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from: エリスさん
2010年02月26日 15時16分06秒
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「ヘーラクレースの冒険・41」
「ごめんよ、このごろ忙しかったんだよ。ヘーリオスの馬車の車輪が壊れたから修理を頼まれたり、天空を支えるアトラースの靴がすり減ってしまったから、もっと丈夫な靴を作ってやらなくちゃいけなくなったり……だけど、これからはもっと兄弟たちの集まりには顔を出すようにするから、だから泣き止んでくれよ、パラス」
アテーナーがいつまでも泣きやまず、しかもヘーパイストスから離れようとしないので、ヘーパイストスはそのままアテーナーを抱き上げて、休憩室まで運んで、ソファーに座らせた。その間、キュクロープスのおじさん達も協力して、アテーナーの重苦しい甲冑を取り外してあげた。
「はい、ヘース様。お忙しいのに駄々をこねて、ごめんなさい」
アテーナーはようやく泣きやんで……それでもヘーパイストスに縋りついていた。
「あのォ、ところで……用があったんじゃないの?」
「そんなのはいいんです。ヘース様に会えれば、あとはどうなったって構いませんわ」
するとプロンテースがテーブルをコツコツっと叩いた。
「そんなことを言ってはいけないよ、パラス・アテーネー」
プロンテースはそう言いながら、彼女の前に紅茶を置いた。するとステロペースも言った。
「そうだよ。それがなければ困る人がいっぱいいるから、だから一刻も早く作ってやらなければならないのだろう?」
「……そうでしたわ」
そう言って、アテーナーはようやくヘーパイストスから離れた。
「自分を失いすぎておりました。申し訳ありません、おじ様たち」
「分かってくれればいいんだよ、パラス」
「さあ、言ってごらん。ヘースに何を作ってもらいたいんだい?」
「はい。何千羽といる鳥たちを追い払える道具を」
アテーナーはステュンパーロスの森の事情と、それに立ち向かっているヘーラクレースという英雄の話を彼らに聞かせた。
するとヘーパイストスは大きくうなずいた。
「そういうことなら任せてくれ。すぐに作ってあげるよ。プロンテースおじさん、手伝って。ステロペースおじさんは出来上がるまで、パラスの相手をしてあげてよ」
「あの!」と、部屋を出て行こうとするヘーパイストスを、アテーナーは呼び止めた。「私もお手伝いを」
「いや、君はだめだよ。危ないから。ここで待ってて」
ヘーパイストスが居なくなってしまうと、寂しげに表情になってしまったアテーナーに、ステロペースは大きな四角い箱のようなものを運んできてくれた。
「これでヘースの様子が見られるから、我慢しておくれ」
「これは?」
「テレビモニターと言うものだ。我々が使う水鏡と同じだよ。遠く離れたものを見るのに使われる」
「まあ! ヘース様がお作りになったのですか?」
「そうだよ」
ステロペースがテレピのスイッチを入れると、ちょうどヘーパイストスとプロンテースが、材料として使う青銅を溶かしているところが映った。
「まあ、水鏡よりもクッキリと見えますわ」
「最近はこれだけではないんだよ、パラス。この部屋、さっきから涼しいとは思わないかい?」
「あっ!?」
レームノス島は火山なので、そのそばにある鍛冶場はとても暑い。プロンテースが冷気を操れた頃は、彼が壁を氷漬けにして部屋を冷やしていたのだが、それができなくなってからは、ヘーパイストスが部屋を涼しくするための道具をいろいろと編み出し始めたのだった。
「この間までは扇風機を使っていたのだが、先日完成したこのクーラーのおかげで、もっと涼しくなったんだよ」
「すごいです! いったいどうやって動いてるんですの?」
「難しいことはわたしも分らないんだがね。でもヘーパイストスはこの技術を人間にも伝えたいと言って、人間界の技術者に陰ながら知恵を与えたり、夢に見せたりして、がんばっているんだよ」
「……本当に、お忙しいのですね、ヘース様は」
