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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2008年12月31日 18時49分58秒

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    今年も最後。


     大晦日。
     明日のためのおせち料理は重箱に詰めたし、お雑煮の準備もできてるし。
     仕事のために午前3時に起きなければならない不安は残りますが、明日はなんとか無事にお正月が迎えられそうです。

     その前に、今日は村主章枝選手の誕生日です。〓〓おめでとうございます。

     そして明日の元日は、堂本光一さまの誕生日。なんと、あの容姿で30歳です! あやかりたい!

     来年も忙しい毎日で、ときに連載を休んでしまうこともあるかもしれませんが、長い目でこれからもお付き合いください。

     よいお年を。

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  • from: エリスさん

    2008年12月26日 12時25分46秒

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    これにて大団円

     よかった、年内に連載が終わって。
     というわけで、「泉が銀色に輝く」これにて終了です。


     初めにこれを書いたとき――専門学校2年生だったんですけど――その時のタイトルは「泉が銀色(しろがね)に輝く時」でした。あの頃は漢字を古風に格好よく読むのが、自分の中の流行りだったんです。しょうもないでしょ? (^◇^)
     設定もかなり違っていまして、先ずシニアポネーとマリーターが親友じゃなかったり、ケレーンの実家はトロイア王家ではなく、その分家のユーリィ王家(後のローマ王家の始祖)だったり、エリスの性格がもっとあっさりしていました。
     どうしてこんなに設定が変わってしまったかと言えば、後にエリスを主人公にしたシリーズがどんどん描かれるようになって、エリスの人物像がはっきりしてきたからです。ケレーンの実家をトロイア王家にしたのも、エリスが人間界へ転生するために冥界へ入ったとき、まだトロイア戦争が起きると不味いかな? という理由からです。あの「トロイの木馬」で有名なトロイア戦争の発端を作ったのがエリスだったのですが、エリスにはその結末を見る前に冥界へ行く設定にしたかったのです。ユーリィ王家というのはトロイア戦争が決着してから出来た家系だったもので、ケレーンの設定をそのままにしておくわけにはいかなかったんです。

     でも昔とまったく変わっていない設定もあります。それはアルテミス・アポローン姉弟は、生まれや家柄に関係なく友達を作れる、という設定でした。
     ちょっといたずら心で、アルテミスとミレウーサを愛人関係にしてみようか? と思った時もあったんですが、その設定にしなくて良かったです、今思えば(*^。^*)


     ところで、深夜番組に「絶対にやれるギリシャ神話」って番組がありますよね。私は昨日たまたまテレビ雑誌を見て知ったんですが。どんな番組だろうと思って通称「ようつべ」で検索して見てみたんですね。そしたら.....
     「アルテミスはオーリーオーンと肉体関係は無いわ、ヴォケ!」
     と、つい突っ込みを入れちゃいそうになりました、ネットカフェで(^_^;) やっぱりそこは深夜番組なのね。
     まあ、間違った解釈をしているのは目をつぶるにしても、ギリシャ神話にエッチな話が多いのは認めます。特にゼウスがらみ。
     そうゆう話、読みたい人います? たまには書いてもいいですよ。エリスがらみの百合(レズ)ネタは飽きた、という方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。

     さて、新年の更新予定ですが、2日はさすがに更新できそうもないので、その翌週に行います。金曜日になるか、他の曜日になるかは未定です。その頃になったらまたお知らせします。

