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from: エリスさん
2009年07月31日 13時56分43秒
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「ヘーラクレースの冒険・7」
「しかしそれは彼女の落ち度ではない! そうではありませんか? 王妃様。彼女が自分からわたし以外の男を受け入れるような
、そんな女ではないことは、わたしが一番知っています! だからこそ、彼女は今この場で自決しようとしたのです」
その言葉にエウリュディケーもうなずいた。
「その通りです。アルクメネーは被害者以外のなにものでもありません。ではあなたは、彼女を汚された者とは見なさず、これからも愛して行けると言うのですね」
「もちろんです。わたしの妻は、アルクメネー以外に考えられない!」
「では今すぐにその証を!」
エウリュディケーは寝台から、血で汚れたシーツだけを剥ぎ取った。
「アルクメネーから汚された事実を消し去り、今この場で神聖な結婚をなさい。それが彼女を救うことになるのです」
そしてエウリュディケーは二人のそばに歩み寄り、アルクメネーだけを抱きしめた。
「良いですね、アルクメネー。あなたはアンピトリュオーンの手によって清められるのです。なにも恐れることはありません」
「王妃様……」
そうしてエウリュディケーは部屋から出て行き、二人はエウリュディケーの言いつけ通りすぐに夫婦の契りを交わしたのである。
すべてのことがひと段落ついたのは、昼ぐらいになってからだった。
アルクメネーの寝室もすっかりと片付けられ、落ち着いたところで、クレオーンとエウリュディケーも交えてアンピトリュオーンは昨夜のことを聞いた。
話を聞いて彼は嘆くどころか、喜んで見せた。
「ゼウス様にお恵みを頂けたのなら、何を悲しむことがある! しかも汚れとして見るなんて、なんて罰当たりなことを!」
アンピトリュオーンの言葉にクレオーンも同意した。
「ゼウス様の御手がついたのなら、確実に御子を授かっているはず。それは一族にとって誉れではないか! それなのにエウリュディケーもアルクメネー殿も、そのように悲しんでいるなど不遜もいいところだ。神の怒りを買ったらどうする!」
すると「あなたッ」とエウリュディケーがクレオーンを睨みつけた。「神とは言え、結婚前の女人が見ず知らずの男に辱められるなど、死ぬよりも辛いことなのです。それがどうして男には分らぬのですか」
「信仰心の問題だ。神々がなさることは何事も有難い、という教えからくるのだ。それがどうして女には分らぬのだ?」
「それは貞節心の問題です。王后神ヘーラー様が説く有難い教えです」
「ではこの場合、ヘーラー様よりも上位であるゼウス様の教えに従うことにしようではないか。そうすれば何事もうまく納まる」
確かに……と、エウリュディケーも内心思った。このままアルクメネーを(清めた、ということにしたとは言え)疵者(きずもの)扱いし続けるよりは、神の恵みを頂いた者として崇めていく方のがいいに決まっている。――だとしたら、残る問題は一つだけである。
「神の御手がついた者は必ず身ごもる……アルクメネーは遠からず、ゼウス様の子を産むことになります。そうなったとき、アンピトリュオーン、あなたは……」
「皆まで言わずとも……」と、アンピトリュオーンは言った。「お胤はゼウス様であっても、アルクメネーの腹から生まれてくる子は、すべてわたしの子です。そう思って大切に育てます」
――この言葉を、ゼウスも天上で聞いていた。
「なかなか殊勝なことを。その信仰心の厚さにわしも応えてやらねばなるまい」
そしてゼウスはオリュンポスの神々の前で宣言したのであった。
「この次に生まれるペルセウスの子孫が、ペルセウス一族の長になるであろう!」icon
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from: エリスさん
2009年07月31日 12時09分48秒
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「ヘーラクレースの冒険・6」
戦地から帰ってきたアンピトリュオーンは、すぐさまアルクメネーのもとへ向かおうとしたが、先ずは世話になっているクレオーン王に帰還の報告をするのが先だろうと思い直し、王の側近に取り次ぎを願った――ちょうどその時、クレオーンが城の奥から出てきて、アンピトリュオーンを呼んだ。
