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from: エリスさん
2010年11月26日 13時33分02秒
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わけあって、今日はこちらを休載します
もう一方の「恋愛小説発表会・改訂版」で、新作を書き始めることになりました。そちらに集中します。
どうして集中するかというと......
「この物語はフィクションです。実在する人物、団体等とは一切関係ありません」
という注釈を付けなければならないぐらいの話だからです。
四十歳直前の純潔女の心意気を見てください。
見切り発車で書き始めますけどね(^_^;)-
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from: エリスさん
2010年11月20日 03時21分25秒
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from: エリスさん
2010年11月19日 12時11分44秒
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「未来は視たくない・9」
ヘクトールを送り出した後、カッサンドラーが自室で物思いにふけっていると、窓から自分を呼ぶ声が聞こえた。
「姉上、わたしです!」
天馬に乗ってやってきたのは、弟のケレーンだった。(カッサンドラーの部屋は二階にある)
「皆さんお出かけになったのでしょう? それを見計らって来たのです」
ケレーンはそう言いながら窓から入ってたきた。
「まあ、またどうして? 王子なのだから、堂々と皆がいる時に帰ってくればいいのに」
カッサンドラーが言うと、
「姉上とだけお話ししたかったからです……未来予知をなさいましたよね?」
と、ケレーンは答えた――それでカッサンドラーはすべて合点がいった。
「あなたは私にかかった呪いの影響を受けないのだったわね。もう、神族になったのだから」
「はい……わたし自身はまったく変わった気がしないのですが」
「そうね、見た目は全然変わらない……でもそのうち、年老いなくなったあなたと私たちは、まったく違うものだと思い知らされる時が来るわ……そんなことより、あなたがここへ来たということは、なにか災厄から逃れる手だてがあるの?」
するとケレーンは苦笑いをしながら、姉が座っているベッドの前に椅子を運んで、ため息をつきながら座った。
「正直、難しいです。なにしろ、今度のことは奥にゼウス神王の計画が潜んでいるらしいのです」
「神王さまの?」
「今度のことの、事の発端は分かりますか?」
「ええ、予知で見たわ――パーティーに呼ばれなかった不和の女神さまが、その悔しさから不和の種を――黄金の林檎をパーティー会場に投げ込んだのよね? “一番美しい女神へ”と書いて。それで、王后神さまと、知恵の女神さまと、美の女神さまが争われて……どの女神が一番美しいか、判者として人間の青年が選ばれた。その青年が、どうやら私たちの兄弟らしい……」
「そうです……客観的に説明するとそうなるのですが、でも神界の皆様を知っているわたしとしては、先ず不和の女神・エリス様はそんな短慮を起こされる方ではないのです。そこから違和感を覚えたわたしの妻が調べてみたところ、どうもエリス様はその時、誰かに心をコントロールされていたようなのです。エリス様自身、わたしの妻に〈あの時は自制心が利かなくなって、自分が自分じゃなくなったようだった〉とおっしゃっています」
「つまり、女神さまの心をコントロールした誰かが、この争いを引き起こしたと? それが神王陛下だと言うの?」
「他にそんなことができる方を、わたしは知りません」
「いったい何のために?」
「それは分りませんが……でも、このことでトロイアを滅ぼそうとしていることは確かです」
「そんな……どうして……」
「でも、まだ望みはあります。そもそも、どうしてわたしがここへ来たと思います? 姉上はまだ誰にも予言をしていないのに」
「あっ!?」
カッサンドラーが予言する前から、その内容を知ることができる人物が一人だけいる――カッサンドラーにその力を授けた、予言をつかさどる神・アポローンだった。
「そう、わたしはアポローン様に知恵を授けられてここへ来たのです。ただ、その作戦も100パーセントではないと、君様はおっしゃっていました」
「教えて! どうすればいいの?」icon
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from: エリスさん