「それがあの子の務めだからね。そのことを、そなたも理解してやらねばいけないよ」
「はい……おじ様」icon
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from: エリスさん
2010年02月19日 13時49分22秒
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「ヘーラクレースの冒険・40」
アテーナーが向かったところは、言わずと知れたレームノス島だった。そこで、一人の神とその助手が、汗にまみれながら日夜さまざまな物を作り出していたのだった。
その匠の腕をもってすれば、烏合の衆の一つや二つ追い払えるものが作れるはずだった。
……しかしそれは表向きの理由である。アテーナーの一番の目的は……。
レームノス島の工房の中に入ると、すぐに目にとまった二人の人物がいた。筋骨逞しい男で、二人とも目が一つしかないのに、アテーナーにはとっても優しい顔に見える――その二人を見た途端、アテーナーは駈け出していた。
「プロンおじ様! ステロおじ様!」
その声に、二人の大男はアテーナーの方を振り向いた。
「おっ!? バラスじゃないか」
「久しぶりだな」
二人の「おじ様」は両腕を広げて、アテーナーを受け止めた。
「プロンテースおじ様、大好き! ステロペースおじ様も大好き!」
アテーナーは二人のおじ様に交互に自分の頬をこすりつけた――それがこのおじ様たちとの挨拶だった。
プロンテースとステロペース――通称・キュクロープス兄弟は、かつてはその腕で熱気と冷気を自在に操り、その能力と引き換えであったのか、言葉が一切話せない、いわゆる異形の神だった。それが、ある事件で体が燃えてしまって灰となり、その灰をヘーパイストスが「死者を蘇らす薬」と混ぜて、粘土のようにこねて形作ったところ、二人は復活することができたのだった。だがそれ以来、熱気や冷気を操れなくなってしまい、その代わり言葉がしゃべれるようになったのである。
「ヘースに仕事の依頼かい?」
プロンテースがそう聞くと、アテーナーは二人から離れてちゃんと立った。
「ハイ、おじ様」
「もちろん、表向きは……だね?」
ステロペースがそう言うと、アテーナーはニッコリと笑った。
キュクロープス兄弟はアテーナーがまだ幼名の「バラス」を名乗っていたころから知っているので、まったく気兼ねがいらない相手だった。だからこそアテーナーも甘えることができるのである。
「でも本当に作ってもらいたいものがあるんですよ。おそらくヘース様にしか作れないでしょう」
「だったら会うといいよ」とプロンテースは言った。「この奥にいるから。炉の火には気をつけるんだよ」
「はい、おじ様」
かくして、一番奥の工房の炉の前で、鉄を溶かしていたヘーパイストスを見つけたアテーナーは、
「ヘース様ァ〜!」
今にも泣き出しそうな声を出しながら、走り出していた。
「えっ!? ちょっ、ちょっと待って!」
ヘーパイストスは慌てて鉄を焼け火箸ごと冷水に放り込んで、アテーナーを抱きとめた。
「急に走ってきたら、危ない……」
と、ヘーパイストスが言い終わる前に、アテーナーが泣きじゃくった。
「お会いしとうございましたァ〜〜!」
その姿が、いつもの威厳ある斎王の姿とは裏腹の、まだあどけない少女のようだったので、ヘーパイストスはつい照れ笑いをしてしまった。
照れていたのは、部屋の向こうで二人のおじが微笑みながら見ていたからかもしれない。icon
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from: エリスさん
2010年02月19日 13時09分35秒
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パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々
2月26日から公開のこの映画.....原作はまったく知らないのですが、面白そうですね。
最近「神話読書会」のアクセス数が異様に多いのは、この作品の公開が近いせいですか?
