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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2009年09月29日 19時47分28秒

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    「Re:もうちょっとで治りそうです」
     病院でもらった薬が効いてきたのか、かなり良くなってきました。今日あたりから匂いも判別できるようになったし(鼻が詰まってると分かんないんだよね)
     仕事が休みの日は無理しないで、寝ているようにしていたんだけど……そうも言っていられないこともあったりで(ハイ、某サークルのことです)、具合悪いながらも戦ったのは、良かったのか悪かったのか?

     今は、まだ万全な体じゃないのにアナウンスの仕事を頑張ってきた自分にご褒美で、「KinKi you DVD」を見てます(o^o^o)
     光一くん、素敵すぎです! 30代には見えません!
     王子様サークルでご一緒だった皆様も、今頃これを見て感動してるんだろうな。
     ジャニオタじゃない人には、なんのこっちゃ? かもしれませんが、辛いときに大好きなアイドルを見るのは「癒し」になるんです。

     ああ、そうそう。昨日私が休んでる間に、マイケル・ジャクソンの前売り券がかなり売れたそうです。買いに来られた皆さん(数字にして3ケタ。全国だとどれぐらいいるんだ(@_@;))お仕事とかどうしたんですか? 休暇?

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  • from: エリスさん

    2009年09月25日 19時23分35秒

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    「Re:m(__)m」
    診断結果・鼻風邪

    本当にすみません、病弱で。

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  • from: エリスさん

    2009年09月25日 08時40分06秒

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    m(__)m

    シルバーウィークの激務が終わった途端、風邪なんだか、いつものアレルギー性鼻炎なんだか、よく分からない症状が出て、寝込んでました。
    今日は起きられるので、今から病院に行ってきます。
    場合によっては更新はお休みしますので、あしからずm(__)m

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  • from: エリスさん

    2009年09月18日 14時17分18秒

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    「ヘーラクレースの冒険・18」

     それから三日後のことだった。
     神殿の巫女から「ヘーラー女神が王様にお話があるそうです」という話を聞いて、エウリュステウスはすぐに神殿へと駆け付けた。
     エウリュステウスは神殿の中央に跪(ひざまず)くと、言った。
     「お待たせいたしました、我が女神」
     すると天井からヘーラー女神が降りてきた。
     「今日は具合が良さそうだな、エウリュステウス」
     「はい、おかげさまで」
     「ならば、今日のアルケイデス(ヘーラクレース)との対面も難なく済ませられよう」
     「今日? 彼が帰ってくるのですか?」
     「そうです。そのことで、そなたに話しておかなければならぬ。実は、あやつの甥のことなのだが……」


