて、息絶えてしまった。
     「申し訳ございません! アプロディーテー様がアドーニス様をお放しにならず、ご遺骸をこちらにお運びすることができませんでした」
     「それで急いで知らせに来てくれたのね!」
     と、ペルセポネーは言った。「あなた、私すぐに地上へ!」
     「待ちなさい」
     ハーデースはペルセポネーを自分のほうに向かせると、言った。
     「そなたは分かっているはずだ。〈死〉は終わりではないと」
     その言葉で、ペルセポネーはハッとした。
     現世での死を迎えても、それはまた次の世に生まれ変わるためのステップ。だからこそ冥界が存在しているのだ。
     「迎えにいっておいで。またきっと、ケルベロスがアドーニスの相手をしてくれているはずだ」
     「ええ……行って来るわ、あなた」
     ペルセポネーは落ち着いた足取りで歩き始めた。

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  • from: エリスさん

    2007年12月28日 14時04分15秒

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    「アドーニスの伝説・16」
     それから数日たったある日のこと。
     地上に偵察に行っていたペイオウスが帰ってきて、ハーデースの私室に通された。
     「お后様は、今日はお戻りの日ではありませんでしたか?」
     冥界にペルセポネーの気配がしないのでペイオウスがそう聞くと、ハーデースは椅子に腰掛けながらこう言った。
     「アドーニスのことが心配で堪らないから、最近は地上のデーメーテールの所へ行ったっきり帰ってこないのだよ。まあ、仕方ないと思うがね。わたしとて、冥界の仕事がなければ、なるべくあの子のそばにいてやりたいところだ」
     「君様は本当に、アドーニス様を我が子同様に思っていらっしゃるのですね」
     するとハーデースはため息をついた。
     「十二年だよ、ペイオウス。十二年、わたしたち夫婦はあの子を育ててきたのだ。情が移らないはずがないじゃないか……」
     「無粋なことを申しました……」
     「それより、報告を。アドーニスの様子を聞かせてくれ」
     ペイオウスはアドーニスの様子をさぐるために地上へ行っていたのだ。
     ペイオウスが見てきたところによると、アドーニスはアプロディーテーにとても大事にされているという。それどころか、アプロディーテーはすっかりアドーニスに夢中になっていて、アドーニスが狩りに行くときも必ず付いて行き、服が汚れるのも構わずに一緒に走り回っているという。
     「あのおしゃれ好きなアプロディーテーが?」
     「変われば変わるものでございます。もう、すっかり少女に戻られたような。とにかくアドーニス様と一緒にいなければ気がすまないようです」
     「……やはり、呪いかもしれぬ」
     アドーニスの母・ズミュルナはアプロディーテーの呪いで実父に恋し、罪に落とされた。だからアプロディーテーがアドーニスに夢中になっているこの状況は、ズミュルナがアプロディーテーにかけた呪いかもしれない。
     そうなると、この呪いが成就される先には……。
     「ところで君様」と、ペイオウスは口を開いた。「どうやらお后様も偵察を出している模様です」
     「ペルセポネーが?」
     「はい。デーメーテール様のところの侍女を、向こうで見かけましたもので」
     「そうか。まあ、無理もない……。ペイオウスよ」
     「はい、君様」
     「アプロディーテーは、その……アドーニスとは、遊んでいるだけなのか? それ以上の……男女の……」
     言いにくそうにしていることを察して、ペイオウスが答えを出した。
     「アプロディーテー様がアドーニス様に、性的虐待などは行っていないか、ということでございますか?」
     「ああ、そうゆうことだ」
     「ご安心ください。さすがのアプロディーテー様も、そのところは分別がおありのようです。いくらなんでも十二歳の少年に手を出すような、そんな馬鹿げた方ではいらっしゃらないでしょう?」
     「そう願いたいものだが、やたらと〈愛人にする〉と言っていたから、もしやと……それに、デーメーテールの侍女が偵察にきているのなら、もし仮にアプロディーテーがアドーニスに不埒を働いているところを見てしまい、それをペルセポネーに報告などしようものなら……」
     ペルセポネーの封印された記憶が、よみがえってくるかもしれない……。
     するとペイオウスは微笑みかけるように言った。
     「デーメーテール様の侍女であれば、ペルセポネー様のご事情もご存知のはず。もしそんな場面を見てしまったとしても、報告するはずがございません」
     「……そうだな。そのはずだ。ペイオウス、わたしは心配性になりすぎているようだ」
     「君様、父親とはそういうものでございますよ」

