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from: エリスさん
2011年11月25日 15時16分58秒
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「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・32」
サンルームはも東からの太陽の光を満遍なく取り込めるようになっている。照明も部屋の隅に地球儀をかたどったスタンドしか置いてなく、普段は使っていないようだ。
彼女はその部屋に大きな水晶球を、台座に乗せたまま持ってきた。
今まさに登ろうとしている太陽に向かって、それを置く。彼女はその前に跪いた。
日光が真っ直ぐと伸びてくる。その光を受けて、水晶が輝きだした。
彼女が唱える。
「全知全能にして我が敬愛なる御祖(みおや)の君、ここに太陽神が娘・カナーニスが祈願いたします。願わくばそのお姿、そのお声をお示しください……」
すると、水晶球の中に、少しくすんだ金髪に、同じ色のひげを生やした初老の男の顔が現れた。
「七日ごとの勤め、ご苦労」
水晶球の男が話しかけてくる。
「おはようございます、おじい様。そちらは何か変わったことはございませんか」
「毎日が退屈でな。誰か騒ぎでも起こしてくれんかと、欠伸しながらまっているところだ」
「羨ましいこと。こっちは例の如月のことで大変ですわ」
「うむ。実はそのことで伝えたいことがあってな」
男は《宇宙の意志》に仕える斎王女神(さいおうにょしん)の報告をカナーニスに伝えた――今度のことは片桐枝実子のこの世での修行の一環であり、神族は直接手助けをしてはならない、らしい。
「では、間接的なら、よろしいのですね?」
「あまり目立ったことはするでないぞ」
「もちろん、彼女の修行の障害にだけはなりません。障害物を取り除くことはしても。ネ?」
茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせるので、オイオイと男は思うのだった。
そんな時だった。水晶球の中から別の声が聞こえてきた。
「父上! カナーナスですね。カナーニスと通信しているのでしょう!」
「陛下ッ、また僕たちに内緒でッ」
「アポローン! ラリウス! お前たちどこから来た!」
「カナーニス、わたしだ! おまえ、なんであんな女のためにそんな所にいるんだァ!」
「亭主の僕と、父上を負かした女と、どっちが大事なんだよ、カナーニス!」
「ラリウス、失敬な! わたしはあんな女に負けた覚えはないぞッ」
カナーニスは、『また始まった』と思い、クスクスと笑い出した。
「ハイハイ。パパ、ダーリン、もうちょっとの辛抱だから、元気で待っててね」
彼女は立ち上がると、窓のカーテンを閉めて、水晶球に入り込む光を遮断した。
そうして、通信が途絶えた水晶球を、また台座ごと抱えて、階下へと降りた。そこへ、電話が鳴った。彼女は手短なところに水晶球を置くと、電話に出た。
「はい、日高でございます」icon
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from: エリスさん
2011年11月18日 14時47分42秒
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「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・31」
「そういやさ、高校時代、良く一緒に帰ったよね、図書委員会の後」
章一が言うので、枝実子も懐かしそうに言った。「猫のいる裏道か……後輩たちも一緒に帰ったよな。あの子達、猫を見つけると必ず四、五分立ち止まって遊んでた」
「君も一緒になってね」
「まあ、確かに……知っての通り猫好きだから。だからあの裏道に猫がいっぱいいるって教えてもらったときは……そういや、おまえが教えてくれたんじゃなかったっけ?」
「あっ、忘れてたな? 情が薄いなァ」
「またそうやって俺をいじめる」
枝実子の言葉に章一がおかしそうに笑う。
そうなのだ、二人はいつもこうやって自然に会話ができる。一方は失恋、一方は振ってしまった後ろめたさを感じていようはずなのに、そのことすら忘れてしまうぐらい親しくできる。