     ヘーラー女神が言ったとおり、エウリュステウスが神殿から戻ってくるとヘーラクレースとイオラーオスが帰ってきていた。テウスなど大喜びで、イオラーオスと抱き合っている。
     そしてヘーラクレースも得意満面の笑みで皆に囲まれていて……その人ごみの中でも、彼はすぐにエウリュステウスを見つけることができた。
     「王様! ただいま戻りましてございます」
     ネメアの獅子の鎧は汚れていること以外はまったく損傷がなく、それだけでこの鎧が役に立ったことを示している。一方、イオラーオスの「巻いただけの鎧」は案の定ひもが切れたのか、今は蔦の葉で巻きつけていた。
     『ヘーラー様のおっしゃっていた通り、このままだと……』
     エウリュステウスはそう思い、とりあえずヘーラクレースを謁見の間まで来させた。
     「そなたに聞かねばならないことがある。まず、どうやってレルネーのヒュドラーを退治したのかを教えてくれ」
     「はい、王様。まずレルネーに行きましたところ……」
     九本の頭を持つ水蛇の妖怪は、夜になるとすぐに現れた。
     先ずは試しに一番右端の首を切り落としたところ、その切り口から今度は二本の頭が生えてきた(ここで十本の頭になる)。
     言い伝えが本当であることがわかったヘーラクレースは、だったらと今度は左端の首に抱きついて、絞め殺そうとした。だが、ネメアの獅子のようにはうまくいかず、ヒュドラーの尾がまといついてきて、はがされてしまう。
     その様子を遠くで見ていたイオラーオスは、一計を思いついて、大きくて枯れた木の枝を探し出し、それに火をつけて持ってきた。
     「伯父様! これで切り口を焼いてしまえば!」
     ヘーラクレースがヒュドラーの首を一本ずつ切り落としていき、その切り口をイオラーオスが火で炙っていく。すると、首が再生することがなくなり、ヒュドラーの力も弱くなっていくことが分かった。
     途中、ヒュドラーの尾がイオラーオスの体にもあたり、紐が切れてしまったが、獅子の毛皮のおかげで怪我はなかったという。
     そして最後に、大きな岩を担ぎあげて、首を全部失ったヒュドラーの胴体に叩きつけて、押しつぶしてしまったのである。こうしてヒュドラーは退治された。
     ――話を全部聞き終わったエウリュステウスは、「ふむ……」と考え込んでしまった。
     「つまり、そなたは一人でヒュドラーを倒したわけではないのだな?」
     「あっ……」
     ヘーラクレースもようやくそのことに気付いた。
     「実は、真にそなたに試練を与えている御方からお言葉を賜った。いずれは一人では成せない大業も試練として与えるつもりだが、今はまだそのレベルではない。しかも子供に助っ人をさせるなど、良識のある大人なら、させてはいけないことぐらい分かるはずである、と。実際、怪我はしなかったものの、イオラーオスも危険な目にあったのであろう?」
     「はい……」
     ヘーラクレースは後悔の念をあらわにしていた。
     「いや、わたしも悪いのだ。あの時、イオラーオスが同行するのを止めなかった。隠れて付いていくよりは、その方がいいだろうと判断し……しかしその判断は間違いだった。あの勝気な子が、ただ見ているだけで済むはずがないと、わたしも気づかなかったのだ。だから、わたしとしても心苦しいのだが……」
     エウリュステウスは言い辛いながらも、言葉を続けた。
     「罰として、試練を一つ増やすように、とその御方は仰せなのだ」
     その言葉に、ヘーラクレースはうなずいた。
     「もっともな仰せでございます。お言葉、確かに承りました」
     「すまない。わたしのせいでもあるのに」
     「なにをおっしゃいます! その程度の罰に済んでいるのは、王様がわたしを庇ってくださったからでございましょう!」
     そのとおりだった。本当はもっとひどい罰をヘーラー女神は言っていたのだが、それをエウリュステウスが、
     「それならばわたしにも同じ罰を!」
     と言い出したため、エウリュステウス可愛さにヘーラーが折れてくれたのである。それをヘーラクレースが気づいてくれたので、エウリュステウスは報われた思いだった。