     それから、また数日が過ぎた。

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  • from: エリスさん

    2007年12月21日 14時26分56秒

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    年末年始の更新スケジュール

     明日から映画館は冬休みスケジュールに入ります。
     そのため、私もいつものような小説アップができなくなってしまいました。――早い話が休日が少ないのです。

     予定としては12月28日と1月4日は勤務時間が12時までなので、この日に小説アップをしようと思います。
     せっかく冬休みに入ってアクセス数も増えてきているのに、読者の皆様、本当に申し訳ありません。
     でも小説以外の雑談だったら、ちょこちょこするかもしれませんので。

     ちなみに、「如月日記」サークルはほぼ毎日更新します。そちらも併せてよろしくお願いします。

     では、次回12月28日にお会いしましょう。

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  • from: エリスさん

    2007年12月21日 14時00分39秒

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    「アドーニスの伝説・15」
     数日後、アドーニスがアプロディーテーのもとに行く日がやってきた。
     ペルセポネーは涙が出そうになるのを指で拭いながらも、息子の出かける仕度を手伝っていた。
     するとアドーニスは、そんな母親の背中に抱きついた。
     「泣かないでください、お母様。これが永遠の別れではないのですから」
     「そうね……ごめんなさいね、アドーニス」
     ペルセポネーはアドーニスの旅行カバンを閉めると、立ち上がり、しっかりと息子のことを抱きしめた。
     「ねえ? アドーニス。裁判ではこんな結果になったけど、あなたの自由にしていいと言われた四ヶ月も、私と一緒に過ごしてくれないかしら?」
     「お母様……」
     アドーニスはしばらくペルセポネーの顔を見つめていると、寂しそうに首を左右に振った。
     その答えを、ペルセポネーも予測していた。
     「やっぱりあなた、アプロディーテーのことが……」
     初めてアプロディーテーに会った時、まだいたいけな少年は一瞬で心を奪われていたのである。
     「分かっていたわ。あの時のあなたは、私が初めて叔父様――ハーデース様にお会いしたときと、同じ目をしていたもの。一瞬で恋に落ちた目を……悔しいけど、アプロディーテーの美しさでは無理もないわ」
     「ごめんなさい、お母様」
     「謝らなくていいのよ! 恋とはそうゆうものなの」
     ペルセポネーは無理にでも微笑んで見せた。
     「あなたの好きになさい、アドーニス。でも辛くなったら、いつでも戻ってきていいのだからね」
     そうしているうちに、アプロディーテーの迎えの者が来た。
     ペルセポネーとハーデースは存分に別れを惜しんで、アドーニスを送り出したのだった。