「わしへの挨拶などどうでもよい! すぐにアルクメネーのもとへ行ってあげなさい」
そのただならぬ様子から、なにかあったことを察したアンピトリュオーンは、すぐさま恋人の部屋へと走って行った。
そして、部屋の中の異様な光景に足がすくんだアンピトリュオーンナに、先ず声をかけたのはエウリュディケーだった。
「ご無事のご帰還、なによりでございます、アンピトリュオーン殿。しかしながら……奥方をお預かりしておきながら、このような不始末。私どもとしましては面目次第もございません」
「いったい……いったい何が……」
アンピトリュオーンが、それでも中へ入ろうとした時だった。
「待って!」
と、アルクメネーが叫んだ。「あなたが、本当にアンピトリュオーンである証を見せて。昨夜のように、また偽物が来たのかもしれないわ。私を騙すために!」
「偽物? わたしの偽物が出たのか? そいつが、そなたに不埒な真似を……」
「そうよ! だから証を見せて! 私しか知らない、あなたがアンピトリュオーンである証を!」
それを聞いてアンピトリュオーンは頬を赤らめたが、意を決して言った。
「王妃様、お見苦しいものをお見せすることになりますが、ご容赦くださりませ」
アンピトリュオーンはまず左肩のフィビュラ(留め具)を外して左肩を露わにし、続いて服の裾をめくって左足の付け根の、それも内側にあたるところを開いて見せた。
その両方に、くっきりと傷跡があった。
「これはわたしが七歳、そなたが五歳の時に、森で野犬に出会って、そなたを助けるために咬まれ、引っかかれた傷だ。場所が場所なだけに、この足の傷を知っているのは両親と、そして事件の当事者だったそなたしか知らない」
その言葉と、確かに見せてもらった証のおかげで、アルクメネーは安堵の涙をこぼした。
「ああ、あなた……間違いなくあなただわ! 最後にあなたに会えて、これで何も思い残すことはない」
アルクメネーはそう言うと、窓まで行き、身を投げようとした。
「待て!」
咄嗟にアンピトリュオーンが引き止め、事なきを得たが、そんな彼にエウリュディケーが言った。
「後悔はなさいませんか? 彼女は、他の男に手ごめにされているのですぞ」icon
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from: エリスさん
2009年07月28日 18時15分58秒
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祝! 30万アクセス!
とうとう来ました!
この「神話読書会〜女神さまがみてる〜」の、創立からのアクセス数が30万を超えました!
これも皆様のおかげです。ありがとうございます!!-
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from: エリスさん
2009年07月24日 13時26分33秒
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「ヘーラクレースの冒険・5」
天上の雲の隙間から、地上を見下ろしていたゼウスは、偶然なのか必然なのかその娘を見つけてしまった。
「アルクメネーというのか。ペルセウスの孫にあたるのなら、わしの血を引いて美しいのは当然だ」
良いことはなんでも自分のおかげ――実にゼウスらしい考え方である。そして……。
「あの者に栄光を与えてやらねばなるまい。そうすれば、ペルセウスの一族はますます繁栄するはずだ」
この考え方もまさにゼウス流だった。
そしてゼウスはある夜、アルクメネーの愛するアンピトリュオーンに化けて、彼女の部屋にやってきた。
「帰ってきたぞ、アルクメネー! 無事に宿願を果たして、ようやく帰ってきたのだ!」
「まあ! アンピトリュオーン!」
何の先触れもなく帰ってきた婚約者にびっくりしながらも、アルクメネーは嬉しさでいっぱいになってしまった。
それでも念のために聞いたのだった。
「他の兵士の皆さんは? 大勢で帰ってきたのなら、城の中にいても話し声とかで分かるはずだわ」
「まだ皆は国境にいるよ。一刻も早くそなたに会いたくて、馬を走らせて一人だけ先に帰ってきたんだ」
「まあ! そうだったのね!」