     それでは、よいお年を。

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  • from: エリスさん

    2008年12月26日 11時58分07秒

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    「泉が銀色に輝く・59」
     「お母様も、それでよろしいですか? 私、シニアと一緒に結婚式を挙げたいの」
     マリーターの言葉に、ヘーラーは笑顔でうなずいた。
     「そなたの望むとおりになさい。私もそれが一番いいと思いますよ」
     それからマリーターは、自分がシニアポネーにしてしまったことを、謝った。
     「ぼんやりとではあるけど、覚えているの。私、あなたにあんなことをしてしまうなんて……」
     そう言って涙をこぼすマリーターを、シニアポネーはしっかりと抱きしめた。
     「もうそんなこと、どうだっていいわ! 私はあなたの愛らしい笑顔が見られるようになって、宇宙まで登ってしまいそうに嬉しいのだから!」
     シニアポネーは、自分が本当は女神であった事実を公表しないことを願った。表向きはアポローンとメルクーターの間に生まれた「神に近い精霊」ということで(完全な精霊ということにしてしまうと、つい女神の力が出てしまったときに言い訳がつかないから、というヘーラーの判断による)、正式にアルテミスの従者を辞し、ヘーラーの側近と仕えることになった。住まいもエウボイア島に家を新築し、姉のミレウーサと行き来できるようにしたのである。
     ミレウーサとは、今まで通りこれからも姉妹だった。
     最後まで決着がつかなかったのはミレウーサだった。長年の信頼を裏切られ、冷たい言葉を浴びせられたミレウーサは、どうしてもアルテミスのもとへ戻る気にはなれなかった。かといって仕事もしないでブラブラしているわけにもいかず、しばらくするとシニアポネーと一緒にアルゴス社殿へ出仕するようになっていた。どんな雑用も自ら進んで働こうとするミレウーサを見たヘーラーが、このまま自分のところで引き取ってもいいか、と思い始めていた頃、アルテミスがとうとう我慢できずに、自身でミレウーサを迎えにきた。
     「お願い、ミレウーサ……私のもとに戻ってきて」
     涙ながらに訴えるアルテミスに、ミレウーサは背を向けたまま、こう言った。
     「私はね、アルテミス。シニアポネーが自分とは血がつながっていないって気づいてた。多分、あなたの子じゃないかってことも」
     「そう……気づいていたの」
     当然ね、とアルテミスは思った。自分の一番身近にいた人物である。気付かない方がどうかしている。
     「でも、そんなことどうでも良かった。私にとってシニアは大切な妹で、宝物なのよ。赤ん坊のころから舌っ足らずな口で、姉さん、姉さんって甘えて抱きついてくるあの子が可愛くて、愛しくて……この子が幸せになるためなら、私、なんでも出来る。我が身を犠牲にしたって惜しくないって、そう思えるぐらい可愛がってきた妹なの。それなのに……自ら親友だと――主従も生まれも関係ない、私たちは親友だと、そう言ってくれたあなたが、よりにもよって私のシニアを傷つけようとした! それは絶対に許されないことよ。分かってるんでしょ!」
     「ごめんなさい……」
     後悔に打ちひしがれ、土下座するアルテミスを見て、ミレウーサもとうとう、相手の方を向いて話す気になった。
     「だからね、決めたわ。アルテミス……今度あなたが私を裏切ったら、私、死ぬことにするわ。これ以上あなたを嫌いになりたくないから」
     するとアルテミスは何度も頷いて、ミレウーサの手を取った。
     「死なせないわ、絶対。ずっとあなたは私の傍にいるのよ」
     アルテミスの鹿車に同乗して帰っていくミレウーサを見送って、一安心したヘーラーもオリュンポスの本邸へと帰ってきた。
     「すべて済んだか?」
     ゼウスは久しぶりに見る妻の顔に、表情を和らげた。
     「はい。今回は慈悲のあるお裁き、ありがとうございました」
     「慈悲深いのはそなたの方であろう、ヘーラー。アルテミスに、いつでもカナトスの泉を使っていいと、許可を出したそうじゃないか」
     「はい。彼女の悲しみを知ってしまったら、もう愛人の娘だからと邪険にできなくなってしまいまして……。いずれ、アルテミスに想う殿御(とのご)が現れたら、結婚を認めてあげましょう、あなた。その方がいいのですから」
     後に、アルテミスはエンデュミオンという青年と出会い、恋に落ちる。けれど今度はアポローンに知られて邪魔をされないように、彼の夢の中へ入り込んで逢瀬を重ねることにした。そしてエンデュミオンの寿命が尽きてからも、今度は彼がアルテミスの夢の世界の住人となることで、二人の恋は今も、永遠に続いていくのである。
     そして、シニアポネーは月満ちて、女児を出産した。その子はエデュウムテミスと名付けられ、成人するとさる王族に嫁ぎ、姫君を儲けた。この姫君・プシューケーこそが、後にエロース男神の妻になるのだが、それはまた別の物語で……。