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  • from: エリスさん

    2007年12月21日 13時39分50秒

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    「アドーニスの伝説・14」
     後日、裁判が行われた。
     双方とも自分の権利を主張し、一向に進展しないで時間だけが過ぎて行く。
     しかし裁判を見守る他の神々は、大方ペルセポネーとハーデースの味方だった。どうみてもアプロディーテーよりペルセポネーの方がアドーニスを愛していることは明白だったからだ。
     すると思い余って、ヘーラーが口を開いた。
     「アドーニスの幸せを考えれば、ペルセポネーの傍にいるのが一番いいと思いますが?」
     「……口を挟むなと言いたいところだが」と、ゼウスは言った。「わしもその意見に賛成なのだよ」
     「では、そうなさいませ」
     「しかしなァ……」
     「冗談ではございません!」と怒鳴ったのはアプロディーテーだった。「そもそもは私に不敬を働いた罪人の子供ですよ! 私がこの子に対してどうしようと、他の神々が口出しできることでは本来ないのですよ!」
     するとペルセポネーが反論した。
     「子供に罪はないわ! アドーニスの実母があなたに働いた不敬は、確かに断罪すべきことだったでしょう。でももうそのことでは、その娘は罰を受けているのでしょ? 罪を償っているのでしょう? だったら、もう子供にまでその枷を負わせることはないはずだわ!」
     その意見に賛同するように、列席の神々が拍手をした。するとアプロディーテーは、
     「うるさいわね! 静まりなさい!」
     と、神々に振り返り、またペルセポネーの方を向くと、こう言った。
     「結局あなたは子供が欲しいだけでしょ? だったら自分で作ればいいのよ。いつまでも乙女面しないで!」
     「……なんですって?」と、ペルセポネーはキョトンとした顔になった。
     「何を言っているの? アプロディーテー。子供は作るものでは……」
     ペルセポネーが言わんとしている言葉の先に気づいて、何人かの神がハッとした。
     ゼウスもその一人だった。その先を言わせたくない彼は、大声で「静粛に!」と叫んだ。
     「判決を言い渡す! アドーニスの権利は双方にあると認め、一年――12ヶ月を三等分し、四ヶ月はアプロディーテーと共に暮らし、次の四ヶ月はペルセポネー・ハーデースと共に、残る四ヶ月はアドーニスの自由とする!」
     するとペルセポネーとアプロディーテーはほぼ同時に「そんな!」と叫んだ。しかしそれには構わず、ゼウスはこう続けた。
     「わたしに逆らうな! これはわたしが公平に裁いた結果だ! わたしに従え!」
     こうして、なんとも納得できないまま裁判は終了した。

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  • from: エリスさん

    2007年12月14日 16時45分52秒

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    ご報告が遅れました

    実は日記サークルを立ち上げました。

    内容が「恋愛小説発表会 ac64813@circle」とかぶるのですが、
    こっちは純粋に私のおしゃべりだけです。小説アップはありません。
    お時間がありましたら、御覧ください。


    「如月日記」
    ac83939@circle

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  • from: エリスさん

    2007年12月14日 12時35分33秒

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    「アドーニスの伝説・13」
     「あなたこそ勝手なことばかり言わないで! そもそも、預けっぱなしで様子も見に来なかったくせに、自分のものだと主張するなんて馬鹿げているわ!」
     ペルセポネーが真っ向から対決する姿勢を崩さないでいると、さすがのアプロディーテーも怒りを覚えたのか、目つきを変えた。
     「いいわ! だったら神王陛下に裁いていただきましょう」
     「お父様に?」
     「そうよ。私はあなたたち夫婦を告訴してやるわ!」
     アプロディーテーはそう言うと、天を仰いだ。
     「聞いておられますね、ゼウスお父様! 私はあなたに訴えます!」
     すると――急に群雲が現れて、その中から神王ゼウスが姿を現した。
     「その訴え、聞き届けた! この一件はわたしが裁いてやろう!」
     するとアプロディーテーは、恭しく頭を下げた。
     「ありがとうございます、お父様」
     その時ペルセポネーも何か言おうとしたが、その前にハーデースが口を開いた。
     「兄上、慈悲をくれ! 裁判は大人しく受ける。だが、判決が下りるまで、アドーニスは我々のもとに置かせてくれ!」
     その言葉に、ゼウスは頷いた。
     「今すぐにおまえ達からその子を取り上げたりはしない。どんな判決が下っても後悔しないように、今のうちに存分に可愛がることだ」
     「お父様がそういうのだから」と、アプロディーテーも言った。「この場はあなたたちに譲ってあげるわ」
     そうしてアプロディーテーとゼウスがそれぞれに帰っていくと、ペルセポネーはようやくアドーニスを放してあげた。
     「ああ、いつかこんな日が来るのではないかと、覚悟はしていたけど……」
     ペルセポネーは目じりに溜まった涙を、指先でぬぐった。それを見て、ハーデースは言った。
     「大丈夫だ。この十年、アドーニスを育ててきたのはわたし達なのだ。そのことをゼウス兄上だとて分かってくださっている」
     「ええ、そうね。そうだわ……」
     アドーニスがようやく口を開いたのは、そんなときだった。
     「お母様……あの方が、美の女神のアプロディーテー様なのですか?」
     「そうよ。でも、あなたは何も心配することはないわ。あなたは私達の息子。決してあんな女に渡してなるものですかッ」
     「……なんて、お綺麗な方なんでしょう……」
     「え!?」
     アドーニスの言葉に、ペルセポネーもハーデースも驚いた。
     「本当に綺麗で……また、会えるでしょうか?」
     「アドーニス、あなた……」
     ハーデースはこの時思った――アドーニスには呪いがかかっている、と。