しばらく歩くと、専門学校へと続く坂道へと差し掛かった。この坂道は六大学のの一つに数えられる某大学の裏道でもあり、途中に小さな公園がある。この時間は人通りも少なく、寂しい感じを漂わせる。それでいて落ち着いた雰囲気をかもし出しているのは、上へ登るほど見えてくる銀杏並木のおかげだろう。
この道は好きだ……と、枝実子が言う。
「うん、いいところだよね。絶好の散歩道じゃない?」
章一がそう言って笑いかけたとき、
「どうして!!」
という、女の絶叫が聞こえてきた。
公園からである。二人はそうっと公園の囲いに近づき、植木の間から声の主たちの様子を伺った――見ると、真田と彼のガールフレンドの織田だった。
「理解できないわ。あの女と付き合うために、私と別れるって言うの!? あなた、今まであの女のこと、ボロクソに言ってたじゃないッ」
織田が言うと、素っ気無く真田は、
「そんな覚えはないな」
「言ってたわよ。あんなブスは世界中どこ探してもいないとか、物書きの才能なんか微塵もないとか、美的感覚が狂ってるとか!」
「おまえ、誰かと勘違いしてるだろ。彼女のような絶世の麗人に対して、俺がそんなこと言うわけないだろ」
「言ったのよ、確かに!! あの女のことよ、片桐枝実子のことを!!」
『なァ〜んだとォ〜ッ』
枝実子が額に青筋を立てるほど怒りを覚えたのは当然のことと察せよう。いくらなんでも酷い言われようだ、と章一も思ったが、今は彼女が暴れ出さないように、彼女の口を抑えて、後ろから羽交い絞めにするしかなかった。
それにしても……枝実子と付き合う? あの真田が? つまりそれは……
『如月が動いた!』
なんとか我に返った枝実子と、章一は、二人の会話からそう判断した。
泣き崩れる織田を後にして、真田が立ち去っていく。二人は彼女の方を可哀相に思いながらも、どうすることもできず、真田の尾行をすることにした。
専門学校のアーチ状の入口の前で、藤色の一つ紋を着た、女にしか見えない人物が立っていた。その人物に真田が歩み寄っていく。章一の目にその容貌が見えてくるようになると、彼は鼓動が速く強く打ち始めるのを覚えた。
唇が動く――だが、声は……
「……オプス・エリス(エリス様)……」
枝実子の方がドキッとする。一瞬だったが、聞いたこともない、それなのに懐かしい声を耳にした。本当に章一がしゃべったのか?
章一自身も驚いて、自分の唇を抑えている。
いったいどうなっているのか。
当然の疑問も、あの二人がそれどころではなくしてしまう。
入口の前に立っていたのはもちろん如月である。真田は如月の髪を一房手にすると、それに軽く口付けた。
「望みどおりにしてきた」
「嬉しいわ、あなた」
如月は妖艶な笑みで真田に応える。「これであなたは、わたしだけのもの。生涯お傍を離れませんわ、光司さん」
この台詞が自分の声で話されているので、枝実子は背中がゾーッとした。
「やめろォ〜、俺の声でそんな恥ずかしい台詞を吐くなァ〜」
「あれ? もしかして自覚ないの?」
普段の声に戻った章一が言うと、何が? と言いたげに枝実子が彼を見上げた。
「エミリーって、言うんだよ。俺に対してもあんな風に」
「え? ……そう、だっけ?」
「気持ちが高ぶってるから、口からでちゃうんだろうね……あんなに艶っぽくはないけど」
色気が皆無で悪かったな……と思ったが、口に出すのはやめる。ともかく、如月が真田に近づいた。このことが今後どう影響するのか、今はそのことの方が問題だった。icon
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from: エリスさん
2011年11月15日 06時12分32秒
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from: エリスさん
2011年11月11日 12時26分34秒
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from: エリスさん
2011年11月10日 16時29分34秒
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大ピ〜ンチ!
買い物から帰ってきて、録画してあったものを見ようと思ったら、DVDレコーダーのHDDに録画されたものが、すべて消えてた!!(◎-◎;)
私が何か操作を誤って初期化してしまったのか!?