このサークルのオーナーであり、映画館に勤務している私としては、この作品のことをちゃんと解説しなくてはならないところなのですが、いかんせん、原作を読んでいないのでまったく内容を知らない。主人公のパーシーが海神ポセイドーンの息子、というぐらいしか知識がないんです。
なので、作品自体ではなく、登場する神様の解説だけさせていただきます。
父親とされるポセイドーンは、レイアーとクロノスの間に生まれた、本来なら長男坊です。ところが、生まれてすぐにクロノスの腹の中に閉じ込められてしまいます。6年後、それを助けてくれたのが弟のゼウスでした。そこでポセイドーンは、
「命の恩人であり、この神界の統治権を手に入れられたあなたを、弟とするのは忍びない。我らこそあなたの弟となって、あなたを兄として崇めることに致しましょう」
と申し出た。一緒に閉じ込められていたハーデースもそれに承知したので、以後はゼウスを長兄、ポセイドーンを次男、ハーデースを三男と数えることになったのです。
それからと言うもの、オリュンポス(この映画では「オリンポス」と言ってますが)で何か揉め事が起こると、それを仲裁するのがポセイドーンの役目になりました。司るところが海と水域全般というのも、いかにも次男坊らしいポジションですね。(空と大地の間って意味合いで)
ポセイドーンの正妃はアンピトリーテーと言われています。しかし妻や恋人は他にもいます。有名なところでゴルゴーン姉妹のメデューサがそうですね。彼女との間に生まれたのがペーガソス(英語読みで「ペガサス」)という天馬です――人型じゃないのが、なんとも。
それで、このポセイドーンが現代の人間の女性と恋愛関係になって、生まれたのがパーシーということなんですか? どういう経緯なんだろう。
とりあえずパーシー・ジャクソンの公式ホームページを覗いてきたんですが、パーシーの他にも「神と人間のハーフ」が何人もいるらしいことが分りました。あのアテーナーにも子供がいるって......いいのか? 処女神にその設定――あっ、私も昔に書いたことあるか(^_^;) ちゃんと処女に戻る設定にしておいたけど、この映画ではどうなんでしょうね。
ついでに「デミゴッド診断」というのをやってみました。私はアテーナーでした。-
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from: エリスさん
2010年02月19日 11時09分59秒
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「静養、そして回復」
> 実は昨日、あまりにも具合が悪いので病院に行ってきました。
> 「腸炎」と診断されました。
> 昨日の夜から薬を飲んでいるのですが、副作用なのかなんなのか、胃が重たく感じて、腰も痛いので、今日は炬燵と座椅子を利用して眠ってました――お布団で寝ると腰が余計に痛くなるので。
> そんなわけで、明日は小説アップができるかわかりません。読者の皆様、ごめんなさい。
と、書いてから一週間。
なんの音沙汰もなくてすみませんでした。数日前から回復して、仕事にも復帰しております。
仕事復帰は自分としてはかなり無理矢理だったのですが、体が辛いからと言って家で寝てばかりいると、悪いことばかり考えて精神的に良くないので、
「仕事していれば、気が紛れるし……」
という、言うなれば自分勝手な言い訳で出勤してました。まあ、私の代わりに出勤できる人を探すのも大変だから、多少具合が悪くても私自身が出勤してしまった方が手間は省けるのですが。
その代わり、「腰が痛いから、重たい物は持てないの」と、荷物の運搬を男の子に押し付けたり(^_^;) 、「しょっちゅうトイレに行きたくなるから、その場から離れることができないストア(キャラクターグッズ売り場)の担当はできない」などと我ままを言ったり(-_-;) 、どうしようもない先輩に成り下がっておりました。後輩のみなさん、本当にスミマセン。
でもね、具合が悪くて昼間からお布団の中にいるとね、考えちゃうのよ。
「このままお婆ちゃんになりたくない……」
ちゃんとした彼氏もいないまま、もうすぐ40歳になって、50歳になって、60歳…………………………って、本当に悩むんだよ、どん底まで! だったら痛い思いしてでも仕事に来ていた方がいいでしょ!
話は変わりますが、実は今日、私の誕生日です。39歳になりました……40代へのカウントダウンが始まりましたよ(;一_一)
そんな私に、我が兄・木堀ZO(またの名を三菜斗 岬)が誕生日プレゼントとしてDSの「トモダチコレクション」をくれました。
「なぜにゲームソフト???」
と思いつつも始めてみたら、ハマるハマる(^◇^)
さっそく私と兄と、うちの愛猫・姫ちゃんと公太を擬人化したキャラを作り、不和女神エリスと、エイレイテュイア、アテーナー、ヘーパイストスを日本人化して作ってみました。
アテーナーとヘーパイストスが両想いにならないかなァとやりはじめたんですが……開始三日目にして、私とヘーパイストスが恋人になっちゃいました。いいのか? これで!