                                 完

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  • from: エリスさん

    2008年12月19日 14時24分42秒

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    「泉が銀色に輝く・58」
              最 終 章


     ゼウスの前でいろいろと裁かれたアルテミスとアポローン姉弟だったが、結局お咎めなしということになった。
     もちろん、アルテミスはマリーターに掛けた術を解くことになった。
     アルゴス社殿のマリーターの部屋で、それは行われた。その間、ヘーラーと娘たちは、隣室でまだかまだかと、イライラしながら終わるのを待っていた。
     「誰にも解けぬと思ったら」と、ヘーベーは口を開いた。「何重にも重ねた術だったのね」
     「アルテミスに聞いたら、三時間ぐらいかけたそうだ」
     と、エリスは言うと、盃に口を付けた……が、すでに空になっていたのに、それにも気付かないほど、心ここにあらずだった。
     するとエイレイテュイアは、深いため息をついた。
     「そんなことをするぐらいなら、私に相談してくれれば良かったのよ。あのときのように、助けてあげられたのに……」
     その時だった。
     「あの方も悩んでいらしたのです、お姉様。こんなことをする前に、あなたに打ち明けるべきではないのかと」
     そう言いながら、部屋に入ってきた者がいた。――なんと、記憶と理性を取り戻したマリーターが、チャームポイントの愛らしい笑顔でそこにいたのである。
     「おお、マリーター!」
     すぐさまヘーラーが駆け寄り、きつく抱き締めた。「そなた、元に戻ったのだな。私のことも、皆のことも分かるのだな?」
     「はい、お母様。エイレイテュイアお姉様に、ヘーベーお姉様、そしてエリスお姉様!」
     マリーターは皆の顔を見ながら、順々に名前を呼んでいった。そして呼ばれた方もその都度、妹のそばへと駆け寄る。
     「お母様、すみませんが、今すぐ会いたい人がいるのです」
     マリーターに言われて、ヘーラーは娘から体を離して、
     「おお、そうでした」と、目じりの涙を拭った。
     「ヘーベー、ティートロースを呼んできなさい。広間でアレースたちと待っているから」(男神たちはなにかと邪魔になるからと、別室で待たされていた)
     するとマリーターが「いいえ、待って」と、行きかけていたヘーベーを止めた。
     「ティートにも会いたいけど、今はそれよりも、やらなければいけないことがあるのです。お願い、ヘーベーお姉様。私の親友を……ここに来ているのでしょ?」
     「ええ、彼女ね。分かったわ」
     ヘーベーは微笑み返すと、廊下を小走りで去って行った。
     そしてマリーターは、エリスが手に持っていた盃に触れた。
     「貸して、お姉様」
     「ん? ああ……空だよ?」
     「ええ、だからよ」
     マリーターはその盃を受け取ると、自分の部屋へ戻って行った。皆もついて行くと、そこには術を解き終わったがために貧血を起こしてアルテミスが倒れていた。
     あわててエイレイテュイアが抱き起している間に、マリーターは盃を両手で持って、呪文を唱えた。すると、盃の底から銀色に光る水が湧いてきて、満ち溢れた。
     精霊として生きていた年月が長かったのであまり知られていないが、マリーターは本来、水を操る女神なのである。
     その水をマリーターが飲ませてやると、アルテミスは意識を取り戻した。
     シニアポネーがヘーベーに連れられて入ってきたのは、そんなときだった。
     マリーターはアルテミスの肩に手を置きながら身をかがめると、こう言った。
     「我が異母姉にして、親友・シニアポネーの御母君、アルテミス様。もう、あなたのしたことを咎めたりは致しません。その代わり、お願いがあります」
     マリーターはシニアポネーの方を振り返って、微笑を投げてから言った。
     「シニアポネーのための、花嫁衣裳を縫ってください」
     それを聞いて、驚いたのはアルテミスだった。
     「あなた、正気を失っていた間のことを、覚えているの!?」
     「ええ、少しだけ。でも、シニアポネーのことは、あなたが私にかかった術を解いてくれている間に、あなたの記憶が流れてきて、知ることができました。……アルテミス様はね、シニア。本当に後悔しておいでよ。あなたにしてしまった事、なにもかもを……そして、苦しんでいたの。愛したくても愛せない、そんな切なさに苛まれて。だから……」
     マリーターは立ち上がると、シニアポネーを真っ直ぐに見詰めた。
     「許してあげましょう、あなたのお母様のことを」
     「ええ、マリーター。もう許しているわ。いいえ、憎んでもいないのよ。初めから、アルテミス様のことだけは憎めなかった。それはきっと、無意識にも分かっていたのね。この方こそが、私に血を分けてくれた母だと」
     「それじゃ、アルテミスが花嫁衣裳を縫ってくれたら、喜んで受け取るわね」
     「ええ。あなたがヘーラー様から贈られた花嫁衣裳を喜んだ時のように!」
     「じゃあ、アルテミス様が花嫁衣裳を縫い終わったらすぐに、私たち、一緒に結婚式を挙げましょう!」
     そして再びアルテミスの方を向いたマリーターは、「よろしいですね?」と念を押した。
     「ええ。心を込めて縫わせていただきます」