諦めて、DVDにダビングしておいた「それでも、生きてゆく」を見ようとしたら、それも何も録画されていないことになっている。
ここまで来るとお手上げなので、パナソニックの修理センターに電話した。
明日修理に来てもらえることになったのですが、何時に来られるかは明日にならないと分からない、とのこと。
朝早く来て、すぐに修理が終われば問題はないのですが、修理がお昼過ぎになってしまった場合、またしても外出ができないことになります。
なので、明日の小説サークル更新が危ぶまれております。読者の皆さんも、修理が早く終わって、午前中のうちにネットカフェに行かれるように、祈ってください。-
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from: エリスさん
2011年11月08日 14時23分51秒
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「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・30」
「そろそろ、話してくれる気になった?」
寝床に入ってすぐに、章一は聞いてきた。
枝実子は胸元を合わせながら彼の方へ寝返りを打って、しばらくしてから話し出した。
「如月が現れたの、きっと俺が俺自身のことを、それまでよりも嫌いになったからだ。自分自身を殺してしまいたいほどに。でもそれは誰かが許してくれないような気がして、どうしたらいいのか分からなかった――自殺でない死に方をほんの一瞬でも望んだことによって現れた、自分と対になって発生した人間。奴は俺をすべての災いの元凶だと言ってる」
「そんな風に考えるようになった原因は?」
「真田さんに、俺が本当に好きなのは乃木君だということを気づかれてしまった。彼は、ただ乃木君を忘れるための身代わりだったのだと。彼はプライドが高い――いやね俺みたいな女にコケにされたら、誰だって恥ずかしいだろう。彼にはプレイボーイとしての意地があった。自分から一方的に振らなければ承知できないんだ。だから、俺が勝手に諦めたのが許せなくて、俺を憎んでいたんじゃないかと思う……憎まれるのはそれほど辛くない。ただ、彼の誇りを傷つけてしまったことは悔やみきれない……。俺の心の弱さが原因で、こんなことに」
「……半分は俺の責任でもあるな」
その言葉に枝実子は何度も首を振った。
「乃木君に責任なんかない。俺が無理におまえを忘れようとしたから……」
『だから、それが俺の責任なんだって……』
章一はそう思っても、口には出さなかった。枝実子の気持ちは分かるし、自分だって……。今は“親友”でいるしかない理由がある。本当なら、枝実子もそれに気づかなければならない理由が。
「……他には? 他にも何かあるんだろ?」
「……友人を、とても大切な友人を失った。その人の自尊心を傷つけてしまった上に、欠点すらなかった彼女の心を醜いものに変えて。……誰よりも素敵な貴婦人だったのに……」
「なにがあったの?」
「彼女の信頼を裏切ってしまった」
「どんな風に?」
しばらくの沈黙……。
「エミリー?」
枝実子は反対側に寝返りを打ってしまった。
「エミリー、どうしたの?」
「……もう、何も聞くな」
「でも……」
「お願いだから聞くなッ」
声が普通じゃない。微かに背中が震えている。――泣いている?
「それを聞けば、俺を嫌いになる」
「そんなこと、聞いてみなくちゃ」
そうなってからじゃ遅いんだッ。おまえに嫌われたら、俺は本当に死ぬぞ!」
『……そんなに、口にできないようなことをしたのか?』
章一は、しばらく彼女の背中を見つめていたが、枕元のスタンドを消すと、
「おやすみ」
と声をかけた。
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『帰りに替えの下着買ってこなきゃ』
枝実子は出掛ける仕度をしながら、呑気にそんなことを考えていた。
「エミリー〜、まだァ?」
部屋の外にいる章一が声を掛ける。
「ごめん、もういいよ」
枝実子は章一から借りたTシャツを着ながら、そう言った。
「うん、男物だけど似合ってるよ」
「ありがと。乃木君は服のセンスがいいから助かる」
「それじゃ、行こうか」
二人は枝実子の専門学校のあるO駅へと行った。
駅に着くと、すぐに出口へ向かおうとする章一を止めて、枝実子は反対側の出口へと彼を連れて行った。
「こっちは君の学校とは逆方向だよ」
「いいんだ、どうせ今すぐに行っても授業中だ。それより、少し近くを案内するよ」
枝実子が連れて行った所は、スポーツ用品店などが並ぶ道だったが、そこからしばらく歩くと本屋ばかりが並ぶようになった。それから古本屋ばかりが並ぶ「古本街」となり……。章一もそれでようやく気づいた。
「ここって、文化祭の帰りに一緒に歩いた……」
章一が枝実子にそう言うと、彼女は黙ったまま微笑んだ。章一も微笑んで、言った。
「安心した」
「ん?」
「やっぱり女の子なんだって」
「あたりまえだろ。俺が男だったら、それこそ俺たち変な関係になる」
「言えてる」
二人は本当におかしくなって、笑いあった。
『でも俺は、男に生まれていたらって思うことがあるんだ』
枝実子は心のうちで呟いていた。自分が男だったら、こんな不安定な仲ではなく、本当に誰もが認める親友になれただろうに。傍目には、この二人がどう見えているのか分からないが。
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from: エリスさん
2011年11月08日 12時24分30秒
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「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・29」
湯船に入ると、何故かホッとする。
『今日は疲れた……』
枝実子は体を思いっきり伸ばして、顎まで湯につかりそうになるぐらい沈み込んだ。
歩きつめたり、男に化けたりと気を張っていたので、疲れが出るのも当然である。
大変なのはこれからだが。
章一にも、まだ話さなければならないことがある。
『どうやって話そう……』
そのことを話すことによって、章一に嫌われてしまったら?