あとは「仮面ライダー・キバ」の紅音也と、堂本光一、西川貴教などのお気に入り芸能人も作ってみました。今のところ光一君は決め台詞として、
「おまえなんか、握ってやる!」
と、しゃべるところまで教育してあります。そのうち音也には、
「いい子だ、渡(わたる)」としゃべってもらいましょう。
風間俊介には迷った末、「俺のターン!」を覚えさせました。(「作戦会議だ!」とどっちにするか迷ったんですが)
こんな感じで、私の三十代最後の一年が始まっておりますが……なんとか今年中に彼氏を見つけたいものです。ゲームではたった三日で捕まえられたのに……。icon
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from: エリスさん
2010年02月11日 16時30分16秒
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静養中
実は昨日、あまりにも具合が悪いので病院に行ってきました。
「腸炎」と診断されました。
昨日の夜から薬を飲んでいるのですが、副作用なのかなんなのか、胃が重たく感じて、腰も痛いので、今日は炬燵と座椅子を利用して眠ってました――お布団で寝ると腰が余計に痛くなるので。
そんなわけで、明日は小説アップができるかわかりません。読者の皆様、ごめんなさい。-
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from: エリスさん
2010年02月05日 13時34分06秒
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「ヘーラクレースの冒険・39」
ヘーラクレースは初め、正攻法で弓矢を使って鳥を射落としていちが、すぐに「きりがない」と気付いて止めた。
次に、鉄製の鍋の底を金づちで叩いて、大きな音で驚かせてみたが、確かにちょっとは驚いて逃げる鳥もいたが、すぐに戻ってきてしまう。
「うん……しかし多少は効くようだな」
そこでヘーラクレースはアルカディア王宮に出向いて、一番大きな音が出る楽器があったら貸してほしいと願い出た。すると、もとよりアルカディア王からの要望で来てくれたのだからと、王宮に住む人々が協力してその条件に合う楽器を探し回ってくれた。そうして、宝物蔵から「異国から渡ってきた“銅鑼(どら)”という楽器」を探し出し、それをヘーラクレースに差し出したのだった。
「異国からきた宝物を? 本当によろしいのですか?」
ヘーラクレースが遠慮がちに聞くと、アルカディア王が答えた。
「あの鳥の大群を追い払ってくださるのなら、こんな人目の付かない所に放っておかれた楽器など、どんなに価値があろうと関係ない。どうぞ使ってくだされ」
それならばと、ヘーラクレースは丁重に拝借して、その銅鑼を森の中で鳴り響かせた。――それは確かに効果があった。だが、逃げて行った鳥たちはまたしばらくすると戻ってきてしまう。何度やってもその繰り返しになってしまった。しまいには、耳栓をしているというのにヘーラクレースの耳まで痛くなってくる。付き添いのヒュラースなどすでに失神していた。
「いったいどうしたら……」
ヘーラクレースが途方にくれている姿を、天上の神々は水鏡を使って眺めていた。
「お手上げと言ったところか? さすがのヘーラクレースも」
とエリスが言うと、その隣で紅茶を入れていたエイレイテュイアが答えた。
「いい線はいっているのにね」
するとアテーナーは手に持っていた紅茶を飲み乾してから言った。
「もとは神に仕えていた鳥だから、人間の作ったものでは退治できないのでしょう。だからここは、神が作った……」
そこまで言って、アテーナーはピンッと頭にひらめきを感じた。
「……そうよね。そうだわ!……あの方にしかできないわよね、そんなこと」
「お姉様?」とヘーベーが声をかけた。「どうかなさいましたの?」
「え? ええ……ちょっと急用を思い出したわ」
アテーナーはカップをテーブルに置くと、部屋の隅に置いておいた自分の甲冑を着だした。そして、
「ごめんなさい、今日はもう行くわ。ヘーラー様によろしく伝えて」
「ええ、伝えますわ、お姉様」とエイレイテュイアが答えた。「これはお姉様の特権ですもの。お気になさらず」
異母妹の言葉にちょっと恥ずかしそうな笑みをこぼしたアテーナーは、そそくさとその場を後にしたのだった。
まだ訳がわからないヘーベーは、エイレイテュイアに「なんなの?」と聞いた。
「お母様から言われているのよ。アテーナーお姉様だけはヘーラクレースの手助けをしても良いと。だから、彼を助けるために、この場にいない“あの人”のもとへ行ったというわけよ」
それでヘーベーも納得した。
「アテーナーお姉様ったら。弟に会うのに、そんなに気兼ねしなくてもいいのに」
「斎王としての貞節なのよ。天の花嫁だから、理由がなければ殿方と会うことができないの」
「……って」とアレースが言った。「俺とは会ってるのに?」
するとエリスが言った。「おまえのことは弟としか思ってないからいいんだよ。でも、彼のことは、ただの弟じゃないからさ」icon
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