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  • from: エリスさん

    2008年12月19日 13時44分41秒

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    「泉が銀色に輝く・57」
     二人の姿を見て、アテーナーは言った。
     「こういうことなのですよ、アポローン。あなたも分かっていたでしょう? 愛する者同士が結婚する。片方だけの思いを成就させても、結局は不幸になるだけなのです。また、秩序の点から言っても、今はもう親と子が結婚しなければ天地創造がなされなかった時代ではありません。つまり、どんなに愛していても、父親が娘を組み敷くなど以ての外!! そのようなことをしたら、たとえ神でもただではおかぬと心得よ!!」
     斎王としての言葉に気迫負けしたアポローンは、その場に崩れ落ちた。
     そんな彼に、ヘーラーは優しく声をかけた。
     「それに、そなたはケレーンを殺せなかった。それが、己自身で出した答えなのではないのか?」
     その言葉に、ケレーンはアポローンを見た。
     アポローンもケレーンを見つめて、涙を流した。
     「……許してくれ」
     「君様……」
     「愚かなわたしを、許してくれ……」
     アポローンが地に手をついて謝る姿を見て、ケレーンはシニアポネーを離した。ケレーンが目で語ってくることを察したシニアポネーは、微笑み返すことでそれに応えた。
     そして二人で、アポローンの前に行き、跪いた。
     「君様。今までのご無礼、お許しください」
     ケレーンの言葉に、アポローンは喜びの声を上げた。
     「わたしを、許してくれるか、ケレーン」
     「もちろん……わたし達の願いをお聞き届けくださいますなら」
     「おお、願いとは? なんでも言ってくれ」
     「では、彼女の口から……」
     その言葉で、アポローンはシニアポネーの方を向いた。
     シニアポネーは優しく微笑んで、こう言った。
     「お父様……私たちの結婚をお許しください」
     アポローンはその言葉で、彼女――娘にも許されたことを知り、何度もうなずきながら、長い腕で二人とも抱きしめた。
     「……我が娘と、その婿に、祝福を……」
     この瞬間、アポローンは今までの苦しみから解放されたのだった。
     それは、アルテミスにとっても……。