これだけでアルクメネーが信用してしまったのも無理はない。それだけゼウスの化けたアンピトリュオーンはそっくりで、その上アルクメネー自身も恋人に早く会いたい気持ちが募りすぎていたのだ。
だからこそ、「いますぐ結婚しよう」というゼウスの言葉にも、拒むことすらしなかったのである。
だが……ゼウスが服を脱いだ時、アルクメネーは彼が別人であることを知った。
「傷がない……」
アルクメネーの言葉に、ゼウスはハッとした。
「アンピトリュオーンの左肩には、私が野犬に襲われそうになったとき、私を庇って受けた噛み傷があるのに! あなたはいったい誰!?」
ゼウスはそれを聞くと、溜息をついた。
「やれやれ、わしとしたことが。とんだ失敗をしたものだ」
そうしてゼウスは正体を現すと、恐怖におののいているアルクメネーを捕らえて、寝台に押し倒した。
「わしこそがおまえの先祖、神々の王ゼウスだ。おまえに我が恵みを与えてやる。光栄に思うように」
アルクメネーが悲鳴を上げるのも構わず、ゼウスは思いのままに彼女を貪りの始めた。
アルクメネーのただならぬ声を聞きつけて、数人の兵士たちが駆けつけてきたが、部屋の外でゼウスの雷電を受けて気絶してしまい、城の中にいた他の人々も、ゼウスの力で深い眠りに就かされてしまった。――そのため、アルクメネーはただ一人、このおぞましい行為に耐えなければならなかったのである。
ゼウスが満足して帰ったのは、暁の女神が東の空から顔を出したころだった。
ゼウスが帰った途端に術が解けたのは、王妃のエウリュディケーだった。
「確かに聞いたわ、誰かの悲鳴の声を……」
エウリュディケーは夜着のまま着替えもせずに、悲鳴がした方へと足を急がせた。途中、昨夜は他の妻の部屋に泊まっていたクレオーン王と出会い、数人の侍女たちも起きだしてきたので、エウリュディケーは昨夜の悲鳴の話を皆に聞いた。
「私も聞きました! でもおかしなことに、その直後に眠くなってしまって……」
と、侍女の一人が言った。「あの声は、アルクメネー様だと思うのですが」
エウリュディケーもそう確信し、皆でアルクメネーの部屋へと行くと、案の定、部屋の前には黒こげになった兵士たちが転がっていた。
「オイ! おまえ達!」
クレオーンは兵士たちを一人一人ゆすり起こした……表面的には黒こげだが、命に別状はないようだった。
その間、アルクメネーの部屋の中に真っ先に入ったのは、エウリュディケーだった。
彼女は、その惨状ですべてを見通した。
クレオーンも中に入ってこようとしたので、エウリュディケーは右腕をスッと横に出して、夫の侵入を防いだ。
「男どもは全員下がっておれ!」
エウリュディケーの一喝に、兵士たちだけでなくクレオーンも驚いた。
「ど、どうしたのだ?」
「ここは私にお任せください、アルクメネーのためにも」
「そ、そうか……」
クレオーンは数人の侍女だけを残して、他の者たちをその場から離したのだった。
そして……エウリュディケーは寝台で泣き伏しているアルクメネーのそばに歩み寄った。
引き裂かれた衣服に、血で汚されたシーツ……これだけ見れば、誰でも見当がつく。
「誰にやられたのです?」
エウリュディケーが聞くと、涙声ながらもアルクメネーは答えた。
「神々の王ゼウス……だと、その男は言っていました」
「ゼウス様? まことに、かのゼウス神王だったのですか?」
「わかりません……初めはアンピトリュオーンに瓜二つだったのです。だから私も騙されて……」
「アンピトリュオーンに瓜二つ――そなたでも見分けがつかないぐらいそっくりに、化けていたと。確かにそれは人間業ではありませんね」
「でも、アンピトリュオーンの体には絶対になくてはならないものがあって、昨夜の男にはそれがないと気付いて、そのことを言ったら、一瞬で顔が変わって、正体を現したのです」
「間違いありませんね、それは人間ではない。神だからこそできる業(わざ)ですよ」
「どうしよう、私……もうあの人の――アンピトリュオーンの妻になれない」
「そうね……夫にこそ捧げるべき純潔を、あなたは他の男に奪われてしまったのだから。だったら……」
エウリュディケーはアルクメネーの肩を掴むと、自分の方へ向かせた。
「それが分かっていたなら! なぜ汚される前に自ら命を絶たなかったのです! それが女の貞節ではありませんか!!」
するとアルクメネーは目にいっぱいの涙を溜めて、言った。