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  • from: エリスさん

    2009年09月18日 11時41分20秒

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    「ヘーラクレースの冒険・17」
     ヘーラクレースとイオラーオスが旅立つのを見送ったエウリュステウスは、私室に戻って、長椅子で一息ついた。そうしていると、妃であるミレーユが薬酒を持って入ってきた。その後ろからは二人の息子のテウスも付いてきた。
     「まあ、あなた。そんなところに横になっていないで、早くベッドにお入りくださいませ。朝から熱があったのですよ」
     ミレーユが言うと、
     「しかし、今日は大事な閣議が……」
     「そんなものは明日、熱が下がってからになさいませ。国王が具合が悪くては、話し合いをしたところで纏(まと)まるはずがございません!」
     それを聞いてエウリュステウスは苦笑いをした。
     「それもそうだな」
     エウリュステウスは一端立ち上がると、冠をはずして、ベッドのほうへと行った。ミレーユも薬酒をテーブルの上に置き、夫が服を脱ぐのを手伝った。そしてテウスも、
     「はい! お父様」
     と、夜着を手渡してくれるのだった。
     「ありがとう、テウス」
     エウリュステウスは息子から手渡された夜着に着替え、ベッドの中に横になった。
     「本当にあなたは、ヘーラクレースを送り出さなければならないからと言って、無理して起きだしてしまうのですもの。心配でなりませんでしたわ」
     ミレーユは毛布をエウリュステウスの首元まで掛けてあげながら、そう言った。「でも、ヘーラクレースに具合が悪いことを悟られないようになさっていたこと、とてもご立派でした」
     「心配を掛けたくなかったのだよ……結果的にそなたに心配をかけてしまったが」
     「それはお気遣いなく、妻が夫の心配をするのは当然のことですから」
     ミレーユはそういうと、夫の頬にキスをした。すると、
     「僕も!」と、テウスが反対側の頬にキスしてきた。
     「こらこら、男同士でキスするものじゃないよ」
     エウリュステウスはそう言いながらも、嬉しそうにテウスの頭をなでた。するとミレーユが言った。
     「あら、いいじゃありませんの。頬へのキスは親愛のキス。親子でする分には悪い事じゃありませんわ。テウス、お母様にもしてちょうだい」
     「うん、いいよ」
     テウスはエウリュステウスのベッドの周りを半周して、ミレーユのもとに辿りつくとその頬にキスをした。
     そうしてから彼は少し悩んだ。
     「イオラーオスにもしてあげれば良かったかな……」
     「あらあら」とミレーユは笑った。「テウスはイオラーオスも大好きなのね」
     「うん。僕たち友達になったんだ」
     「そう。それじゃ旅に出てしまって、寂しくなってしまったわね」
     「うん。でも、また戻ってくるって言ってたから」
     「そうだな」とエウリュステウスは言った。「ヘーラクレースがヒュドラーを退治したら、一緒に帰ってくるだろうよ」
     「うん、あのね、イオラーオスは最強の鎧を手に入れたから、もう何も怖いものはないって言ってたよ」
     最強の鎧とは、あのネメアの獅子の毛皮の端切れを、体に巻きつけただけのものを言っているのだろう。そこらへんはまだ子供の発想である。ミレーユも同じことを思ったのか、エウリュステウスの方を見て、
     「本当に大丈夫だったのでしょうか? 付いて行かせてしまって」
     「大丈夫だろう、ヘーラクレースがいるのだし。それに、あの毛皮が剣も通さないほど強いのは本当のことだからね」
     「そう、確かに強い毛皮だそうですね。工房の職人たちが嘆いておりましたわ。あの毛皮をなめしたおかげで、道具がすべて壊れてしまったと。今日は早速、壊れた道具を直すために、鍛冶職人がトンテンカンッと金づちで刃物を叩いている音が響いてましたわ」
     「そうか、直していたか……なんなら、他国へ道具を買いに行ってもいいと伝えてくれ。金に糸目はつけぬ――そもそもわたしが命じた仕事のせいで道具が壊れたのだから」
     「わかりました、伝えますわ。それにしても、あなたは本当にヘーラクレースを気に入ってしまわれたのですね。本当ならば、罪の償いをさせている者に、武具をそろえてやったり、旅費まであげなくてもよろしいでしょうに」
     するとエウリュステウスは微笑んで言った。
     「彼は、わたしに無いものを持っているからな……」


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  • from: エリスさん

    2009年09月11日 13時48分29秒

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    「ヘーラクレースの冒険・16」
          第4章 第2の試練 レルネーのヒュドラー(水蛇)退治