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  • from: エリスさん

    2008年12月11日 17時51分04秒

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    「泉が銀色に輝く・56」
     しばらくにらみ合いが続いた。
     その間、シニアポネーが目を覚ました。
     「……ここは……」
     「シニア! 気がついたか!」
     「エリス様。私は、いったい……」
     そしてシニアポネーは目の前で起きている光景に、驚いた。ケレーンが、アポローンと剣を交えている。アポローンの剣圧に押されながらも、必死に食い止めている。
     「あなた!!」
     シニアポネーが今にも駆け寄ろうとするのを、エリスは制した。
     「良く見ておけ。ケレーンは、必死に戦っているのだ。勝てぬと分かっていても、そなたを奪われないように」
     「そんな、私のために、敬愛してやまない主君に剣を向けるなんて……」
     確かに力量は歴然としていた。どんなにアポローンが手加減をしても、武術などやったこともないケレーンに勝てるわけがない。そしてとうとう、ケレーンは剣を弾き飛ばされてしまった。
     もはやこれまで、とケレーンは目をつぶった。
     ……だが、アポローンの剣は、ケレーンの頭上で止まっていた。
     斬れない――斬れるはずがない。
     何故なら……。
     「そこまでです、アポローン!」
     その声に、皆が空を見上げた。
     ヘーラーの馬車が、アテーナー、アルテミス、そしてエイレイテュイアを乗せて飛んできたのである。
     「この話は反故だ、アポローン。シニアポネーは返してもらうぞ」
     ヘーラーが言うと、アポローンは反発した。
     「あなたにそんな権利はない!」
     なので、アルテミスが言った。
     「私がそうするのです、アポローン。姉として命令します。あなたとシニアポネーの結婚は許しません。何故なら、あなた達は実の親子だからです」
     「姉上! 血迷われたのか!」
     「そして、シニアポネーの本当の母親は、この私です」
     思ってもみないことで、シニアポネーは驚きを隠せなかった。
     「私の両親が、アルテミス様とアポローン様? 私は、実の父親と……」
     シニアポネーの全身を恐怖が走ろうとするのを、エリスは必死に抱きしめた。
     「大丈夫だ、シニア。まだ未遂だ! そなたは正真正銘、ケレーンの妻だ!」
     それでもシニアポネーの恐怖は止まらず、ケレーンに手を伸ばした。
     「あなた! ケレーン!」
     ケレーンは駆け寄ると、エリスに代わってシニアポネーを抱きしめた。それでようやく、シニアポネーの恐怖が狂気に変わることはなくなった。

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  • from: エリスさん

    2008年12月11日 15時35分31秒

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    「泉が銀色に輝く・55」
     「シニア!!」
     二人は同時に叫んだが、ケレーンはアポローンの姿を見て動けず、エリスだけが駆け寄った。そして、シニアポネーの体を確かめて、まだ何もされていないことを確信する。エリスがそのことを告げると、ケレーンはアポローンの前に跪いた。
     「君様……お願いです。シニアポネーのことはお諦めください」
     そんなケレーンの態度に、エリスは、
     「この期に及んで、まだ礼節を尽くすのか、ケレーン!」
     と、怒鳴った。
     「お願いにございます、君様!!」
     すると、アポローンは言った。
     「……いいだろう」
     「君様!」
     「そのかわり、わたしに勝てたらだ!」
     突然、空間がねじれた。アポローンが神力を使ったのだ。
     次の瞬間、全員が外へ出ていた。すぐ傍は海に続く崖である。
     「わたしと勝負しろ、ケレーン。勝てたら、あの娘のことは諦めてやる」
     そう言って、アポローンは剣を言霊で召喚した。そしてエリスに向かい、
     「エリス、おまえの自慢の剣を、ケレーンに貸してやってくれ」
     「正気で言っているのか、アポローン!」
     「もちろんだ。好きな女なら、奪ってみせろ!」
     「力量を考えろ! 貴様は男神、彼は人間だぞ! 適うはずがない!」
     だが、二人の会話を黙って聞いていたケレーンは、すっと立ち上がると、エリスのもとへ行った。
     「剣を、お貸しくださいませ」
     彼の決意を感じたエリスは、シニアポネーをその場に寝かせると、愛剣・ディスコルディアを左手に持ち替えた。そして柄(つか)に埋め込まれている六角形の黒水晶に右手を添えて「離れよ」と言霊を掛けてやり、それを引き離す。そしてエリスは胸元を開くと、柄から引き離した黒水晶を自身の胸の谷間に埋め込んだ。
     埋め込まれた黒水晶が、一瞬光ったのを確認してから、エリスは胸元を閉じて、ディスコルディアをケレーンに差し出した。
     「これで、そなたでも使える」
     「ありがとうございます」
     ケレーンはディスコルディアを両手で持つと、アポローンと対峙した。