「死にたくなかったのです。あの人に、アンピトリュオーンにもう一度会いたかった! あの人と再会できるまでは、生きていたかったのです」
それを聞き、エウリュディケーはアルクメネーを力いっぱい抱きしめた。
「ごめんなさい、そうよね。愛する人に会う前に死にたくなんかないわよね。ごめんなさい、あなたの気持ちも考えずに……」
「王妃様……」
その時だった。城の外から、人のざわめきや馬の嘶(いなな)きが聞こえてきた。
「申し上げます!」
遠くの方で誰かが叫んでいた。
「アンピトリュオーン王子と精鋭軍の皆様が、御帰還あそばされました!」icon
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from: エリスさん
2009年07月17日 14時58分18秒
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「ヘーラクレースの冒険・4」
第二章 事の起こり
かの英雄ペルセウスには五人の子供がいたと言われている。
ペルセウスはミュケーナイとティリュンスという都市を統治していて、そのうちミュケーナイを長男のエレクトリュオーンに継がせ、二男のステネロスにはティリュンスを継がせた。また、三男のペルセスは、母・アンドロメダーの故国エチオピア王家に後継がいなかったことから(一人娘のアンドロメダーをペルセウスに嫁がせたため)、エチオピア王家を継がせるために養子に出したのだった。
長女のゴルゴポネーのことはあまり詳しく語られていない。おそらく長女という立場から、神殿の巫女として生涯を終えたのだろう。
残る四男のアルカイオスも多くは語られていないが、その息子のアンピトリュオーンは勇猛果敢な王子として名を残している。このアンピトリュオーンはエレクトリュオーンの娘・アルクメネーと婚約していた。従兄妹同士の婚約であったが、誰が見ても羨ましいほどの仲睦まじさだった。
そのころミュケーナイはタポス島との間で戦争が続いていた。戦争の理由は「牛の所有権を巡って」のことだった。ミュケーナイ王のエレクトリュオーンはこの戦争で八人の息子を失っていた。
今度こそ勝利を! と勇んで戦いに出たエレクトリュオーンは、なんと運の悪いことに、娘の婚約者であるアンピトリュオーンが敵を撃墜するために投げた棍棒に当たって、死んでしまった。
不可抗力とは言え、王を殺してしまった罪は重く、エレクトリュオーンの弟であるステネロス(ティリュンスの王)はアンピトリュオーンを国外追放の刑に処した。(そしてステネロスはミュケーナイとティリュンスの両方の王になった)
こうしてアンピトリュオーンは、婚約者のアルクメネーも連れて国を出て、テーバイ王国に身を寄せることになったのである。
テーバイの王・クレオーンと、その正妃エウリュディケーは、二人を快く受け入れてくれた。
「聞けば、エレクトリュオーン王を死なせてしまったのは事故だったそうではないか。あなたに罪があるとは思えない。どうぞここでは客人として、いえもう、自分の故郷のつもりで過ごしてくだされ」
クレオーンの優しい言葉に、アンピトリュオーンとアルクメネーはようやく心を落ち着かせることができたのだった。
するとエウリュディケー王妃も言った。
「そうですとも。よろしければ私たちが親代わりになりますから、結婚式もこちらで挙げられるとよろしいわ」
しかしその言葉に、アンピトリュオーンが首を振った。
「事故とはいえ、わたしは彼女の父君を殺してしまいました。せめてもの報いに、タポスを打ち負かして、戦死したアルクメネーの兄弟たちの仇を取らなければ、彼女を妻として貰い受ける資格はありません」
「なるほど、その通りだ」とクレオーンは感服した。「では、この国で勇者を集いなされ。そしてタポスへ打って出て、みごと宿願を果たされるまで、アルクメネー殿はこちらでお預かりいたしましょう」
こうしてアンピトリュオーンはアルクメネーをテーバイに残して、タポスへ出陣したのである。
神王ゼウスがアルクメネーを目に留めたのは、こんな時であった。icon
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from: エリスさん
2009年07月17日 13時55分20秒
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ただいま夏休み興行中!