     それから三日が経った。
     次の試練がなかなか言い渡されないでいたため、ヘーラクレースはその間すこしでも役に立とうと、農場で働いたり、狩りに出て獲物を取ってきたりしていた。それは自らの身体を鍛えることにもつながっていたのである。
     そうして三日目の朝、朝食を終えたヘーラクレースをエウリュステウス王は謁見の間に呼び寄せた。
     「待たせたな、ヘーラクレース。次の試練だ」
     王の言葉に跪(ひざまず)きながら、ヘーラクレースは顔をあげた。
     「レルネーに棲むヒュドラーを退治してくるように!」
     ヒュドラーとは水蛇の怪物である。ネメアの獅子とは同じ両親から生まれた姉にあたる(母親のエキドナ(半神半蛇)に似ているということか?)。アルゴス地方の沼地・レルネーに棲みつき、近隣の人畜に被害を与えていた。
     「確か、九つの頭を持っていると聞きましたが?」
     とヘーラクレースが質問すると、
     「そうだ。今まで幾人もの勇者が立ち向かったが、あの九つの頭のせいで返り討ちにあっている。なんでも、首ごと切り落としてもまた生えてくるらしいのだ」
     「なるほど……」
     「厄介な怪物だが、しかし、そなたならやってくれるだろう」
     「はっ、お任せを」
     その返答を聞き、満足したエウリュステウスは、手を打って人を呼び寄せた。「例の物を持ってまいれッ」
     すると、王の側近たちがなにやら抱えて持ってきた。剣と楯はすぐに分かったが、残る毛皮は……?
     「これは……」
     ヘーラクレースは獅子の頭が露骨に残ったその毛皮を手に取った。
     「先日そなたが仕留めたネメアの獅子だ。皮をなめして、そなたの鎧を作ったのだ」
     「鎧ですか?」
     確かに、弓も剣も通さない体だったのだ。その毛皮を使えば、これほど強力な防具はない。試しに毛皮の端っこに剣を刺してみたが、刺さるどころか凹みもできなかった。
     「これをそなたに与えよう。存分に使ってくれ」
     「ありがとうございます。必ずや王の期待にそってご覧にいれます」
     ヘーラクレースはさっそくその毛皮を着込んだ。頭の部分はすでに下あご部分が取り外されているので、そのまま頭に被り、兜とした。小手当ても脛当てもちゃんとヘーラクレースのサイズにぴったりに仕上がっていた。
     『なるほど、これが出来上がるのに三日もかかって、今まで試練が言い渡されないでいたのか』
     ヘーラクレースは納得すると、エウリュステウスの心遣いに感謝した。
     「それでは、行ってまいります」
     ヘーラクレースがその場を後にしようとすると、
     「ちょっと待って!」と、声がかかった。
     謁見の間の扉の前に、イオラーオスが立っていた。
     「僕も一緒に行く!」
     見れば彼も、ヘーラクレースと同じ色の毛皮を着ていた。ただしこちらはただ体に巻きつけて、紐で補強しているだけのようだが。
     「なにを言ってるんだ、イオラーオス! これは遊びじゃない、怪物退治なんだぞ。そんな危険なところにおまえを連れて行けるか! おまえはもうテーバイに帰れ!」
     「テーバイには帰るよ。でもその前に、伯父上の戦いをこの目で見たいんだ。実際に見て、ありのままを父上やおじい様たちに伝えたい! 大丈夫、こうしてネメアの獅子の端切れをもらって、自分で鎧も作ったから、危なくないよ」
     「なにが危なくないだ! その紐が切れたら、簡単に落ちるじゃないか」
     と、ヘーラクレースがイオラーオスの毛皮を引っ張ると、その手をイオラーオスは払いのけた。
     「とにかく僕は絶対に行くよ! 行くったら行くんだ!!」
     「このォ〜、わからず屋め〜……」
     そこでエウリュステウスが口を挟んだ。
     「離れたところで見ているぶんには、よかろう」
     「王様?」
     ヘーラクレースが振り返り見ると、エウリュステウスはうなずいて見せた。
     「ただし見学するだけだ。イオラーオス自身は決して危ないことはしないこと。それが約束できるなら、付いていくといい」
     「しかし王様……」
     「駄目だと言っても、この子は付いていく。隠れてついてこられるよりは、ちゃんと見えるところにいてくれたほうが、心配はないと思うが」
     「はあ……確かに」
     こうしてイオラーオスも一緒に連れていくことになったのである。