『そうなったら、俺は死んでしまうかもしれない……』
枝実子はよく思うことがある。章一が初恋だったらどんなに良かっただろう。――容姿がひどいというその理由だけで失恋していた枝実子なだけに、容姿なんか問題にならないという章一の存在は大きかった――おそらく一生、こんな人とは出会えない。
『おそらく一生、他の男には……』
章一が浴衣を貸してくれたので、それに着替えて寝ることにした。
「おまえだったら何枚も持ってるんだろうな、浴衣」
枝実子が言うと、
「母さんが趣味で縫ってくれるんだ。遠慮なく着てよ」
「Thanks, friend. 乃木君のは清潔にしてるから、安心して着られる」
「あ?」
「男って不潔な奴が多いから、服なんか借りて着られないけど、おまえさんのはそんなことないから、大丈夫ってこと」
「へェ〜、そうゆうことってあるんだ」
「また変な想像してるだろ。演劇で男の衣装借りなきゃならないことだってあるんだ」
「ああ、なるほど」
枝実子は物陰に行って浴衣に着替えた。男物なのに、何故か似合ってしまう自分が怖い。
二人は寝床を並べて休むことになった。icon
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from: エリスさん
2011年11月08日 11時58分21秒
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3サークル共通書き込み
ブログを読んでくださっている皆さんは、もうご存知のことと思いますが、実は今、頭痛で外出を躊躇う中、ようやくネットカフェにたどり着きました。
最初のときに比べるとかなり痛みは治まりましたが、まだ頭の前方右側――右目の延長線上がズキズキします。
本当は休みたいところですが、先週の金曜日も体調不良で休んでしまい、それで今日に延期したのですから、それでまた休んだりしたら、読者の皆様からの信頼が皆無になってしまう。――そう思い、なんとかここまで来ました。
とりあえず、頭痛の時は甘いものを取るといいので、チョコレートを大量買いしてきましたし、ネットカフェの無料ココアも飲み始めましたので、これで何時間かは気力が持つと思います。けれど、文章を考えるのは自信がないので、今日のところはすでに原稿が出来ている「神話読書会〜女神さまがみてる〜」の「双面邪裂剣」の更新だけで勘弁してください。「恋愛小説発表会・改訂版」の「夢のまたユメ」はこのところ忙しいこともあって、前もっての原稿作成が出来ていませんでした。次の金曜日にはきっと書けると思います。
それで今日は短時間で済ませて、帰宅次第、布団で安静にしていたいと思います。明日も仕事があるので。なので今日は帰宅してもブログで「帰宅なう」の書き込みはしませんので、悪しからず。
「恋愛小説発表会・改訂版」しかお読みになっていない読者の皆様には、本当に申し訳ないと思っています。このことで読者が離れていってしまっても、それは私の責任なので仕方のないことと覚悟しています。
「神話読書会〜女神さまがみてる〜」http://www.c-player.com/ac48901
「恋愛小説発表会・改訂版」http://www.c-player.com/ac64813
「淮莉須 部琉の隠れ家」http://www.c-player.com/ae11607-
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from: エリスさん
2011年11月04日 09時54分54秒