まだ夏休みには早いだろうと高をくくっていたら……この間の水曜日から「ハリーポッターと謎のプリンス」か公開されまして、それに合わせてうちの映画館も一時間早くオープンすることになってしまいました。
というわけで、毎度のことながら午前3時起床のエリスこと淮莉須部琉です。
まあ、仕事が休みの日は普通に5時に起きてますが(兄の木堀君ZO 兼 みなと岬の朝ご飯は作ってやらないといけないので)。
夏休みになると、このサークルプレイヤーにアクセスしてくれる非会員の読者さんも増えるので、それに合わせて私も更新回数を増やさなければいけないのに、一向に増えるどころか減る傾向にある。
理由は一つ――私が普段は映画館スタッフをしているから。夏休みの映画館は大忙しなんです。一時間早くオープンすることもそうですし。スタッフの大半は大学生のアルバイターで、世間一般は夏休みだというのに彼らは大学の都合でまだ夏休みに入れない――下手したら試験週間ということで出勤できず、仕方ないから主婦のパートの皆さん(私はここに含まれます、一応)やフリーターの皆さんでなんとか人数調整をし……おかげで週4の契約のはずが週5とかになってます。
あとはお客様には言えない裏事情なんかがあって、とにかく忙しくなってしまうので、もっとこのサークルを更新したいのに「出来なァい!」ともどかしく叫ぶ日々が続くと思います。
それでも読者の皆様には飽きられることのないように、精一杯がんばって書きますので、量が少なくても許してくださいm(_ _)m
ところで今朝、うちの兄に「今の連載の内容が難しくって……」とぼやいたところ、
「それでもあやちゃんはケータイ小説も始めたんだからさ、頑張らないと……」
などと言われました。???ケータイ小説って、このサークルのことかな?
「へ? ケータイ小説始めたんだろ? 文芸社の」
「いや、始めたというか、『罪ゆえに天駆け地に帰す』を携帯電話でもダウンロードできるように、モバイル化してもらっただけだよ」
「あっ、連載じゃないんだ」
「違うよ。私が連載してるのはサークルプレイヤーだけ!」
ちょっとした兄の勘違いが発覚したのでした(^。^)-
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from: エリスさん
2009年07月10日 14時00分09秒
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「ヘーラクレースの冒険・3」
エウリュステウスが自らを「ヘーラー女神のしもべ」というのには、訳がある。
というのも、ヘーラー女神はある誤算からエウリュステウスを病弱にしてしまった自分を悔み、彼の呼び掛けには必ず天上から降りてきて、直接彼と話すからである。
「アルケイデスが来たのであろう?」
ヘーラーの問いかけに、エウリュステウスは平伏したまま答えた。
「はい。わたしから試練を受けるようにとの神託が下ったそうですが、その試練をわたし一人で決めていいものかと悩みまして。なにしろこの裏には、ある方の思惑が隠れているように見受けられましたので」
「ある方――などと。はっきり、この女神ヘーラーの思惑と言えばよかろう」
「では、やはり……」
「考えてもみよ、エウリュス。あの者は、不倫の末に生まれた子供。この世の倫理を守るべき私が、そんな不埒を放っておいては、後の世にも示しがつかぬ」
「御意に。しかし、不倫をしていた彼の母親を責めるのは分かりますが、彼自身にはなんの罪もないと、わたしは思うのですが」
「ふむ、小賢しいことを言いおる」
と、言葉では叱ってみたが、ヘーラーの表情は怒ってはいなさそうだった。
「そなたの言いたいこともわかる。だが、不倫をした母親に直接制裁を加えるより、子供のほうに制裁を加えた方が、のちのち効果的なのだよ。女たちは、自分が倫理に背くことをすれば、自分だけでなく周りの人間が不幸になるのだ、ということを学び、自分は決してそんな愚かなことをすまいと心に決めるはずです」
「なるほど……今はそのための、小さな犠牲と言うことですか」
「まあ、そう思ってくれて構わぬ。それで……アルケイデスに与える試練だが」
「はっ」
「簡単にできるものを言いつけるではないぞ。あれは半分は神――人間の常識を超えた力を持っている。だから、普通ならばできるはずもない事を言いつけておやり。そうでなければ試練にならぬ」
「たとえば、どのような……」
「怪物退治など、どうであろう? 今まで誰も倒せなかった怪物が、この世にはたくさんいるでな」
「そうでございますね……では……」