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  • from: エリスさん

    2009年09月11日 11時41分42秒

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    「ヘーラクレースの冒険・15」
     エウリュステウスがなにやら暗躍している頃、ヘーラクレースはイオラーオスと二人で朝食をとっていた。そして改めてイオラーオスがここにいる理由を聞いたのである。
     するとイオラーオスはちょっとふくれっ面をして言った。
     「伯父上が突然いなくなっちゃうのがいけないんだよ。父上も、おじい様もおばあ様も心配してるんだからね。だけど、伯父上がお城を出て行きたくなった理由もわかるから、父上たちが連れ戻しに行くより、僕が行った方がいいかなって思ったから、僕が追いかけてきたんだ」
     「そうか……それは済まないことをしたな。しかし、わたしはテーバイに帰るつもりは……」
     「うん、聞いたよ、エウリュステウス王様から。王様から試練を受けているんだよね。それが終わるまでは帰れないんでしょ? そのことは僕から父上たちに伝えておくよ。だから頑張ってね! 絶対負けないでね! 応援してるから!」
     「うん、ありがとう」
     「あっ、それからね。肝心なこと忘れてた。メガラーおば様は生きてるよ」
     「……ええ!?」
     イオラーオスはメガラーが葬儀の直前に生き返ったことを話して聞かせた。目を覚ましたばかりのころは意識もはっきりいなかったが、イオラーオスがテーバイを出る前に見舞いに行った時には、話し掛けられたことに対して返事をするぐらいは回復していたのである。
     それを聞いて、ヘーラクレースは安堵のため息をこぼした。
     「そうか……良かった」
     「だからね、メガラー様のためにも一日も早く帰ってきてね」
     「……ああ、そうだな」
     そう答えたものの、心のうちではヘーラクレースは別のことを考えていた――自分の子供を殺した男となど、もう一緒にいない方のがいいかもしれない、と。そもそも特別な愛情があって結婚したわけではなかった。英雄としてテーバイに帰ってきた自分を、「親族にしたい」と思ったクレオーン王が申し入れてきた縁談だった。自分としては、メガラーとは知らない間柄ではないし、いずれ王族の義務として政略結婚させられるよりは、この縁談を受け入れた方のが幸せかもしれない、と考えて結婚したのである。しかしその気楽な考えがこうした結果を招いたのであれば、もう自分はメガラーを解放してあげなければならないのではないかと、ヘーラクレースはそう思っていた。
     後にヘーラクレースとメガラーは正式に離婚し、メガラーはとある地で静養をとっていた。その静養先で出会った男性と恋に落ちたメガラーは、再婚して幸せになったと言われている。


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  • from: エリスさん

    2009年09月04日 14時57分52秒

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    「ヘーラクレースの冒険・14」
     そのころヘーラクレースは、獅子のねぐらのそばで獅子が帰ってくるのをじっと待っていた。
     いったい何時間たったころだろう。つい眠くなってしまって、うとうとし掛けた時だった。遠くの方から、ズンッ、ズンッという地響きをたてながら何かが近づいてくるのを感じて、彼はパッと目を覚ました。
     すでに太陽は傾きかけ、夕暮れになっていた。その夕日が沈む方角から、黒くて大きな物が近づいてくるのが見えた。
     間違いない、ネメアの獅子である。黒く見えるのは逆光だからだった。傍にきたときには、金色に近い茶色の毛色だとはっきりとわかった。
     ヘーラクレースは獅子がねぐらに入って入口から遠ざかるのを気配で確かめると、隠していた松明(火)を入口に投げ入れた。
     すると、獅子が帰ってくる前に敷き詰めておいた枯草に火が付き、一気に燃えだしたのである。
     獅子は驚いて、火のない方――もう一方の出口へと走って行った。
     ヘーラクレースはその隙に、大岩を担ぎあげて、今まさに燃え盛っている入口の方を塞いでしまった。
     「これでこの洞穴の出入り口は一つだけになった」
     そう言うと、ヘーラクレースは走り出していた。