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  • from: エリスさん

    2008年12月11日 15時03分19秒

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    年末年始に向けて

     私もそうだろうけど、読者の皆さんも忙しいと思いします。
     なるべくは休載しないようにがんばりますが、更新日が他の曜日にズレたり、更新量が極端に少なくなっても、許してくださいね。

     だって私は主婦(死んだ母の代わりに主婦業を引き継ぎました)で、映画館スタッフでもあるんですもの。
     あっ、皆さんは「WALL・E」はもう見ました? かなりいいですよ――ゆえに、映画館は混雑すること必至。スタッフは人手不足で貧血寸前で仕事する始末(^_^; これを解消するためには、一人ひとりの出勤日数を増やすしかないという...。

     はい、言い訳ですね。でも言い訳ぐらい言わせてくださいな。
     だって本当に遊んでるわけでも、ぐうたらしてる訳でもないんですから。それでも休載しなければならない事情を、せめて分かってください。

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    2008年12月10日 10時55分28秒

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    予定変更

     今週は明日更新します!

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    2008年12月05日 15時14分45秒

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    「泉が銀色に輝く・54」
     それでもアテーナーは、説得を続けた。
     「でもあなたは、アポローンを弟として慈(いつく)しんだ日々を、忘れることもできないのでしょう?」
     そして、アルテミスの両手を取って、アテーナーは自分の額をそれに当てた。
     「お姉様?」
     「感じ取って。私の生まれる前の記憶を、見せるから……」
     アテーナーは、ゼウスの胎内で彷徨い続けた恐怖と苦しみを、アルテミスに送った。
     身体中にまとわりつく、ネットリと生暖かい血液の感触。何も見えない、狭くて長い道を、必死に這って行った苦しみを、アルテミスは感じ取って、失神しそうになった。
     「気をしっかりと持てッ」とヘーラーが言った。「その苦しみは、アテーナーが実際に味わったものです。六年間も」
     「六年間!?」
     「そして今……」と、アテーナーは顔を上げた。「シニアポネーの胎児も、同じ苦しみを味わおうとしている」
     「シニアの? シニアは、懐妊しているのですか!?」
     アルテミスの問いに、誰もがうなずいた。
     「自分が、どれほどの罪を犯そうとしているか、理解できましたか?」
     ヘーラーに言われて、アルテミスはとうとう泣き崩れた……。



     薬物で眠らされたシニアポネーは、まだしばらく目覚めそうになかった。
     今なら、躊躇わずにできる。事が済んでしまえば、もうこの娘はケレーンのもとへは戻れなくなるのだ――と、アポローンは考えていたが、それでもなかなか手が出せずにいた。
     自分の血を分けた娘だからか?――違う。そんなこと、神族なら罪にはならない。
     眠っている女に手を出すのは、男の美学に反するからか?――それも違う。自分は男神なのだ。なにをしても許される。
     ならば、なぜ躊躇う?
     アポローンは意を決して、シニアポネーの上に覆いかぶさった。そして、彼女の腰帯を取ろうとして、指に何か刺さった。
     フィビュラだった。腰帯の内側に隠すように留められていたのだ。そのフィビュラのデザインを見て、気付く。
     『わたしがケレーンに下賜した物か……』
     アポローンは手を離して、寝台から降りた。
     『そうだ。この子がおまえの恋人だからだ、ケレーン!!』
     それにアポローンは気付いていた。シニアポネーがケレーンの子を宿していることを。もし自分がシニアポネーに襲いかかれば、自分は、自分の孫であり親友の子でもある胎児を流してしまうかもしれない。
     それがすべてを躊躇わせていた。
     『何故おまえなんだ。シニアポネーが愛した男が、おまえでさえなかったら!!』
     その時だった。誰かが外側から扉を真っ二つに斬って、押し入ってきたのは。
     エリスとケレーンだった。

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