エウリュステウスは思いつく限りの怪物から、これなら大丈夫そうなものを頭の中で選んで、言った。
「ネメラのライオンなど如何でしょう」
「ライオン? 私にはかなり手ぬるく感じるが」
「最初はわたしも、彼の実力を理解しておきたいですから。ライオンならば一度、彼は退治したことがあると聞いています。とは言え、ネメラのライオンはそう簡単に倒せる獣ではございません」
「よろしい、そなたに任せよう」
ヘーラー女神との謁見を終えて、エウリュステウスはすぐにアルケイデスのもとへ戻った。
「では御身に試練を与える、アルケイデス――いや、ヘーラクレースよ」
エウリュステウスの言葉に、アルケイデス――ヘーラクレースは再び跪いた。
「ネメラに棲むライオンを退治し、その皮を取ってくるのだ」
「畏まりました、エウリュステウス様」
こうして、ヘーラクレースの長い冒険が始まったのである。icon
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from: エリスさん
2009年07月10日 12時14分35秒
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「ヘーラクレースの冒険・2」
「わたしはこれまでに二度、自分が分らなくなったことがありました……」
アルケイデスはエウリュステウスに語りだした。
幼い頃、家庭教師からの折檻が耐えられず、ほんの少し殴り返すはずが、正気を失って過剰な暴力となってしまい、その家庭教師を殺してしまったこと。
そのことで羊飼いの家に里子に出され、その間はなんともなかったのだが、村の中を暴れまわるライオンを退治したことで、テーバイ王家に戻ることができ、妻も娶って幸せになっていた。
だが先日、また正気を失って、こともあろうに三人の子供たちを炉の中に放り投げてしまい、殺してしまったのだという。
「乱心されたのは」とエウリュウテウスは言った。「その二回だけなのですね?」
「はい。でもそのたった二回で、わたしはあまりにも多くのものを失いました……妻も、悲しみのあまり自害してしまいました」
「おお……」
エウリュステウスも天を仰いで嘆くしかなかった。
「それで、いったい何の罰でこんな不幸が訪れるのかと思い、デルポイのアポローン神殿にすがりましたところ、神託によれば、〈そなたには越えなければならない試練があるのだ〉と」
「それで、わたしに試練を与えてもらうように……と言われたのですね」
「はい。あと、名を改めるようにとも」
「名を?」
「はい。ヘーラクレース、と」
その言葉を聞いて、エウリュステウスは思い至った。
「ヘーラクレース……女神ヘーラーの栄光、という意味ですね。これはかの女神の皮肉だろうか?」
「は?」
「アルケイデス殿。あなたの本当の父はアンピトリュオーンではなく、神王ゼウスであることをご存知か?」
「はい、父からそのように聞いておりますが……まさか」
「にわかには信じられませんか。しかし、これらの事と、そしてわたしが崇拝している女神がゼウス神王の正妃であるヘーラー様であることから察するに……」
アルケイデスもそれを聞いて、ようやく合点がいったようだった。
「ヘーラー様からして見れば、夫の御落胤など可愛いはずがない。だからこそ、自分の忠実なしもべであるこのわたしから、試練を与えようとしているのかもしれない」
「そんな……わたしを不幸にしているのが女神様であるなら、それを乗り越えるなど、決して……」
アルケイデスが嘆き悲しんでいるのを見て、エウリュステウスは彼を強く抱き締めた。
「答えを急いではならない。駄目だと思っても、その試練を乗り越えて見せようという強さがあれば、道は必ず開けます!」
「陛下……」
そしてエウリュステウスは彼から手を離すと、立ち上がった。
「わたしもアルゴス神殿で神託を受けてきましょう。ヘーラー様の真意を確かめた上で、デルポイの神託の通りあなたに試練を与えるべきか決めます。それまで、しばらく待っていてください」
そう言って、エウリュステウスは謁見の間から出て、そのまますぐそばにあるアルゴス神殿へと赴いたのであった。icon
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from: エリスさん
2009年07月10日 11時36分33秒
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ヘーラクレースの冒険・1
第1章 神 託