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  • from: エリスさん

    2007年12月14日 11時43分00秒

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    「アドーニスの伝説・12」
     その日は突然訪れた。
     アドーニスが釣りを楽しんでいたとき、天空から金髪の女神が現れて、こう言ったのだ。
     「まあ! 想像以上の美男子に育ったこと! これならば私の愛人に相応しいわ」
     それは間違いなく美の女神アプロディーテーだった。
     従者たちは必死にアドーニスを奪われまいと、彼の周りを囲んでアプロディーテーに立ち向かった。それを嘲笑うように、アプロディーテーは閃光を浴びせたり、金色の炎を噴かせるなどして、従者たちをアドーニスから剥ぎ取った。だがそれでも、従者たちは意識が途絶えそうになりながらも懸命に立ち向かい、しまいにはアドーニスに縋り付くなどして、主人を守ったのである。
     その間――なぜかアドーニスは、まるで魂が抜けてしまったかのように身動きせず、ただアプロディーテーのことを見つめていた。
     そのうちに知らせを受けたペルセポネーが、雲に乗って猛スピードで飛んできた。
     「アプロディーテー!!」
     いつになく凄まじい表情のペルセポネーは、右手に籠めた白いオーラを、アプロディーテー自身に浴びせた。
     するとアプロディーテーは、必死に神術を出そうと手の形を変えて見せるのだが、なにも発せられなくなってしまった。
     「お生憎ね、アプロディーテー」
     ペルセポネーは雲から降りて、言った。
     「私の得意技は〈消去術〉なの。しばらくあなたは神術が使えないわよ」(いわゆる〈消去魔法〉。相手が発する魔法を無に返す術である)
     「無に返す術ってことね。さすがは冥界の女王だこと」
     アプロディーテーは嫌味を込めてそう言った。「それにしても、よくも約束を破ってくれたわね。箱を開けずに世話してくれって言ったのに、箱の中どころか、外の世界でこんなに羽を伸ばしているなんて。他の女神の目に止まったらどうしてくれるつもりだったの?」
     「なにが約束よ。勝手にあなたが決めたことで、私は同意も何もしなかったわ。第一、赤ん坊を箱から出さずに養育するなんて、そんな非情な真似ができるわけないじゃない!」
     「女神らしくない台詞ね! 女神に不可能なことなどないのに。でもいいわ、あなたが約束をやぶってくれたおかげで、この子はこんなに丈夫に、そして美しく育ってくれたんだろうから。さあ、その子を私に返しなさい」
     「ふざけないで!」
     ペルセポネーがそう叫びながらアドーニスを抱きしめたころ、ハーデースも駆けつけてきた。
     「アプロディーテー、この子はもう、わたしたち夫婦の子供だ。確かに初めにこの子を見つけたのは御身だろう。だが、この子に愛情を注いで育ててきたのは、わたしたちなのだ。その点を汲み取って、この子をわたしたちに譲ってはくれまいか」
     ハーデースが言うと、アプロディーテーは嘲笑った。
     「あなたたちの子供ですって! 冗談ではないわ。この子は生まれる前から、私の裁断でどうにでもできると決まっていたのよ。いわば私の奴隷!」
     「奴隷じゃない!」とペルセポネーは言った。「この子を侮辱すると許さないわよ!」
     「私は真実を言っているのよ。あなたはなにも分かっていないようね」

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