     翌朝、エウリュステウスは城の外が騒がしいのに気付いて、目を覚ました。どうしたのかと起き上がり、着替えをして外へ出ようとしたちょうどその時、ヘーラクレースの甥・イオラーオスが廊下を走ってくるのが見えた。
     「王様! エウリュステウス様! 来てください! 伯父上が、凄いんです!」
     それだけで、エウリュステウスには予想がついた。
     イオラーオスに手を引かれながら中庭に出たエウリュステウスは、人だかりの中に、肩に大きな獅子を担いだヘーラクレースを見て取ることができた。
     エウリュステウスが来たことに気づいたヘーラクレースが、
     「エウリュステウス様!」
     と声をかけたので、周りにいた人たちが道をあけて、エウリュステウスとイオラーオスを彼の前に通した。
     ヘーラクレースは獅子を肩から降ろすと、エウリュステウスに跪いた。
     「王のご命令通り、ネメアの獅子を打ち取って参りました」
     「うむ、見事だ!」
     エウリュステウスはそう言いながら、獅子の体に触って、本当に死んでいるのか確認するとともに、傷一つないことも見て取った。
     「どうやって倒したのだ? これには矢も剣も効かぬと聞いていたが」
     「はい、わたしもそう聞いておりましたので、初めから武器を使うのはやめました」
     「ではどうやって?」
     「こやつのねぐらは左右に入口のある洞穴でしたので、そのねぐらに入った途端、火でこやつを驚かしてから一方の入口を塞ぎ、もう一方の入口に先回りして、出てきたところを上から飛び乗り、首を絞めて殺しました」
     「首を絞めた!? この太い首を?」
     「はい、後ろからこう……」
     と、ヘーラクレースは両腕で抱えるようにした様子を、実際に獅子を使ってやって見せた。
     「凄い怪力だ……いや見事だ……」
     エウリュステウスはただただ感心するばかりだった。
     その様子にイオラーオスも満足して、
     「ね? 伯父上は凄いでしょ! 英雄でしょ!」
     とはやし立てた。
     「おお、そなたの言う通りだ、イオラーオス。彼こそ英雄だ。さすがは神々の王ゼウスのご落胤」
     エウリュステウスはそう言うと、ヘーラクレースの手を取って立たせ、肩や背中に付いた砂埃を払ってあげた。
     「先ずは湯殿で旅の汚れを払うがよい。そして心を癒す食事と、体を癒すベッドを用意しよう。さあ、こっちへ」
     と、エウリュステウスはが自ら案内しようとすると、ヘーラクレースは恐れ多いと遠慮した。
     「わたしは贖罪のために試練を受けているもの。客人として扱われるわけには参りません」
     「うむ……そうだったな。では、そなたに試練を与えるものとして命令する。先ずは湯殿で汚れを落とし、その後に食事と休息を許そう!」
     「はっ、ありがたき幸せ」
     「じゃあ、湯殿には僕が案内してあげる!」
     と、イオラーオスは今度はヘーラクレースの手を引っ張って、城の中へと連れて行ってしまった。
     残ったエウリュステウスは、家来たちに獅子を工房に運ぶように指示し、自分は神殿へと赴いた。
     朝早くからの礼拝だったが、ヘーラー女神はすぐに降りてきてくれた。
     「私に何か願いがあるのであろう? エウリュステウス」
     ヘーラーの言葉に、跪いていたエウリュステウスはこう言った。
     「はい。正式に彼を――ヘーラクレースをわたしの家臣にしていただきたく……」
     「使役するだけではなく、ちゃんとした身分を与えてやりたいと言うのか?」
     「少なからず、試練を与えているうちは」
     「ふむ……まあ、構わぬが」
     「ありがとうございます。それでは、これよりヘーラクレースはわたしの家臣ということで……家臣ならば、今後の働きのために武具一式揃えてやるのも、主人の務めでございますな」
     「なにをするつもりだ?」
     「このたびの働きに対して、褒美をあげたいのでございますよ」

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