その当時、アルゴスにあるミュケナイを統治していたのは、エウリュステウスという男だった。かの有名な英雄ペルセウスの孫にあたり、それなりに人望もある男だったが、体が弱いことだけが欠点だった。
だが彼は自身の病弱を親しい人間にしか知られないようにしていた。というのも、彼の病弱はある神の策略による誤算で、そのことについて彼がその神を恨んでいるのではないか……などという噂がチラッとでも流れないように努めるためでもあった。
そんな彼が二十五歳になったある日、一人の男が訪ねてきた。
「アルケイデス? それはわたしの従兄のアンピトリュオーンの息子の、あるアルケイデスのことか?」
知らせにきた側近にそう聞き返すと、
「そうです、エウリュステウス陛下。陛下がお生まれになったその半日後に生まれたという、あのアルケイデス王子です」
「ほう? その彼がまたなんの用事なのだ? まあ、会ってやるとするか」
噂では躾のために羊飼いとして修行し、その間に快活な心とたぐいまれな怪力を手に入れ、暴れるライオンを棍棒一つで退治したこともあるとか。なかなか面白そうな男のようだ――と思いながら対面してみると、エウリュステウスの前に跪(ひざまず)いたその男には、かなりの悲壮感が漂っていた。
「そなたがアンピトリュオーンの御子息か。父君は息災であられるか?」
エウリュステウスが声をかけると、アルケイデスは、
「はい、誠に……」
とあまり元気とは言えない声で返事をした。
「どうかされたのか? アルケイデス殿。御身はわたしと同じ日に生まれたのだから、当然わたしと同じ歳のはず。それなのに、まるで年寄りのように元気がない。テーバイからの長旅でまだお疲れなのかな?」
「いえ、そうゆうことでは……」
アルケイデスのただならぬ様子を察して、エウリュステウスは家臣たちを遠ざけて、二人だけで話すことにした。
先ずエウリュステウスは玉座から降り、アルケイデスの肩にそっと手を当てて、言った。
「アルケイデス殿、我等は同じペルセウスの血を受け継ぐ者。なにも遠慮はいりませぬ。さあ、話してください。御身がわたしを訪ねてきてくだされた訳を」
「はい……実は、デルポイのアポローン神殿で神託を受けてきたのです。罪を清めるために、ミュケナイのエウリュステウス王のもとに赴き、彼の与える試練を乗り越えるようにと」
「罪を清める? いったい、どんな罪を犯したというのです」
するとアルケイデスは涙ながらに告白した。
「子供たちを……わたしの子供たちを、この手で殺してしまったのです」-
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from: エリスさん
2009年07月03日 12時37分58秒
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というわけで!
「果たせない約束」これにて終了です。
予定よりも長くなってしまって、自分でもどうやて収拾をつけようか、大いに困りました。
だって当初の予定では、レシーナーが王子と結婚する話はなかったんですよ。そのまま年老いて、年老いる前にエリスと別れるために、一芝居打つ予定になっていたのに........予定は未定と良く似てますよね。
さて、次回作ですが。
映画館スタッフである私が、この作品から目を背けるわけにはいかんだろう! というわけで、
「アマルフィ 女神の報酬」
にちなんだ話を連載しようと思っていました.....。
思っていたんですが!
アマルフィ――ヘーラクレースの恋人で、彼女の死を悼んだヘーラクレースが彼女のための墓所を作った。それが都市となって、現在の「アマルフィ」になった。
と、いうことしか分らなかったんです。
そもそも、ヘーラクレースの冒険譚にアマルフィなる女性が出てこないんですよ。まったくもって謎の女性なんです、私にしたら。
ただですね、このアマルフィという都市はイタリアにあるということもあって、ギリシア神話には名前が出てこないだけで、ローマ神話だったら載っている可能性もあるんじゃないかと。
ギリシア神話とローマ神話は基は一緒のはずなのに、人名が変わってしまいます。たとえばゼウスは、ローマ神話では「ユーピテル」、ヘーラーは「ユーノー」と呼ばれています。このことを踏まえて調べて行けば、
ローマ神話では「アマルフィ」と呼ばれているが、ギリシア神話では「○○」
という人物が出てくるかもしれない。
そんなわけで、来週からは「ヘーラクレースの冒険」を、資料を調べながらゆっくり連載していこうと思います。
それでは、また!-
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