2010年11月12日 14時32分38秒
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「未来は視たくない・8」
カッサンドラーは、急に雷に打たれたかのように全身が痺れた。
その瞬間、これから起こることが目の前に現れ、駆け巡ったのである。
始めて見る青年――その青年が競技場で、兄・ヘクトールと剣術の試合をしている。その青年が負けそうになり、ヘクトールが留めの一撃を与えようとすると、客席から母・ヘカベーが叫ぶ。
「その者はおまえの弟です!」
両親とヘクトールはその青年を連れ帰り、トロイアの王子として迎える。そして、その王子は使節として他国へ行き、その時、その国の王妃を略奪してきて、それがもとで大戦争が起きる。それはトロイアを破滅に導いていく……。
しばらくぶりに見た未来予知で、カッサンドラーはめまいを覚えて倒れそうになった。それを危うく抱きとめてくれた人がいた。
兄のヘクトールだった。
「大丈夫か? 具合が悪いのなら寝ていたらどうだ」
「ううん、もう大丈夫よ。昨夜は遅くまで神殿の仕事をしていたから、疲れが残っていたみたい」
「そうか。久しぶりに帰ってきたんだ、ゆっくり休息するといい」
ヘクトールは出かける支度をしていた。どこへ行くのかと聞くと、
「オリンピックだよ、もちろん。知らなかったのか? 今、この国で開催されているんだ」
「ああ、そうなの? 巫女ってそういう俗世の話には疎くて……」
そう答えながらも、カッサンドラーは気が気じゃなかった。
『だめよ、お兄様! お兄様がオリンピックに出たら、不幸の種が舞い込んでくる!』
そう言いたいのだが、言えば信じてもらえないのは分かっている。
『どうしたらいい? どうすれば危機を避けられる?』
どうすることもできず、カッサンドラーはヘクトールを見送ることしかできなかった。icon
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from: エリスさん
2010年11月05日 13時45分17秒
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「未来は視たくない・7」
ゼウスが雲に乗って人間界へ降りてきた時、パリスはちょうど羊を牧場に放して、一休みしていた時だった。軽い眠りに誘われていたときに現れたものだから、パリスは初め夢を見ているのかと思った。
夢ではないと気づかされたのは、ゼウスから黄金の林檎を手渡された時――その重みではっきりと目が覚めたのである。
「その林檎を、三人の女神のうち誰かに渡してほしい。そなたなら誰にする?」
ゼウスが言い終わらぬうちに、三人の女神――ヘーラー、アテーナー、アプロディーテーが現れた。
「この林檎を……一番美しい女神へと書かれているこの林檎を、僕が渡す……つまり、選べと言うのですか?」
「そうだ。そなたの正直な心で選んでほしい」
すると女神たちはこぞって前に出てきた。
先ずヘーラーが言った。「私を選んでくれたら、この世の王にしてあげましょう」
そしてアテーナーも言った。「私を選んでくれたなら、どんな戦いにも勝利を約束してあげるわ」
そして最後にアプロディーテーが言った。「私を選びなさい。そうすれば、人間界で一番美しい女をあなたに与えましょう」
権力と、勝利と、美女……パリスは悩んだ末に、アプロディーテーに林檎を渡した。
「本当に、世界一の美女を僕にくださるのですか?」
「ええ、あげますとも。あなたにはその資格があるのですもの」
この判定に、ヘーラーもアテーナーも不満を抱いたのは言うまでもない。
「なんと愚かな……ゼウスが白羽の矢を立てた人物だからと、少しは期待していたものを」
とヘーラーが言うと、アテーナーも言った。
「美女など、権力を手にした者や、常に勝利する英雄であるならば、自然と女の方から寄ってくるものを。それも分からずに目先の欲に溺れるとは、なんて幼稚な男でしょう」
「あんな小者が私たちに恥を掻かせたのです。ただでは済ませませんよ」
そうしてヘーラーとアテーナーが姿を消してしまうと、アプロディーテーはパリスに言った。
「それでは先ず、トロイアのオリンピックに出なさい」
「え? オリンピックに?」
「その際、あなたが拾われたときに身に着けていた産着の一部を、身に着けていくのです。――あなたは、自分が捨て子だったことは知っていますね?」
「はい、アプロディーテー様」
「そのオリンピックに出れば、あなたの出自が明らかになります。そうして、世界一の美女との出会いが待っているのです」icon
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